激戦州で最後の訴え
民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領は投票日前日の4日夜、7つの激戦州の中で選挙人の数が最も多く、両陣営が活動に力を入れる東部ペンシルベニア州を訪れました。
ハリス氏 ピッツバーグの製鉄所跡地で集会
ハリス氏は第2の都市ピッツバーグの製鉄所の跡地で集会を開き「私たちは後戻りしない。アメリカは新たなスタートを切る準備ができている。リーダーの真の条件は誰を打ち負かしたかではなく、誰を後押ししたかによって決まる」と訴えました。
集会には、投票日を翌日に控えたハリス氏の訴えを聞こうと民主党のシンボルカラー、青のTシャツを着た人やハリス氏の名前のプラカードを持った人々が次々と会場につめかけていました。
60歳の男性
「投票日を翌日に控え、いまとても興奮している。労働者が多いピッツバーグにとって、中小企業などを守るというハリス氏の政策は非常に重要だ」
18歳の女性
「ハリス氏に会えることやあす投票できることを楽しみにしている。ハリス氏を応援しているが、今回は非常に接戦でどちらの候補が勝ってもおかしくない状況だ。とても緊張している」
ハリス氏 最大都市フィラデルフィアで集会
さらにハリス氏は、最大都市フィラデルフィアで開いた集会では「今こそ新たな世代によるリーダーシップが必要だ。わたしは次の大統領としてそのリーダーシップをとる用意ができている。歴史上最も接戦となる可能性もある。あなたたちの1票1票が重要だ」と述べ、みずからへの支持を訴えました。
トランプ氏 ピッツバーグ市内で集会
これに対して、トランプ氏もピッツバーグ市内の屋内競技場で集会を開き「ハリス氏は国内では物価の高騰と経済的な苦悩を、国外では戦争と混乱を招いた。われわれはこの国の歴史上最もすばらしい4年間をスタートさせ、世界が目にしたことのないような驚異的な好景気を実現する」と訴えました。
支持者たちは、トランプ氏の名前を繰り返し大きな声で口にするなどして盛り上がりを見せていました。
40歳の女性
「演説は感動的でパワフルで、すばらしかった。私はユダヤ系アメリカ人で、トランプ氏が中東の戦争を止め、イスラエルを安全な国にするために全力を尽くしてくれると信じている。トランプ氏以外の大統領はありえない」
45歳の男性
「トランプ氏の経済政策を支持している。雇用の創出などアメリカによい経済効果をもたらすだろう。トランプ氏に投票するのは今回で3回目だ。接戦にはならず、彼の勝利は早い段階でわかるだろう」
トランプ氏 ミシガン州に移動して演説
さらにトランプ氏は場所を移動して、5日未明に激戦州の中西部ミシガン州で有権者を前に演説しました。
このなかでトランプ氏は「この4年、アメリカの国民はひどい失敗に悩まされてきた。ハリス氏のもとで、国内では生活費の高騰、経済的な苦悩があり国外では戦争や混乱も起きた。われわれはこうした状況を許さず、すぐに終わらせる」とバイデン・ハリス政権を非難し、みずからへの投票を呼びかけました。
最終盤の世論調査で大接戦となる中、両候補者とも票の掘り起こしに向けて最後まで訴えた形です。
アメリカ大統領選挙は現地時間の5日午前6時、日本時間の今夜8時から南部バージニア州など各州で順次、投票が始まり、日本時間の6日午前から開票作業が行われます。
米国防総省 州兵を動員し警戒強化
アメリカ国防総省は、大統領選挙をめぐる暴動や混乱などの不測の事態に備えて、州兵を動員し警戒を強化することにしています。
これは、国防総省のライダー報道官が4日、記者会見で明らかにしました。それによりますと、州兵は投票日の5日から13日にかけて首都ワシントンの消防局の支援にあたるとしています。
このほか、6つの州で同じように州兵が選挙の支援にあたるほか、17の州のおよそ600人の州兵が必要に応じて出動できるよう待機するとしています。
