日本新聞: 将棋「名人戦」開幕前に渡辺明名人と藤井聡太六冠が意気込み

将棋しょうぎの八はち大だいタイトルで最もっとも歴史れきしの古ふるい「名人めいじん戦せん」の開幕かいまくを前まえに、タイトルを持もつ渡辺わたなべ明あきら名人めいじん（38）と挑戦ちょうせん者しゃの藤井ふじい聡さとし太たい六ろく冠かん（20）がそれぞれ意気込いきごみを語かたりました。

「名人めいじん戦せん」七なな番ばん勝負しょうぶは、5日にち開幕かいまくします。

渡辺わたなべ名人めいじんと藤井ふじい六ろく冠かんは4日にち、第だい1局きょくが行おこなわれる東京とうきょう文京ぶんきょう区くのホテルを訪おとずれ、対局たいきょく室しつを確認かくにんする「検分けんぶん」を行おこないました。

続つづいて開ひらかれた前ぜん夜祭よまつりで2人にんはおよそ300人にんのファンを前まえにあいさつし、藤井ふじい六ろく冠かんは「『名人めいじん』ということばには子こどものころから憧あこがれの気持きもちがあった。持ち時間もちじかんが9時間じかんと長ながいのでじっくり考かんがえられることを楽たのしみに、熱戦ねっせんにできるよう頑張がんばりたい」と話はなしました。

また、渡辺わたなべ名人めいじんは「今期こんきの名人めいじん戦せんは第だい81期きと、将棋しょうぎ盤ばんのマス目めと同おなじ数かずで、将棋しょうぎ界かいにおいては大おおきな意味いみを持もつ数字すうじだ。注目ちゅうもくの七なな番ばん勝負しょうぶに出場しゅつじょうできることは棋士きしとして幸しあわせで、ベストを尽つくしたい」と話はなしました。

藤井ふじい六ろく冠かんは「名人めいじん戦せん」初はつ挑戦ちょうせんです。

今回こんかいのタイトル戦せんを制せいすると、谷川たにがわ浩司こうじ十じゅう七なな世せい名人めいじん（60）が持もつ「名人めいじん」獲得かくとくの最年少さいねんしょう記録きろく「21歳さい2か月かげつ」を40年ねんぶりに更新こうしんするほか、羽生はぶ善治よしはる九きゅう段だん（52）以来いらいとなる「七なな冠かん」を、最年少さいねんしょうで達成たっせいする可能かのう性せいがあります。

一方いっぽう、渡辺わたなべ名人めいじんは、3年ねん前まえに「名人めいじん」を初はじめて獲得かくとくして以降いこう、防衛ぼうえいを続つづけていて、今回こんかい4連覇れんぱがかかります。

藤井ふじい六ろく冠かんにはこれまでに「棋聖きせい」「王将おうしょう」「棋王きおう」のタイトルを奪うばわれていて、雪辱せつじょくを期きす戦たたかいです。

「名人めいじん戦せん」七なな番ばん勝負しょうぶの第だい1局きょくは、5日にち午前ごぜん9時じに始はじまり、6日にち午後ごごに勝敗しょうはいが決きまる見通みとおしです。

羽生はぶ善治よしはる九きゅう段だんが語かたる“藤井ふじい聡さとし太たい六ろく冠かん”

圧倒的あっとうてきな強つよさを見みせる藤井ふじい聡さとし太たい六ろく冠かん。

ことし1月つきから先月せんげつにかけて行おこなわれた「王将おうしょう戦せん」で藤井ふじい六ろく冠かんと戦たたかい、2勝しょう4敗はいで敗やぶれた羽生はぶ善治よしはる九きゅう段だんに話はなしを聞ききました。

タイトル戦せんとしては初はつ顔合かおあわせとなった「王将おうしょう戦せん」。

羽生はぶ九きゅう段だんは、藤井ふじい六ろく冠かんの将棋しょうぎの強つよさは「読よみの深ふかさ」や「発想はっそうの広ひろさ」だけでなく美学びがくのようなものを感かんじたと指摘してきします。

羽生はぶ九きゅう段だんは、「その時ときその時ときの課題かだいというか自分じぶん自身じしんが興味きょうみを持もっている形かたちを深ふか掘ほりしていくタイプなのかなと思おもう。例たとえば今いまは『角かく換がわり腰掛こしかけ銀ぎん』という戦法せんぽうを取とることが多おおいが、その前まえは『相あい掛かかり』という戦たたかい方かたをしていた。1つの形かたちをある程度あるていど徹底的てっていてきにやり続つづけて結論けつろんを出だし、次つぎに行いく。そういうスタイルの棋士きしだ」と印象いんしょうを語かたりました。

