13日はフィリピンの首都マニラの大学で、「特定技能」の介護職の在留資格を得るための初めての試験が始まりました。
試験は、介護の技能について英語でたずねる問題のほか、日本語の能力を評価する問題も出され、厚生労働省によりますと、13日と明日の2日間で定員いっぱいの125人が受験するということです。
厚生労働省は、この介護職の試験について、当初、年に6回程度行うとしていましたが、今回定員を上回る応募があり、多くの希望者が受験できなかったとして急きょ、来月と6月に追加の試験を行うことを決めました。
13日の試験結果は来月をめどに各受験者に伝えられ、合格者は就職先を見つけたうえで、早ければことしの夏以降、日本で働き始めるということです。
受験できないケース相次ぐ 改善求める声
13日に行われた介護職の試験では、現地で日本語や介護を学ぶ多くの生徒が受験できず、関係者からは改善を求める声が上がっています。
「特定技能」のうち介護について、政府は今年度からの5年間で、最大で6万人の受け入れを見込んでいますが、今回の試験の定員は125人で、インターネットでの応募は開始からわずか数時間で満員となりました。
フィリピンとのEPA=経済連携協定に基づいて、10年以上にわたりフィリピン人の介護士に日本語教育を施している首都マニラ郊外の日本語学校は今回、およそ40人の生徒に受験してもらおうと考えていましたが、1人も受験できませんでした。
学校の責任者の石川哲哉さんは「誰も受験できていないので、いったいどんな人材が受験しているのか非常に気になっている。能力や適性のある人材が受験できるようになってほしい」と話していました。
また、マニラ近郊の別の日本語学校でも、看護師や介護士の学校を卒業し、働きながら日本語を勉強している生徒を介護の「即戦力」として日本に送り出すことを期待していましたが、受験はできませんでした。
校長のスゼッテ・ヴィンセンシオさんは「介護士の経験を持ち、日本語もできるフィリピン人は非常に限られているのに、なぜ数時間で満員になるのか、疑問を持っている。応募できないという状況に非常にフラストレーションを感じている」と話していました。
また、広島県から来た介護施設で作る組合の理事は「現地に介護経験と日本語能力がある人がこれだけいるのだから、その人たちがより多く受験してもらえるよう、枠を広げることが重要だ」と話していました。
「問題のレベル低い」 人材確保に懸念も
介護職の試験をめぐっては「問題のレベルが低く、現場のニーズにあった人材を取れないのでは」との懸念の声も出ています。
特定技能の在留資格は、相当程度の知識と経験を持つと認められた外国人に与えられると定められ、日本語や技能の試験が行われることになっています。
厚生労働省が事前に公表した介護の試験のサンプルによりますと、例えば、適切なコミュニケーションの方法を4つの選択肢から選ぶ問題では、正しい回答が「相手の表情を見ながら話を聞く」となっています。
三重県の介護施設などを運営する会社の社長は「現場の人手不足が深刻なので特定技能の制度には期待しているが、このレベルの試験に合格しただけで介護現場の経験の無い人は採用できない」と話しています。
厚生労働省「試験回数増やす」
厚生労働省福祉人材確保対策室の柴田拓己室長は「受験できなかった人のため、試験の回数を増やす予定で、日本の介護現場で働くことを希望する人が1人でも多く受験できるようにしたい。一定の知識や技能があるかについては技能試験や日本語試験を通じて確認できるものと考えている」と話しています。