Actualités japonaises: “顔画像”が流出まさか残っているなんて…

「顔かお画像がぞうが大量たいりょうに保存ほぞんされたままで衝撃しょうげきを受うけました」

中古ちゅうこで購入こうにゅうしたサーマルカメラに知しらない子こどもたちの画像がぞうが残のこっていることに気付きづいた男性だんせいは当時とうじのことをこう語かたりました。

残のこされていた画像がぞうは3700枚まい以上いじょう。

取材しゅざいを進すすめると同おなじように、中古ちゅうこで購入こうにゅうしたサーマルカメラから複数ふくすうの画像がぞうを見みつけたという別べつの購入こうにゅう者しゃも…。流出りゅうしゅつの実態じったいを追おいました。

（社会しゃかい部ぶ佐々木ささき良介りょうすけ）

生活せいかつの一部いちぶになった検温けんおん

2020年ねん、新型しんがたコロナによって私わたしたちの生活せいかつは一変いっぺんし、建物たてものや部屋へやに入はいる際さいには検温けんおんを求もとめられるようになりました。

「正常せいじょうな体温たいおんです」

毎日まいにち検温けんおんのたびに聞きこえてくるこの音声おんせいは、多おおくの人ひとにとって生活せいかつの一部いちぶに。顔かおを近ちかづけるだけで接触せっしょくせずに体温たいおんが測はかれるサーマルカメラは需要じゅようが急速きゅうそくに高たかまり、調査ちょうさ会社かいしゃによると、2020年ねん以降いこう、年間ねんかん4万まん台だいから5万まん台だいが販売はんばいされたと推計すいけいされています（富士ふじ経済けいざい調しらべ）。

その後そのご、ことし5月つきに新型しんがたコロナが5類るいに移行いこうされて以降いこう、サーマルカメラは次第しだいに姿すがたを消けしていきました。

しかし、こうしたカメラの一部いちぶは処分しょぶんされることなく、インターネットで転売てんばいされていました。そしてその中なかに、検温けんおんした人ひとたちの顔かお画像がぞうが保存ほぞんされたままのものがあったのです。

不要ふようになり転売てんばいされるサーマルカメラ

インターネットのフリマサイトやオークションサイトをのぞいてみると、もともとは20万まん円えんから30万まん円えんで販売はんばいされていたサーマルカメラが数すう千せん円えんから数すう万まん円えんで数多かずおおく売うられていました。

メーカーもさまざまで不要ふようになった物ものが出品しゅっぴんされているとみられます。

子こどもの画像がぞうが残のこっているとは

その中なかからあるサーマルカメラを購入こうにゅうした原田はらだ寛之ひろゆきさん。

札幌さっぽろ学院がくいん大学だいがくの職員しょくいんで学内がくないの情報じょうほうシステムの管理かんりをしていることから、ことし7月つき、サーマルカメラのセキュリティーを調しらべる目的もくてきで購入こうにゅうしました。

およそ1万まん円えんで購入こうにゅうしたサーマルカメラが手元てもとに届とどき、原田はらださんがまず注目ちゅうもくしたのが、LANケーブルの差し込さしこみ口ぐちでした。早速さっそく、ケーブルをパソコンにつなぎ、簡単かんたんな設定せっていをするとログインするためのIDとパスワードを求もとめられました。

ここで説明せつめい書しょなどから推測すいそくできたある文字もじを入力にゅうりょくしてみると…なんとログインできてしまったのです。

そして目めの前まえに映し出うつしだされたのは思おもってもみなかった大量たいりょうのデータでした。

それはマスクをつけた子こどもたちのアップの顔かお画像がぞうでした。その数かずは3737枚まい。さらに、それぞれが検温けんおんした時間じかんや体温たいおんも記録きろくされていたのです。

札幌さっぽろ学院がくいん大学だいがく情報じょうほう処理しょり課か原田はらだ寛之ひろゆきさん

「子こどもさんの画像がぞう、正面しょうめんから顔かおをはっきり写うつしたものが3700件けんくらい保存ほぞんされていました。衝撃しょうげきでした」

個人こじん特定とくていにもつながりかねない

近年きんねん、解像度かいぞうどが急速きゅうそくに上あがっている小型こがたカメラ。原田はらださんが購入こうにゅうした端末たんまつには子こどもの服ふくに付ついた小学校しょうがっこうの校章こうしょうの形かたちまで見分みわけられる画像がぞうもあり、個人こじんの特定とくていにつながりかねない状態じょうたいでした。

写うつっていたのは子こども26人にんとおとな数すう人にんで、画像がぞうの内容ないようなどからサーマルカメラが使つかわれていたのは大阪おおさか市しにある学童がくどうクラブだと分わかったということです。

国くにの個人こじん情報じょうほう保護ほご委員いいん会かいは、解像度かいぞうどが高たかいカメラで撮影さつえいされるなどした顔かお画像がぞうは個人こじん情報じょうほうにあたる場合ばあいがあるとしています。画像がぞうが残のこされたまま第三者だいさんしゃの原田はらださんの元もとにサーマルカメラが渡わたったことは設置せっち者しゃが個人こじん情報じょうほう保護ほご法ほうに触ふれるおそれがありました。

画像がぞうが残のこったままだったと知しらされた学童がくどうクラブはその後そのご、買い戻かいもどす形かたちで端末たんまつを回収かいしゅう。フリマサイトで売却ばいきゃくした理由りゆうを取材しゅざいすると、「設置せっちしていたサーマルカメラを更新こうしんするタイミングでした。画像がぞうが保存ほぞんされることを知しりませんでした。認識にんしきが甘あまく申し訳もうしわけなく思おもっています」（学童がくどうクラブ）ということでした。

