コロナワクチン接種せっしゅ 途上とじょう国こくとの格差かくさ拡大かくだい WHOが分配ぶんぱいの加速かそく訴うったえ

WHOヨーロッパ地域ちいき事務じむ局きょくでワクチンの接種せっしゅや分配ぶんぱいを担当たんとうするダッタ博士はかせはNHKの取材しゅざいに対にたいし「自国じこくだけでなく、自国じこくを取り巻とりまくほかの国くにの人ひとたちも感染かんせんから守まもらなければ、結局けっきょくはパンデミックを長引ながびかせることになる」と述のべ、ワクチンの分配ぶんぱいを加速かそくさせるよう国際こくさい社会しゃかいに訴うったえています。

また、途上とじょう国こくの中なかには接種せっしゅの態勢たいせい作づくりが遅おくれている国くにもあり、アフリカ南部なんぶのマラウイでは、国際こくさい社会しゃかいからの支援しえんでワクチンを受け取うけとったものの、ことし5月つきにはおよそ2万まん回分かいぶんの有効ゆうこう期限きげんが切きれて廃棄はいきするケースが起おき、望のぞむ人ひとすべてがひとしくワクチンの接種せっしゅを受うけられるようになるには依然いぜんとして多おおくの課題かだいがあると指摘してきされています。

背景はいけいには、ワクチンの供給きょうきゅう量りょうが圧倒的あっとうてきに少すくないことに加くわえて、国くにによっては接種せっしゅを実施じっしするための態勢たいせいを行政ぎょうせいが整ととのえるのに時間じかんがかかっていること、さらに、ワクチンへの不信ふしん感かんを抱いだく国民こくみんも少すくなくないことが指摘してきされています。

このうち、アフリカ南部なんぶのマラウイでは、これまでに人口じんこうおよそ1900万まん人にんのうち、6万まん人にん以上いじょうの感染かんせんが確認かくにんされ、2200人にん余あまりが亡なくなっていますが、ワクチンの接種せっしゅ率りつは人口じんこうの3％にも達たっしていません。

国際こくさい社会しゃかいからの支援しえんでワクチンを受け取うけとったにもかかわらず、接種せっしゅの態勢たいせい作づくりが遅おくれたことや、すでに有効ゆうこう期限きげんが迫せまっていたワクチンだったこともあって、今年ことし5月つきには一部いちぶのワクチンの有効ゆうこう期限きげんが切きれ、およそ2万まん回分かいぶんを廃棄はいき処分しょぶんせざるを得えなくなりました。

世界せかい銀行ぎんこうのデータによりますと、マラウイは人口じんこう10万まん人にん当あたりの医師いしの数かずが3.6人にんと日本にっぽんの240人にんなどと比くらべ、世界せかいでも医療いりょう体制たいせいがぜい弱ぜいじゃくな国くにの1つです。

首都しゅとリロングウェ郊外こうがいに暮くらす牧師ぼくしのクレメンド・ピーリさん（36）は、早はやくからワクチンの接種せっしゅを望のぞんでいたもののその機会きかいは訪おとずれず、ことし3月つきには新型しんがたコロナウイルスに感染かんせんして容体ようだいが悪化あっかし、死しの危機ききに直面ちょくめんしました。

ピーリさんは、翌月よくげつになってようやく1回かい目めの接種せっしゅを受うけることができましたが、接種せっしゅを受うけられなかった兄あには感染かんせんして48歳さいで死亡しぼうしたということで「政府せいふの対応たいおうは遅おそすぎる。一部いちぶとはいえ、ワクチンが使用しようされないまま廃棄はいきされたのはもったいないことだ」と批判ひはんしています。

一方いっぽうで、政府せいふによりますと、ワクチンへの不信ふしん感かんを抱いだく国民こくみんも少すくなくないことが接種せっしゅの遅おくれに拍車はくしゃをかけているということです。

会計かいけい士しのジェームズ・ムタワンジさん（37）は、ワクチンの1回かい目めの接種せっしゅを終おえた78歳さいの父親ちちおやが感染かんせんして死亡しぼうしたことを受うけ「ワクチンの効果こうかを信しんじることができない。自分じぶんは接種せっしゅする予定よていはない」と話はなしています。

