NHKは、1月5日から11日にかけて輪島市や珠洲市、七尾市など、能登半島の9つの市と町にある高齢者施設のうち、合わせて60の施設に電話で取材しました。
その結果、ほとんどの施設で地震から10日以上たっても断水が続いていて入浴ができないほか、トイレも使えず、おむつや簡易型のトイレで代用しているという声が聞かれ、衛生環境が整わない中で、感染症への懸念の声も上がりました。
さらに、暖房が使えない施設も複数あり、職員がペットボトルにお湯をいれて作った即席の湯たんぽを入所者に配り対応しているという施設もあるなど、高齢者の体調悪化を不安視する声も上がっています。
このほか、高齢者を支える職員も被災し、多くの施設が限られた少数の職員で入所者に対応せざるをえない状況となっていて、時間の経過とともに職員が疲弊している現状もあるということです。
施設の担当者からは
▽「厳しい環境のなかで職員も体調を崩し始めている」とか
▽「支える側の体力がどれぐらいの期間もつのか不安がある」
といった声も聞かれました。
ボランティアの介護職員を被災した施設に送る動きも一部で始まっていますが、NHKが11日までに取材した範囲では、応援の職員が来ることが決まっている施設はほとんどなく、施設職員をどう支援していくのかも課題となっています。
高齢者へのケアが行き届かない状態が長期化する中、今の状態で施設内で高齢者を見続けることには限界があるとして、石川県内では被災した施設に入所している高齢者をほかの施設へ移す動きも出始めていますが、
▽要介護度の高い高齢者が移送に耐えられるかや
▽移送先の環境に適応できるか不安視する声もあり
きめ細かい対応が求められています。
穴水町 特別養護老人ホーム 停電や断水 職員寝泊まりして働く
震度6強の揺れを観測した石川県穴水町の特別養護老人ホームでは今も停電や断水が続いています。
施設の職員は自分も被災しながらも、施設に寝泊まりしながら働いていて、一刻も早い支援が求められます。
穴水町、唯一の特別養護老人ホーム「能登穴水聖頌園」では、入所者と職員は全員無事でしたが、地震から10日以上たった12日もなお停電や断水の状態が続いています。
建物の一部は壊れ、施設につながる道路が寸断して、発災から4日ほどは孤立状態になっていたということです。
12日の朝食は、支援物資などで手に入った米と野菜を使って、簡易コンロで雑炊をつくって食べてもらったということです。
施設では、断水が続いていることから入浴ができず、体をボディーシートで拭くなどして対応していますが、衛生管理が大きな壁となっています。
また洗濯ができず、下着類やおむつ、生理用品などの衛生用具も足りていないということです。
さらに、施設の職員は、みずからも被災しながら働き続けています。
地震の前、この特別養護老人ホームや関連の施設ではおよそ100人が働いていましたが、自宅が被害を受けたり、道路状況が厳しかったりして出勤できない職員もいて、現在は6割程度の人数で運営しています。
家が倒壊して、施設に寝泊まりしながら働いている職員がいるほか、避難所から通勤してくる職員もいます。
元日から一日も休めていない人も多く、非常に厳しい状況だということです。
また、施設で働くインドネシア人実習生16人は、宗教上の戒律で豚肉由来のものが食べられず、支援物資の食品も食べられるものが限られるため、パンを食べるなどして対応しているということです。
施設長の殿田和博さんは「水が出ないのが何よりも厳しい状況です。職員もまだ頑張れるといってくれていますが、十分に休めずお風呂にも入れず限界が来ていると思います。少しでも支援があるとありがたいです」と話していました。
武見厚労相 “応援職員派遣 ほかの施設への避難 調整急ぐ”
これについて武見厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で「限られた人員で懸命にケアを提供してもらっているのが現状だ」と述べ、全国の高齢者施設から応援の介護職員を募集し、被災した施設や避難所に派遣する取り組みを進める考えを示しました。
その上で「命と健康を守り、災害関連死が生じないようにするためには、ほかの施設への避難を優先させる判断も必要だ」と述べ、石川県や隣接する県と協力して、ほかの地域の施設への避難に向けた調整を急ぐ考えを示しました。