最低さいてい賃金ちんぎん 厚生こうせい労働ろうどう省しょうの審議しんぎ会かい始はじまる 新型しんがたコロナの影響えいきょう 焦点しょうてんに

最低さいてい賃金ちんぎんを都道とどう府県ふけん別べつでみると、最もっとも高たかいのは東京とうきょうで1013円えん、次ついで神奈川かながわが1012円えん、大阪おおさかが964円えんとなっています。

一方いっぽう、最もっとも低ひくいのは秋田あきた、鳥取とっとり、島根しまね、高知こうち、佐賀さが、大分おおいた、沖縄おきなわの7県けんで792円えんとなっています。

最もっとも高たかい東京とうきょうと、最もっとも低ひくい7つの県けんとの差さは、221円えんとなっています。

最低さいてい賃金ちんぎんは生活せいかつ水準すいじゅんや、企業きぎょうの支払しはらい能力のうりょくなどをもとに決きめられ、最高さいこうと最低さいていの地域ちいき間かんの差さは2002年度ねんどは104円えんでしたが、この20年ねん近ちかくの間まで2倍ばい以上いじょうに広ひろがりました。

労働ろうどう組合くみあいなどは、最低さいてい賃金ちんぎんの低ひくいところから高たかい都市とし部ぶに若わかい人材じんざいが流出りゅうしゅつし、地方ちほうの人口じんこう減少げんしょうが進すすんでいると訴うったえています。

このため、労働ろうどう組合くみあい側がわからは、最低さいてい賃金ちんぎんを都道とどう府県ふけん別べつではなく全国ぜんこく一律いちりつにすべきだという要望ようぼうも出でています。

この18年間ねんかんで239円えん、引き上ひきあげられました。

2019年度ねんどまでの4年間ねんかんの引き上ひきあげ額がくは、25円えんから27円えんと、毎年まいとし3％程度ていどの大幅おおはばな引き上ひきあげとなりました。

昨年度さくねんどは新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで審議しんぎ会かいが引き上ひきあげの目安めやすを示しめすことができず、全国ぜんこく平均へいきんで1円えんの引き上ひきあげにとどまりました。

時給じきゅうは、現在げんざいの東京とうきょう都との最低さいてい賃金ちんぎんと同おなじ1013円えんで、これまで最低さいてい賃金ちんぎんと同おなじ時給じきゅうで働はたらいてきました。

週しゅうに6日にち、午前ごぜん中ちゅうから夕方ゆうがたまで書店しょてんに本ほんを発送はっそうする仕事しごとをしています。

1か月かげつの収入しゅうにゅうは手取てどりで平均へいきん15万まん円えんほどで、時間じかん単位たんいで給料きゅうりょうが支払しはらわれるため、仕事しごとが少すくない月つきには10万まん円えん余あまりに減へってしまうといいます。

親おやは介護かいごが必要ひつような状態じょうたいで介護かいごサービスを利用りようしていて、そのための費用ひようも必要ひつようです。

生活せいかつ費ひを抑おさえるために食費しょくひなどを節約せつやくするとともに、髪かみを切きる回数かいすうを減へらし、むだな買い物かいものはしないようにしています。

しかし貯金ちょきんはほとんどできていないといいます。

鈴木すずきさんは、親おやの介護かいごや家事かじをしているため、職場しょくばが自宅じたくから近ちかい今いまの仕事しごとから別べつの仕事しごとに変かえることは難むずかしいといいます。

今いまの時給じきゅうでは、老後ろうごに安定あんていした生活せいかつを送おくることができるのか不安ふあんが強つよいといいます。

鈴木すずきさんは「髪の毛かみのけは半年はんとしに1回かいそろえる程度ていどで、化粧けしょう品ひんは2年ねん以上いじょう買かっていないです。切り詰きりつめて余あまったお金おかねを1000円えんでも2000円えんでも、とにかく通帳かよいちょうに入いれて、ある程度あるていどの年としになるまでは使つかわないと決きめています。テレビで『孤独こどく死し』とか見みると、自分じぶんもいずれそうなるのかなと思おもったりして、将来しょうらいのことを考かんがえれば考かんがえるほど不安ふあんになります」と話はなしています。

