シリアでは、反政府勢力が攻勢を強め、先月30日までに北部の主要都市アレッポの大部分を制圧し、さらに中部の要衝ハマの周辺に迫っていて、これに対し、シリア軍は2日、支援にあたるロシア軍とともにアレッポやハマの周辺で反政府勢力への空爆を行ったとしています。
シリア情勢をめぐっては、これまでアサド政権を支えてきたレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラがイスラエルとの戦闘で弱体化したほか、ロシア軍もウクライナ紛争の影響で支援が難しくなっていると指摘されています。
こうしたなか、シリアのアサド大統領は2日、イランのペゼシュキアン大統領と電話会談を行い、イラン側は「危機を解決するため、あらゆる支援を提供する用意がある」と表明し、支援をとりつけたかたちです。
ロイター通信は関係者の話として、イランの支援を受ける民兵組織の戦闘員少なくとも300人がシリアに入国し、アサド政権の支援に向かっていると伝えています。
アサド政権としては、後ろ盾のイランやロシアから支援を得て態勢の立て直しを図りたいものとみられます。
“プーチン氏とイラン大統領が協議 シリア政府を無条件支持”
ロシア大統領府は2日、プーチン大統領とイランのペゼシュキアン大統領が電話で会談し、シリア情勢について協議したと発表しました。
この中で両首脳は「テロリスト集団による大規模な攻撃は、シリアの主権と政治や社会、経済の安定を損なうことをねらったものだ」と反政府勢力を非難しました。
そのうえで、両首脳は法的な秩序と領土の保全を回復するためのシリア政府の行動を無条件で支持することで一致したとしています。
国連安保理 緊急会合開催へ
シリアで反政府勢力が攻勢を強めていることを受けて、国連の安全保障理事会で3日に緊急会合が開かれることが決まりました。
今月、安保理の議長国を務めるアメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は、2日の記者会見で、シリア情勢について「現地の状況は憂慮すべきもので、非常に注意深く監視している。地域のパートナーと協力し、紛争を終わらせ、状況を平穏に戻すための道筋を見つけ出したい」と述べました。
また、国連のグテーレス事務総長は報道官を通じて、暴力の激化を憂慮する声明を出しました。
声明は「シリアの人たちは14年近くも紛争に耐えておりさらなる流血ではなく、平和な未来をもたらす政治的な見通しが必要だ」として、すべての当事者に対し2015年の安保理決議に基づいた政治プロセスに復帰するよう呼びかけています。