レスリング男子だんし 文田ふみた健一郎けんいちろう 金メダルきんめだる グレコ60キロ級きゅう パリ五輪ごりん

前回ぜんかいの東京とうきょう大会たいかいで銀メダルぎんめだるを獲得かくとくした文田ふみた選手せんしゅは、準決勝じゅんけっしょうで去年きょねんまで世界せかい選手権せんしゅけんを2連覇れんぱしていたキルギスの選手せんしゅに競り勝せりかって決勝けっしょうに進すすみました。

決勝けっしょうでは世界せかいランキング2位いの中国ちゅうごくの曹利国としくに選手せんしゅと対戦たいせんし、前半ぜんはんに相手あいてを回転かいてんさせるなどして3ポイントのリードを奪うばって折り返おりかえしました。

後半こうはん、文田ふみた選手せんしゅは2ポイント差さに迫せまられ、さらに相手あいてに回転かいてんさせられそうになりましたが、何なんとか耐たえて追加ついかのポイントを与あたえませんでした。

その後そのご、相手あいてのチャレンジ失敗しっぱいによる1ポイントを加くわえた文田ふみた選手せんしゅは4対たい1で勝かち、決勝けっしょうで敗やぶれた東京とうきょう大会たいかいの雪辱せつじょくを果はたして金メダルきんめだるを獲得かくとくしました。

日本にっぽん選手せんしゅがグレコローマンスタイルで金メダルきんめだるを獲得かくとくしたのは1984年ねんのロサンゼルス大会たいかいの宮原みやはら厚あつし次じさん以来いらい、40年ねんぶりです。

銀メダルぎんめだるは曹選手せんしゅ、銅メダルどうめだるはキルギスのゾラマン・シャルシェンベコフ選手せんしゅと、北朝鮮きたちょうせんのリ・セ ウン選手せんしゅでした。

「声援せいえんを送おくってくれる人ひとの思おもいが力ちからになった」

文田ふみた選手せんしゅは「現地げんちや日本にっぽんから声援せいえんを送おくってくれる人ひとの思おもいを全部ぜんぶ背負せおって戦たたかったことが力ちからになった」と感謝かんしゃの気持きもちを述のべました。

またグレコローマンスタイルでは日本にっぽん選手せんしゅとして40年ねんぶりの金メダルきんめだるとなったことについては「40年間ねんかん勝かてていなかったことに対にたいして悔くやしい気持きもちが大おおきかった。40年ねんぶりに動き出うごきだした日本にっぽんのグレコローマンが、このまま順調じゅんちょうに歩あゆんでいくきっかけの金メダルきんめだるになったらいいと思おもう」と話はなしていました。

「この景色けしきは絶対ぜったいに忘わすれない」

文田ふみた選手せんしゅは優勝ゆうしょうを決きめたあと家族かぞくに手てを振ふる姿すがたを見みせていて「娘むすめも手てを振ふってくれて『世界せかい一いちのパパ』を見みせて負まけているパパを見みせないと決きめていたので、それがかなえられた。パパの目標もくひょうはクリアかなと思おもう」と話はなしていました。

そして表彰ひょうしょう式しきのあと金メダルきんめだるをかけて取材しゅざいエリアに現あらわれると、東京とうきょう大会たいかいでは銀メダルぎんめだるだったことを踏ふまえ「東京とうきょうのメダルセレモニーで自分じぶんの胸むねに銀メダルぎんめだるをかけたのが本当ほんとうに悔くやしくて、3年ねん後ごは金メダルきんめだるは自分じぶんの首くびにかけると誓ちかっていた。そのときの悔くやしさが金メダルきんめだるをかけさせてくれた」と喜よろこびを語かたりました。

そして大だい歓声かんせいを受うけた表彰ひょうしょう式しきを「本当ほんとうにかみしめながら1秒びょうたりとも逃のがさないよう、大事だいじにセレモニーを受うけた。この景色けしきは絶対ぜったいに忘わすれないと思おもう」と話はなしていました。

東京とうきょう五輪ごりんで敗やぶれ 悔し涙くやしなみだを流ながしてから3年ねん

「オリンピックの悔くやしさはオリンピックでしか返かえせない」

東京とうきょうオリンピックの決勝けっしょうで敗やぶれ悔し涙くやしなみだを流ながしてから3年ねん、パリ大会たいかいで雪辱せつじょくを果はたすために文田ふみた選手せんしゅは自問自答じもんじとうを繰り返くりかえしながらレスリングに向き合むきあってきました。

幼おさないころから投なげ技わざを磨みがいてきた文田ふみた選手せんしゅ。

前回ぜんかいの東京とうきょう大会たいかいの決勝けっしょうでは対策たいさくを練ねってきたキューバの選手せんしゅを相手あいてに得意とくいの形かたちに持ち込もちこむことができず敗やぶれたことからいったんは投なげ技わざを封印ふういんし、守もりを固かためるレスリングスタイルを模索もさくしてきました。