FBI 24時間態勢の指揮所を設置
FBI=連邦捜査局は、首都ワシントンの本部に24時間態勢で大統領選挙への妨害行為などに対応する指揮所を11月1日に設置しました。
FBIの発表によりますと指揮所にはFBIのほか国土安全保障省、それにシークレットサービスなどさまざまな関連機関の職員、およそ80人が加わっているということです。
指揮所では全米55か所にあるFBIの地方事務所や、通報用のホットラインなどから寄せられた情報を分析して対応するということです。
FBIの幹部は具体的な脅威としては選挙スタッフなどに対する脅迫や暴力、外国からの悪意ある干渉、サイバー攻撃などが想定されるとしたうえで、「指揮所の目的は選挙の安全を脅かすような脅威や情報が入ってきたときに、迅速に対応することだ」と強調しています。
FBIは指揮所についてこれまでのところ、9日まで運営するとしています。
米国家情報長官室 “ロシアが虚偽の情報など投稿”
アメリカの情報機関を統括する国家情報長官室などは4日、声明を出し「選挙の公正さに対する国民の信頼を傷つけ、国内の分断をあおることを目的にした工作を、ロシアを中心とする外国勢力が実施していることを確認した」と発表しました。
この中で国家情報長官室は「最も活動的な脅威はロシアだ」と位置づけています。
その上でロシアの工作員は、激戦州の当局者が投票用紙の水増しなどさまざまな選挙不正を画策しているという虚偽の情報を投稿し拡散したほか、西部アリゾナ州で選挙不正が行われたと主張する人物の偽のインタビュー動画を作成したとしています。
国家情報長官室は「こうした活動は投票日以降、数週間にわたって激しくなり、特に激戦州に集中することが予想される」と警鐘を鳴らしています。
裁判所 マスク氏の100万ドル配布を容認
アメリカ大統領選挙の激戦州で、トランプ氏を支持する実業家のイーロン・マスク氏が投票日まで毎日、抽選で1人に100万ドル、日本円でおよそ1億5000万円を配るキャンペーンを行っていることについて、投票日前日の4日、東部ペンシルベニア州の裁判所は容認する判断を下しました。
州の検察が10月末「違法な宝くじにあたる」などとして、キャンペーンを中止するよう訴えていました。
裁判所は、マスク氏側の答弁をもとに審理したとしていて、判断の理由などについては、後日明らかにするとしています。
異例の米大統領選【詳しく】
今回のアメリカ大統領選挙は、候補者が銃撃されたり、現職の大統領が56年ぶりに選挙戦の途中で撤退したりするなど、異例の展開となっています。
トランプ氏の銃撃事件
ことし7月13日、東部ペンシルベニア州で行われた選挙集会でトランプ前大統領が演説中に銃撃され、右耳をけがする事件が発生しました。
20歳の容疑者の男はその場で射殺されましたが、大統領候補の暗殺未遂事件が起きたことで、アメリカ社会では大きな衝撃が広がりました。
その後も、9月中旬には南部フロリダ州でトランプ前大統領がプレーしていたゴルフ場の近くで、銃を所持していた男を捜査当局が拘束。
また10月中旬には西部カリフォルニア州でトランプ氏の集会に向かおうとしていた男が複数の銃を違法に所持していたとして逮捕されていて、政治的暴力への懸念が広がりました。
現職大統領が途中で撤退
ことし7月21日、バイデン大統領は大統領選挙の再選を断念し、選挙戦から撤退すると発表。
後任の候補として、ハリス副大統領を支持することを明らかにしました。
再選を目指す現職大統領が選挙戦の途中で撤退するのは、1968年のジョンソン大統領以来、56年ぶりのことでした。
6月下旬に行われた共和党のトランプ氏とのテレビ討論会で、バイデン大統領はことばに詰まる場面が目立つなど精彩を欠き、撤退を求める圧力が日増しに強まる中での決断でした。