マラウイ政府せいふは、来年らいねん中ちゅうに国民こくみんの60％が接種せっしゅを完了かんりょうすることを目指めざし、ワクチンの確保かくほを進すすめる方針ほうしんですが、クンビゼ・チポンダ保健ほけん相しょうはNHKのインタビューに対にたいし「せっかくワクチンを確保かくほしても、人々ひとびとが接種せっしゅを拒こばみ、破棄はきしてしまうようなことは再ふたたび繰り返くりかえしてはならず、国民こくみんに正ただしい情報じょうほうを伝つたえることに全力ぜんりょくを上あげる」と話はなしています。

アフリカでのワクチン接種せっしゅが出遅でおくれていることについて、WHOアフリカ地域ちいき事務じむ局きょくのモエティ事務じむ局長きょくちょうは、今月こんげつ2日にちの記者きしゃ会見かいけんで、各国かっこくが今月こんげつ末まつまでに少すくなくとも人口じんこうの10％の接種せっしゅを終おえるというWHOの目標もくひょうを、アフリカの国々くにぐにの8割わり近ちかくが達成たっせいできないだろうという見通みとおしを明あきらかにしたうえで、国際こくさい社会しゃかいに対にたいしてアフリカへのワクチン供給きょうきゅうを増ふやすよう求もとめるとともに、アフリカ各国かっこくの政府せいふに対にたいしては接種せっしゅ態勢たいせいの構築こうちくや国民こくみんとの対話たいわを強化きょうかするよう改あらためて、呼よびかけました。

イギリス・オックスフォード大学だいがくの研究けんきゅう者しゃなどが運営うんえいするサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、G7＝主要しゅよう7か国かこくで、ワクチンの接種せっしゅを終おえた人ひとの人口じんこうに占しめる割合わりあいは18日にちの時点じてんでカナダが69％と最もっとも高たかく、イギリスとイタリアが65％、フランスが64％、ドイツが62％、アメリカが54％、などとなっています。

一方いっぽう、アフリカ疾病しっぺい予防よぼう管理かんりセンターによりますと、アフリカ大陸たいりくで接種せっしゅを終おえた人ひとは今月こんげつ14日にちの時点じてんで人口じんこうの3.5％に満みたないということです。

ワクチンの需要じゅようが供給きょうきゅうを上回うわまわる状況じょうきょうが続つづく中なか、WHO＝世界せかい保健ほけん機関きかんは先進せんしん国こくなどに対にたいして、年内ねんないはワクチンを追加ついかの接種せっしゅに使つかうのではなく、WHOなどが主導しゅどうする国際こくさい的てきなワクチン分配ぶんぱいの枠組わくぐみ「COVAXファシリティ」に寄付きふするよう求もとめています。

WHOヨーロッパ地域ちいき事務じむ局きょくでワクチンの接種せっしゅや分配ぶんぱいを担当たんとうするシダータ・ダッタ博士はかせは、NHKのインタビューに応おうじ、WHOとしては公平こうへい性せいを確保かくほすべきだという観点かんてんに加くわえて、科学かがく的てきな観点かんてんからも今いまの段階だんかいでは追加ついかのワクチン接種せっしゅを勧すすめられないと述のべました。

ダッタ博士はかせは、ファイザーやモデルナなどのワクチンは1回かいや2回かいの接種せっしゅについて行おこなわれた臨床りんしょう試験しけんの結果けっかをもとにその安全あんぜん性せいや有効ゆうこう性せいをWHOが確認かくにんしたとしたうえで「3回かい目めの接種せっしゅが本当ほんとうに安全あんぜんなのか、調査ちょうさしなければならない。追加ついかの接種せっしゅを進すすめるかどうかは各国かっこくが主権しゅけんを持もって決きめることだが、WHOとしては今いまの段階だんかいですべての加盟かめい国こくに対にたいして追加ついかの接種せっしゅを勧すすめられるだけの証拠しょうこを持ち合もちあわせていない」と述のべました。

そのうえでダッタ博士はかせは、アフリカをはじめ世界せかいには、まだ1度ども接種せっしゅを受うけることができていない人ひとたちが大勢たいせいいるとしたうえで「自国じこくだけでなく、自国じこくを取り巻とりまくほかの国くにの人ひとたちも守まもる事ことができなければ、感染かんせんはいつまでも続つづき、結局けっきょくはパンデミックを長引ながびかせることになる」と述のべ、自国じこくで追加ついかの接種せっしゅを進すすめるよりもほかの国くにで接種せっしゅを受うけられずにいる人ひとたちへのワクチンの分配ぶんぱいを加速かそくさせるべきだと強調きょうちょうしました。