同おなじ会社かいしゃには、アルバイトとして働はたらく同僚どうりょうがおよそ300人にんいますが、その多おおくは最低さいてい賃金ちんぎんと同おなじ時給じきゅうで働はたらいているといいます。

同僚どうりょうからは「1人にん暮くらしをしていて家賃やちんを払はらうと数すう万まん円えんしか手元てもとに残のこらない」など生活せいかつが苦くるしいという声こえをよく聞きくといいます。

中なかにはお金おかねを節約せつやくするために昼食ちゅうしょくを食たべない人ひとや、交通こうつう費ひを使つかわないように職場しょくばから遠とおく離はなれていても自転車じてんしゃや徒歩とほで通勤つうきんする人ひともいるということです。

鈴木すずきさんは「最低さいてい賃金ちんぎんが上あがれば不安ふあんも違ちがってくるし、頑張がんばろうという気持きもちにもなると思おもう。今いまのままでは生活せいかつは苦くるしいままでどんどん格差かくさが出でてくると思おもうので最低さいてい賃金ちんぎんを大幅おおはばに上あげてほしいです」と話はなしていました。

子こどもを保育ほいく園えんに預あづけて、1週間しゅうかんに合あわせて5日にちから6日にち、アルバイトとしてコンビニエンスストアの店員てんいんと、パートとして清掃せいそうの仕事しごとのダブルワークをしています。

いずれの仕事しごとも時給じきゅうは岩手いわて県けんの最低さいてい賃金ちんぎん793円えんをわずかに上回うわまわる800円えん余あまりです。

1か月かげつの収入しゅうにゅうは手取てどりで10万まん円えんほどで、子こどもと2人にん暮くらしをできる経済けいざい的てきな余裕よゆうはなく、両親りょうしんのいる実家じっかで暮くらしています。

なるべく生活せいかつ費ひを節約せつやくしようと、職場しょくばの人ひとから子こども服ふくをもらったり、スマートフォンで個人こじんが出品しゅっぴんしたものを買かうことができるフリマアプリを頻繁ひんぱんにチェックして、服ふくやおもちゃを格安かくやすで購入こうにゅうしたりしていて、新品しんぴんを買かうことはほとんどないということです。

子こどもの将来しょうらいの学費がくひなどが気きがかりですが、貯金ちょきんはほとんどできていないのが現状げんじょうです。

今いまの時給じきゅうでは、休やすみを少すくなくして長ながい時間じかん働はたらかなくてはならず、子こどもとの時間じかんを十分じゅうぶんにとれないといいます。

女性じょせいは「生活せいかつがギリギリですし、子こどもにかかるお金おかねもこれから増ふえるので、将来しょうらいの学費がくひなどが心配しんぱいです。子こどもとできるだけ一緒いっしょにいたいのですが、働はたらかないといけないため、子こどもにも我慢がまんをさせてしまっています。時給じきゅうが上あがれば休やすみをとって遊あそびに連つれて行いくこともできますし、遊園ゆうえん地ちなどいろいろなものを見みせてあげたいです」と話はなしていました。

兵庫ひょうご県けん伊丹いたみ市しで居酒屋いざかやを経営けいえいする古こ東ひがし良介りょうすけさん（38）は、正せい社員しゃいん1人にんと学生がくせいのアルバイトおよそ10人にんを雇用こようしています。

現在げんざい、兵庫ひょうご県けんの最低さいてい賃金ちんぎんは900円えんとなっていますが、周辺しゅうへんの大型おおがたチェーン店てんがアルバイトの時給じきゅうを1000円えん以上いじょうに設定せっていすることが多おおくなりました。

このため、アルバイトの確保かくほなどのために、居酒屋いざかやでも時給じきゅうを100円えん引き上ひきあげ1000円えんとしています。

人件じんけん費ひの負担ふたんが大おおきくなるだけでなく、食材しょくざいなどの原材料げんざいりょう費ひも年々ねんねん上あがっています。

例たとえば揚げ物あげものなどで毎日まいにち使づかい調理ちょうりに欠かかせない油あぶらについては、おととしと比くらべて18リットル当あたり750円えん近ちかく値上ねあがりしたということです。

