事件では、日本人24人を含む合わせて2977人が亡くなり、「テロリストに報復すべきだ」という機運が国内で急速に高まりました。
アメリカは、国際テロ組織アルカイダを率いていたオサマ・ビンラディン容疑者を事件の首謀者と断定し、事件の1か月後にビンラディン容疑者の引き渡しを拒否した、アフガニスタンの当時のタリバン政権に対し武力行使に踏み切りました。
そして、2年後の2003年にはイラクに対し、「大量破壊兵器を隠し持っている」として軍事攻撃を開始しました。
しかし、結局、大量破壊兵器は見つかりませんでした。
アフガニスタンでの軍事作戦では、2011年にアメリカの特殊部隊がパキスタン側で、ビンラディン容疑者を殺害し、大きな節目を迎えました。 ところがアフガニスタンでは武装勢力タリバンが勢力を盛り返し、イラクでは過激派組織IS=イスラミックステートが、一時は、シリアとイラクにまたがる広い地域にまで勢力を拡大。 ヨーロッパなどでも大規模なテロを起こし、泥沼の戦いが続くことになったのです。
国際的なシンクタンク・IEP=経済平和研究所の報告書によりますと、世界で2000年から2009年までの10年間に、テロによって死亡した人は7万1862人。 ところがその後の2010年から2019年までの10年間に死亡した人は18万2060人と、2.5倍に上りました。 ここでいうテロとは、戦争に伴う戦闘行為とは異なり、政治的、宗教的、社会的な目的などから、一般市民をねらって起こす暴力を指します。 また、アメリカ国務省が指定した国外のテロ組織の数も、同時多発テロ事件の前は29だったのが現在は72と、この20年間で2.5倍に増えています。 世界各地にテロの脅威は残ったままです。
IEPの報告書によれば最初の10年、テロはイラクとアフガニスタンに集中していました。 その後、2011年に「アラブの春」と呼ばれる民主化運動が中東各地に広がり混乱の中登場した過激派組織IS=イスラミックステートが活動を活発化。 犠牲者が急増しました。 さらにアフリカのナイジェリアで、イスラム過激派組織ボコ・ハラムの活動が活発化するなど、2014年には世界で3万3000人以上がテロで死亡しました。 その後、ISは支配地域のほとんどを失うものの、イデオロギーでつながったISの地域組織がアフリカのサハラ砂漠南側のサヘル地域、南西アジア、インド太平洋など世界各地に生まれ、活動を活発化させるようになっています。 また、CFR=アメリカ外交問題評議会の報告書によりますと、2002年から2018年のあいだに世界でテロにより犠牲になった人の実に53%が、4つの組織によるテロで亡くなりました。
▼アフガニスタンの武装勢力タリバン。 犠牲者2万9900人。 ▼過激派組織IS=イスラミックステート。 犠牲者2万9438人。 ▼アフリカのナイジェリアを中心に活動するイスラム過激派組織ボコ・ハラム。 犠牲者1万8641人。 ▼ソマリアに拠点を置くイスラム過激派組織アッシャバーブ。 犠牲者6237人。
「イラクとアフガニスタンでの長期にわたる戦争が無ければ、それらの紛争地に見られるような暴力の活性化はなかっただろう。紛争は、テロリストが、戦闘員や武器を獲得し、戦闘を理由にしたプロパガンダを展開することを手助けする。紛争は、テロという火に酸素を送り込むようなものなのだ」
一方で、アメリカ国内では同時多発テロ事件のようなテロはその後、起きておらず、アメリカ本土をテロから守るという目的は果たしたという主張もあります。 イラクとアフガニスタンの両方でアメリカ軍の現地司令官を務めたペトレアス氏は、重要な成果をあげたと強調しました。
「過去20年間、同時多発テロのような攻撃は起きていないし、アメリカの地においてイスラム過激派による大規模な攻撃も起きていない。さらに、アルカイダが、活動の聖域を築けない状態をつくりあげたことに加え、対テロ作戦によって、事件の首謀者のオサマ・ビンラディンに裁きを下した」
そうした組織・個人への監視や圧力強化とともに、テロの原因となっている、「憎悪」や「怒り」を摘み取っていく取り組みが必要であることは間違いありません。 インタビューした2人はこう指摘しました。 ペトレアス元司令官 「過激派の脅威は、場所を変えて生き続けることに疑いの余地はない。これは深刻な問題であり、10年の単位、さらには幾世代にもまたがる戦いとなる。常に圧力をかけ、監視していくことが大切だ」 メリーランド大学、ウィリアム・ブラニフ教授 「紛争を拡大させるのではなく最小化することだ。そのことこそが、テロ組織が次の世代の戦闘員を集めるために必要な資源を枯渇させることにつながる。必要なのは、イスラム社会を力づけ、テロ組織の魅力をけずりとっていく長期にわたる総合的な政治戦略だ」
アメリカは、いわゆる「世界の警察官」を務めることをやめ、台頭する中国への対抗に力を注ぐ構えです。 時代が大きな転換点にあるいま、国際社会がテロを抑え込んでいくためには、軍事力に依存するだけではなく、若者たちが過激思想に染まり、テロへと走らないような社会を作るという息の長い取り組みが求められています。
Q なぜ「テロとの戦い」が20年も続いたのか?
Q テロで犠牲になる人は減ったのか?
Q なぜ犠牲者は増えたのか?
Q なぜテロとの戦いによってもテロはなくならなかったのか?
Q アメリカが始めた「テロとの戦い」は、失敗だったのか?
Q テロを防ぐための鍵は何か?
Q 日本を含む国際社会は、どうすればよいか?