国民向けに行った演説で、バイデン大統領は「新しい世代に引き継ぐことが最善の方法だと決断した」と述べ、理解を求めました。
ハリス氏の短期決戦
バイデン大統領の撤退表明を受けて、民主党は後継候補を決める党の代議員による投票を行い、8月6日にハリス副大統領を正式に候補者に指名しました。
演説を行ったハリス氏は「私たちの選挙戦はドナルド・トランプとの戦いというだけではない。この選挙戦は未来に向けた戦いだ」と強調し、選挙活動を本格化させ、投票日まで3か月を切る中、異例の短期決戦が始まりました。
トランプ氏 裁判を抱えるなかでの選挙戦
今回の選挙戦は、候補者のトランプ氏が4つの刑事裁判を抱えるなかでの選挙戦という点でも異例です。
1 不倫口止め料支払いで業務記録改ざん
このうち、2016年の大統領選挙前に支払った不倫の口止め料をめぐり業務記録を改ざんした罪に問われた裁判で、トランプ氏はことし5月、アメリカの大統領経験者としては初めて有罪の評決を受けました。
量刑の言い渡しは一度延期されたあと、9月に予定されていましたが、大統領選挙後の11月26日に再び延期されました。
裁判官は、大統領選挙に影響を与えようとしているという見方を避けるためだとしています。
それ以外の裁判は以下の通りです。
2 大統領選挙 手続き妨害
トランプ氏は2021年に起きた連邦議会への乱入事件をめぐり、その前の年に行われた大統領選挙の結果を覆そうと選挙結果を確定する手続きを故意に妨げたとして、国家を欺こうとした罪などに問われています。
3 機密文書不正保管
またトランプ氏は、大統領退任後、核兵器や軍の能力に関する情報など、最高機密を含む文書を不正に自宅で保管していたとして、スパイ防止法違反などの罪に問われています。
この事件で裁判所は、ことし7月に事件を捜査した特別検察官が任命について議会の承認を得ておらず、憲法に違反しているなどとして起訴を棄却しましたが、検察側は取り消しを求めて控訴しています。
4 ジョージア州 選挙結果巡り州政府に圧力
さらにトランプ氏は2020年、大統領選挙で敗れた際に南部ジョージア州での敗北の結果を覆すよう州政府に圧力をかけたとして、組織的な犯罪を取り締まる州法に違反した罪などにも問われています。
林官房長官「推移や影響を注視」
アメリカ大統領選挙について、林官房長官は閣議のあとの記者会見で「推移や、あり得べき影響も含め、高い関心を持って注視している。日米同盟は日本の外交・安全保障政策の基軸であり、インド太平洋地域と国際社会の平和と繁栄の基盤であることは変わらない。今後も日米同盟の抑止力と対処力をいっそう強化するとともに、自由で開かれた国際秩序の中核を担うグローバル・パートナーとして幅広い日米協力をさらに深化させていく」と述べました。
武藤経産相「選挙の動向 予断を許さない」
武藤経済産業大臣は「大統領選挙がいよいよということで選挙の動向、新政権の方針、並びに政策に関しては予断を許さない状況だ」と述べました。
その上で「いずれの候補が勝利しようとも経済、環境、エネルギーのどの分野においても、米国との緊密な連携や日米協力が不可欠であることは全く変わらない。我が国の国益に資するよう、日米の経済関係をいっそう発展させていきたい」と述べました。
岩屋外相「日米同盟 今後も外交・安全保障政策の基軸」
岩屋外務大臣は「高い関心を持って注視している。日米同盟は外交・安全保障政策の基軸であり、地域と国際社会の平和と繁栄の基盤であることは今後とも変わらない」と述べました。
その上で「アメリカの中では、党派を超えて日米同盟の重要性について共通の認識が存在している。新大統領が決まれば、できるだけ早く、首脳をはじめハイレベルの会談を行うことが望ましいが、現時点でいつになるかは決まっていない」と述べました。