ところがその新あらたなスタイルで臨のぞんだ去年きょねん9月つきの世界せかい選手権せんしゅけんの決勝けっしょうで、キルギスのゾラマン・シャルシェンベコフ選手せんしゅに投なげ技わざで次々つぎつぎとポイントを奪うばわれ敗退はいたい。

かつて自分じぶんが得意とくいとしていたスタイルで戦たたかう相手あいてとの試合しあいを終おえ「楽たのしいし、ずっとやっていたいと思おもえるような試合しあいだった。もっと自分じぶんのレスリングに自信じしんを持もてるようにしないといけない」と、再ふたたび新あらたな戦たたかい方かたを探さぐりました。

そしてパリ大会たいかいまで1年ねんを切きった中なか、取り組とりくみ始はじめたのが“ハイブリッド”ともいえるスタイルです。もともと得意とくいにしていた投なげ技わざを軸じくに、その後そのご、磨みがいてきた守備しゅび的てきな技術ぎじゅつも盛り込もりこむことにしました。

パリ大会たいかい前まえには「これまではどちらかに固執こしつしてしまっていたが、今いまの自分じぶんにすごく合あっている。守まもるところは守まもるし、攻せめるところは攻せめる、自分じぶんのすべてを出だしたい」と確たしかな自信じしんを手てにしていました。

そして「この3年ねんの葛藤かっとうをマットで全部ぜんぶ晴はらす」とパリの舞台ぶたいに臨のぞみ準決勝じゅんけっしょうではシャルシェンベコフ選手せんしゅに雪辱せつじょくを果はたすと決勝けっしょうも制せいしました。

敗戦はいせんのたびに自問自答じもんじとうを繰り返くりかえしながら成長せいちょうを遂とげた文田ふみた選手せんしゅは3年ねん分ぶんの思おもいをすべて出し切だしきって雪辱せつじょくを果はたし、悲願ひがんの金メダルきんめだるを手てにしました。

40年ねんぶり 価値かちある金メダルきんめだる

文田ふみた選手せんしゅがもたらした金メダルきんめだるは、日本にっぽんの男子だんしグレコローマンスタイルとしては40年ねんぶりとなる価値かちあるものになりました。

レスリングにはフリースタイルとグレコローマンスタイルがあり、2つのスタイルの主おもな違ちがいは攻防こうぼうにおいて全身ぜんしんを使つかうか、上半身じょうはんしんだけを使つかうかという点てんにあります。

フリースタイルはタックルを軸じくとした全身ぜんしんを使つかったスピード感かんあふれる攻防こうぼうが見みどころです。

一方いっぽう、グレコローマンスタイルは下半身かはんしんを使つかった攻防こうぼうは禁止きんしされていて、上半身じょうはんしんだけを使つかって争あらそい、組み合くみあった状態じょうたいから相手あいての胴体どうたいをつかんで豪快ごうかいに投なげる技わざなどが見みどころです。

オリンピックではフリースタイルは男女だんじょで行おこなわれていますが、グレコローマンスタイルは男子だんしのみ行おこなわれています。

グレコローマンスタイルの魅力みりょくの1つである豪快ごうかいな投なげ技わざは子こどもには安全あんぜん面めんで懸念けねんが残のこるとして、レスリングを始はじめるときはフリースタイルから取り組とりくむのが一般いっぱん的てきだということです。

そのため日本にっぽんではグレコローマンスタイルは中学生ちゅうがくせい以下いかの全国ぜんこく大会たいかいでは実施じっしされておらず、フリースタイルの選手せんしゅが高校生こうこうせいになってから始はじめるのが主流しゅりゅうになっているということです。

この結果けっか、海外かいがい勢ぜいに比くらべて経験けいけん値ちが劣おとる選手せんしゅが多おおいため、日本にっぽんはオリンピックで苦戦くせんしてきたとも話はなす関係かんけい者しゃもいます。

選手せんしゅとしてロンドンオリンピックに出場しゅつじょうした長谷川はせがわ恒ひさし平たいらさんは、文田ふみた選手せんしゅが出場しゅつじょうした試合しあいのテレビ中継ちゅうけいの解説かいせつの中なかで「上半身じょうはんしんだけという制約せいやくの中なかでの攻防こうぼうの難むずかしさ、おもしろさが文田ふみた選手せんしゅの活躍かつやくによって広ひろがったと思おもう。グレコローマンの魅力みりょくが広ひろがってほしい」などと話はなし、普及ふきゅうや競技きょうぎ力りょくの向上こうじょうへの期待きたいを寄よせていました。