そのうえで、「AIなどのソフトをもとに手てを選えらんでいる、ということではない。独自どくじの発想はっそうの基準きじゅんみたいなものが明快めいかいにあって、そういう基準きじゅんで手てを選えらんで、すごくいい手てを指させているのかと思おもう。藤井ふじい六ろく冠かんの『型かた』があって、将棋しょうぎを指さしているのだと実感じっかんできた。全体ぜんたい的てきにレベルアップしていかないと、藤井ふじい六ろく冠かんと戦たたかうのは厳きびしいなというのが今回こんかいの率直そっちょくな感想かんそうだ」と振り返ふりかえっていました。

中原なかはら誠まこと十じゅう六ろく世せい名人めいじん「歴史れきしに残のこる七なな番ばん勝負しょうぶに」

「名人めいじん」を通算つうさん5期き保持ほじした棋士きしに与あたえられる「永世えいせい名人めいじん」の称号しょうごうを持もつ中原なかはら誠まこと十じゅう六ろく世せい名人めいじん（75）は、藤井ふじい聡さとし太たい六ろく冠かんが、渡辺わたなべ明あきら名人めいじんに挑いどむ今回こんかいの「名人めいじん戦せん」について、「歴史れきしに残のこる七なな番ばん勝負しょうぶになるだろう」と話はなし期待きたいを寄よせています。

中原なかはら十じゅう六ろく世せい名人めいじんは、「藤井ふじい六ろく冠かんは名人めいじん戦せん初はつ登場とうじょうだが、最強さいきょうの挑戦ちょうせん者しゃと言いっていいのではないか。六ろく冠かんを持もって挑戦ちょうせんした棋士きしは今いままでいないし、これまでの実績じっせきもすごく、どういう戦たたかいになるか楽たのしみだ」と話はなしました。

藤井ふじい六ろく冠かんの将棋しょうぎについては、「終盤しゅうばんがとにかく異常いじょうに強つよい。詰つむか詰つまないかという一番いちばん大事だいじなところがプロ棋士きしの中なかでも異常いじょうに強つよく、欠点けってんが見当みあたらない。中なかでも感心かんしんするのは防衛ぼうえい戦せんで、タイトルを取とるときは挑戦ちょうせん者しゃの勢いきおいで獲得かくとくできるが、いざ防衛ぼうえいするとなると、自分じぶんでコンディションを調整ちょうせいして臨のぞまなくてはならず難むずかしい。ところが藤井ふじい六ろく冠かんは非常ひじょうにうまく調整ちょうせいし、防衛ぼうえいを果はたしていて感心かんしんする」と指摘してきしました。

対たいする渡辺わたなべ名人めいじんについては過去かこに対局たいきょくしたみずからの経験けいけんを踏ふまえ、「当時とうじからあれほど頭あたまの中なかがクリアな人ひとは珍めずらしいと思おもった。感想かんそう戦せんで自分じぶんの考かんがえを明快めいかいに表あらわしていたのでそこが強つよみだと思おもう。今いままでの藤井ふじい六ろく冠かんとの対局たいきょくを振り返ふりかえって自分じぶんの中なかで整理せいりし、何なにか新あたらしい道みちを見みつけてほしい」と話はなしていました。

両者りょうしゃの公式こうしき戦せんの対戦たいせん成績せいせきは、藤井ふじい六ろく冠かんが16勝しょう、渡辺わたなべ名人めいじんが3勝しょう。

藤井ふじい六ろく冠かんが大おおきく勝ち越かちこしているなかで今回こんかいの名人めいじん戦せんの展望てんぼうについて中原なかはら十じゅう六ろく世せい名人めいじんは、「七なな番ばん勝負しょうぶの第だい7局きょくは互たがいに3勝しょうずつして重おもみが一層いっそう増ますもので、経験けいけんしてみないと分わからない。そういう意味いみでは、渡辺わたなべ名人めいじんが、藤井ふじい六ろく冠かんが経験けいけんしたことのない第だい7局きょくまで持ち込もちこむことで弱点じゃくてんが出でてくるかもしれない。『名人めいじん戦せん』の歴史れきし、あるいは将棋しょうぎの歴史れきしに残のこる戦たたかいになると思おもうので、いい勝負しょうぶを見みせてほしい」と語かたり、期待きたいを寄よせていました。