1か月かげつで換算かんさんすると油あぶら代だいだけで6000円えんも負担ふたんが増ふえました。

一方いっぽう、店みせの売り上うりあげは厳きびしくなっていて、去年きょねんからことしにかけては新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいによる緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげんなどで、アルコール類るいの提供ていきょうができなくなりました。

売り上うりあげは1日にちおよそ11万まん円えんから、最もっとも影響えいきょうが大おおきい時ときでは半分はんぶん以下いかの1日にち3万まん円えんにまで落ち込おちこんだといいます。

国くにの持続じぞく化か給付きゅうふ金きんや兵庫ひょうご県けんの補助ほじょ金きんなどおよそ400万まん円えんに加くわえ、金融きんゆう機関きかんからはおよそ2000万まん円えんを借かりていますが、感染かんせん拡大かくだいの長期ちょうき化かで、賃料ちんりょうなど店みせの経営けいえいを続つづけるための運転うんてん資金しきんに当あてているということです。

現在げんざいは、ランチ営業えいぎょうや夜間やかんのテイクアウトでしのいでいますが、最低さいてい賃金ちんぎんが大幅おおはばに引き上ひきあげられれば、周辺しゅうへんのチェーン店てんでも時給じきゅうがさらに上あがって、アルバイトの時給じきゅうを新あらたに引き上ひきあげざるを得えなくなると危惧きぐしています。

料理りょうりやお酒さけの値上ねあげも考かんがえていますが、そうすると客きゃくが離はなれてしまい、逆ぎゃくに売り上うりあげが下さがってしまうのではないかと考かんがえています。

古こ東ひがしさんは「最低さいてい賃金ちんぎんは何なん度ども上あがっているが経営けいえいが苦くるしい中なか、簡単かんたんには価格かかくに転嫁てんかできないのが実態じったいです。最低さいてい賃金ちんぎんが大幅おおはばに引き上ひきあげになればアルバイトを減へらすということも検討けんとうしないといけないがそうなると店内てんないのサービスが低下ていかしてしまうので厳きびしい対応たいおうになります」と話はなしています。

そのうえで「今後こんごは賃金ちんぎんの相場そうばも全体ぜんたいとしては上昇じょうしょう傾向けいこうになることが見込みこまれるので、最低さいてい賃金ちんぎんを引き上ひきあげる方向ほうこうで問題もんだいはないと考かんがえる。しかし、感染かんせん拡大かくだいの影響えいきょうが続つづく今いまは厳きびしい業界ぎょうかいが引き上ひきあげによる悪影響あくえいきょうを受うけないよう、一定いっていの給付きゅうふをするなどの支援しえん策さくを多面ためん的てきに検討けんとうし、企業きぎょうへの支援しえんを続つづけていくべきだ」と話はなしています。

また、海外かいがいとの比較ひかくについては「イギリスでは、最低さいてい賃金ちんぎんの水準すいじゅんや引き上ひきあげ方法ほうほうについて審議しんぎする専門せんもんの機関きかんがあり、経済けいざいに影響えいきょうを与あたえない引き上ひきあげ幅はばはどれくらいかを毎年まいとし、議論ぎろんしている。そのうえで、現在げんざいはすべての労働ろうどう者しゃの賃金ちんぎんの中央ちゅうおう値ちの3分ぶんの2を最低さいてい賃金ちんぎんの目安めやすとして決きめて、毎年まいとし少すこしずつ引き上ひきあげていくという方向ほうこうで国くにとして動うごいている」と説明せつめいしました。

そのうえで、「日本にっぽんでは最低さいてい賃金ちんぎんがどれくらいの水準すいじゅんが望のぞましいのかという議論ぎろんが十分じゅうぶんにできていない。経済けいざいへの影響えいきょうを抑おさえながら引き上ひきあげていく方策ほうさくについて専門せんもん家かを中心ちゅうしんにしっかりと検討けんとうできるよう、最低さいてい賃金ちんぎんの議論ぎろんをもっと深ふかめていく必要ひつようがある」と話はなしています。