こうした中、イスラム組織ハマスは、ガザ地区のトップのシンワル指導者を、先月イランで殺害されたハニーヤ最高幹部の後任に選んだと発表しました。
去年10月の大規模な奇襲攻撃の首謀者だとされている、シンワル指導者。
どのような人物なのでしょうか。
イスラム組織ハマスは6日、ガザ地区のトップのシンワル指導者を、殺害されたハニーヤ最高幹部の後任に選んだと発表しました。
イスラエル側は反発していて中東のメディアはイスラエルとハマスの停戦交渉が長引く可能性があると指摘しています。
イスラム組織ハマスは6日、ガザ地区のトップのシンワル指導者を、先月31日に訪問先のイランで殺害されたハニーヤ最高幹部の後任として政治局長に選んだと発表しました。
難民キャンプ生まれ イスラエルの刑務所に収監も
複数の欧米メディアなどによりますと、シンワル指導者は1962年にガザ地区南部のハンユニスの難民キャンプで生まれました。
その後、1987年に発足したハマスに加わり、軍事部門のカッサム旅団の創設に関わりました。
1989年、殺人や誘拐の罪でイスラエルの刑務所に収監されます。そして、2011年、イスラエル兵1人の解放と引き換えに1000人余りのパレスチナ人受刑者が釈放された際に、釈放されました。
2015年にはアメリカ政府が国際テロリストに指定。
そして、2017年にガザ地区の指導者を務めていたハニーヤ氏が政治部門のトップに選出された際、その後任としてがガザ地区のトップに選ばれていました。
シンワル指導者は、イスラエルからは去年10月のハマスによる大規模な奇襲攻撃の首謀者だとして殺害のターゲットとされているほか、ICC=国際刑事裁判所の主任検察官からは戦争犯罪や人道に対する犯罪の疑いでイスラエルのネタニヤフ首相などとともに逮捕状を請求されています。
これに関連してイスラエルのカッツ外相は「最大のテロリスト、シンワルがハマスの新たなリーダーに選ばれたことは彼を殺害し、この下劣な組織を世界から消し去る新たな理由となる」とSNSに投稿しました。
また中東の衛星テレビ局アルジャジーラはシンワル指導者が最高幹部となったことで、イスラエルとハマスの停戦交渉はプロセスが複雑化し、長引く可能性があると指摘しています。
米 ブリンケン国務長官 “停戦の結論に向け最も重要な決定権者”
アメリカのブリンケン国務長官は殺害されたイスラム組織ハマスの最高幹部の後任に選ばれたシンワル指導者について「停戦の結論に向けてこれまで最も重要な決定権者であり、これからも同じだ」と述べ、イスラエルとの停戦に応じるよう促しました。
アメリカ 中東各国との協議相次いで行う
ガザ地区でイスラエルとの戦闘を続けるハマスのハニーヤ最高幹部が先月31日、訪問先のイランで殺害され、イランはイスラエルによる攻撃だとして報復する構えです。
こうした中、アメリカのホワイトハウスは6日、声明を発表し、バイデン大統領がイスラエルとハマスとの停戦交渉で仲介役を務めるエジプトのシシ大統領とカタールのタミム首長と相次いで電話で協議したことを明らかにしました。
バイデン大統領は停戦交渉について「最終段階に達している」として今後数日間、緊密に連携するとしています。
ブリンケン国務長官もこうした中東の国々を通じて中東地域の緊張が制御不能な状態に陥らないよう外交的な解決を模索しているとして「これ以上の攻撃は紛争と不安定な状態を固定化するだけだ」とイラン側に行動の自制を求めました。
一方で「イスラエルの安全保障に対するわれわれの責任は揺るぎない。テロリストやその支援者の攻撃からイスラエルを守り続ける」と強調しました。
ハマスの最高幹部の殺害をきっかけに中東地域で緊張が高まるなか、対立の原因となっているガザ地区の戦闘を停止するための交渉が進展するかどうかは依然、不透明です。
林官房長官「即時の停戦を求める」
林官房長官は記者会見で「戦闘が長期化する中、ガザでの危機的な人道状況や多数の民間人が犠牲となっていることを深刻に懸念している。即時の停戦を求めるとともに、持続可能な停戦につながることを強く期待しており、関係国とも緊密に連携し、事態の沈静化に取り組んでいく」と述べました。
その上で「引き続き、在留邦人の安全確保に万全を期すとともに、事態のさらなる悪化やエスカレーションを防ぐため、外交努力を尽くしていきたい」と述べました。