保存ほぞん知しらないケースほかにも

取材しゅざいを進すすめると、この学童がくどうクラブのように、サーマルカメラに顔かお画像がぞうが保存ほぞんされることを認識にんしきしていない設置せっち者しゃはほかにも複数ふくすういました。

そのひとつは全国ぜんこくで飲食いんしょくチェーンを展開てんかいしている都内とないの企業きぎょう。3年ねん前まえから、オフィスの入り口いりくちにサーマルカメラを設置せっちしています。

毎朝まいあさ、出社しゅっしゃしてきた社員しゃいんがまずこのカメラで検温けんおんをしてから業務ぎょうむに取とりかかってきましたが、担当たんとう者しゃはカメラに画像がぞうが保存ほぞんされているとは知しらなかったと打ち明うちあけました。

企業きぎょうの総務そうむ担当たんとう者しゃ

「顔かお画像がぞうが保存ほぞんされていると知しらなかったので驚おどろきました。会社かいしゃとしてきちんと情報じょうほうを管理かんりして、処分しょぶん方法ほうほうも守まもっていかないといけないなと思おもいます」

保存ほぞん機能きのう記載きさいがないメーカーも

顔かお画像がぞうが保存ほぞんされることを認識にんしきしないまま利用りようしていた設置せっち者しゃ。しかし、それは設置せっち者しゃの認識にんしきだけが原因げんいんではありませんでした。そもそも保存ほぞん機能きのうについて知しらせていないメーカーも確認かくにんされたのです。

映像えいぞうシステムを扱あつかう千葉ちば県けんの会社かいしゃのエンジニア・新妻にいづま浩光ひろみつさんは、カメラ機能きのうがあるさまざまな製品せいひんについて研究けんきゅうしています。ことし5月つきからは中古ちゅうこのサーマルカメラを5台だい購入こうにゅうして分析ぶんせき。なんと5台だいすべてに顔かお画像がぞうと見みられるデータが保存ほぞんされていました。

そしてその5台だいのうちの1台だいは取扱とりあつかい説明せつめい書しょに保存ほぞんや消去しょうきょについての記載きさいが全まったくなかったといいます。

エンジニア新妻にいづま浩光ひろみつさん

「電源でんげんをつないでくださいということだけが書かいてあり、保存ほぞんとか消去しょうきょというのは書かいていない。そういったことが一切いっさい記載きさいされていないというのが一番いちばん引ひっかかりました」

“コロナ禍か需要じゅよう高たかまり販売はんばい優先ゆうせん”

なぜ、個人こじんの顔かお画像がぞうが保存ほぞんされるという重要じゅうような情報じょうほうが説明せつめい書しょに記載きさいされていないのか。

この機種きしゅのメーカーに取材しゅざいしたところ、「コロナ禍かで需要じゅようが高たかまり、説明せつめい書しょの中なかで保存ほぞんや消去しょうきょなどを記載きさいするかどうか検討けんとうする機会きかいが少すくなかった。販売はんばいを優先ゆうせんしてしまった」と話はなしました。

一方いっぽう、ほかの4台だいの説明せつめい書しょには画像がぞうが保存ほぞんされることが記載きさいされていましたが、設置せっち者しゃは画像がぞうを残のこしたまま端末たんまつを手放てばなしていました。

エンジニア新妻にいづま浩光ひろみつさん

「体温たいおんを測はかるということを優先ゆうせんして、カメラであるという意識いしきがすごく低ひくかったと思おもうので、これが情報じょうほう機器ききであったということを知しっておく必要ひつようがあったんだなと思おもいます」

個人こじん特定とくていやフェイク画像がぞうのリスク

今回こんかいの取材しゅざいでは、流出りゅうしゅつした画像がぞうが悪用あくようされたケースは確認かくにんされませんでした。しかし、もし悪用あくようされた場合ばあい、どのようなリスクが考かんがえられるのか。

情報じょうほう学がくに詳くわしい国立こくりつ情報じょうほう学がく研究所けんきゅうじょの佐藤さとう一郎いちろう教授きょうじゅは、大おおきく分わけて2つのリスクがあると指摘してきしています。

1つは個人こじんが特定とくていされ、撮影さつえい時刻じこくなどから行動こうどうパターンが推測すいそくされることで、つきまといなどの被害ひがいにつながるリスクです。

実際じっさいに今回こんかい取材しゅざいした端末たんまつでも、保存ほぞんされた顔かお画像がぞうや体温たいおんとともに日付ひづけや時刻じこくがしっかりと残のこっていて、施設しせつを利用りようした時間じかんもはっきりとわかりました。

2つ目めはインターネット上じょうで悪用あくようされるリスクです。

サーマルカメラに保存ほぞんされた顔かお画像がぞうとインターネット上じょうの別べつの画像がぞうとを組み合くみあわせるなどして加工かこうされ、「フェイク画像がぞう」が作つくられてしまうおそれがあるといいます。

国立こくりつ情報じょうほう学がく研究所けんきゅうじょ佐藤さとう一郎いちろう教授きょうじゅ

「インターネット上じょうの情報じょうほうや照合しょうごう技術ぎじゅつを使つかえば、顔かお画像がぞうだけでも、どこの誰だれかわかる可能かのう性せいがだいぶん高たかくなっている。サーマルカメラの中なかに顔かお画像がぞうが残のこっているか残のこっていないかを確認かくにんし、残のこっていたら確実かくじつに消去しょうきょして廃棄はいきするようにしてください」