FRB副ふく議長ぎちょう 銀行ぎんこう破綻はたんで「FRBの監督かんとく 適切てきせつだったかどうかに着目ちゃくもく」

シリコンバレーバンクは破綻はたんする直前ちょくぜんの今月こんげつ8日にち、水曜日すいようびに顧客こきゃくの預金よきん引き出ひきだしに応おうじるため価格かかくが下落げらくしていた国債こくさいなどを売却ばいきゃくした結果けっか、巨額きょがくの損失そんしつを出だしたと発表はっぴょうしました。

バー副ふく議長ぎちょうは「こうした対応たいおうが投資とうし家かや預金よきん者しゃ、市場しじょうを不安ふあんにさせ9日にち・木曜日もくようびの午後ごご遅おそくに預金よきんの流出りゅうしゅつが始はじまり木曜日もくようび夜よるまでに流出りゅうしゅつ額がくが420億おくドルになることが分わかった。これは異常いじょうな速度そくどで大だい規模きぼな流出りゅうしゅつだ。銀行ぎんこうのスタッフは徹夜てつやでFRBからの貸し出かしだしを受うけるための担保たんぽを確保かくほしようとした。10日にち・金曜日きんようびには1000億おくドルの預金よきんが流出りゅうしゅつする見込みこみで、十分じゅうぶんな担保たんぽが確保かくほできず、破綻はたんにいたった」と振り返ふりかえりました。

また、公聴こうちょう会かいでは委員いいんから「シリコンバレーバンクを監督かんとくする責任せきにんがあるFRBが、なぜリスクを見落みおとすという失敗しっぱいを犯おかしたのか」と質問しつもんが投なげかけられました。

これに対にたいしてFRBのバー副ふく議長ぎちょうは「シリコンバレーバンクが抱かかえていた金利きんりと流動りゅうどう性せいのリスクについては2021年ねん11月つきから注目ちゅうもくされ、FRBもこの問題もんだいを銀行ぎんこうに伝つたえてきた。しかし、銀行ぎんこうが適切てきせつなタイミングで対処たいしょしなかったことを残念ざんねんに思おもう」と述のべました。

アメリカのFDIC＝連邦れんぽう預金よきん保険ほけん公社こうしゃによりますと金利きんりの上昇じょうしょうによって、ほとんどの銀行ぎんこうが含み損ふくみそんを抱かかえていて、その額がくはアメリカの銀行ぎんこう全体ぜんたいでは去年きょねん末まつの時点じてんで、およそ6200億おくドル、日本にっぽん円えんで81兆ちょう5000億おく円えん余あまりにのぼります。

債券さいけんは満期まんきになるまで保有ほゆうしていれば損失そんしつが確定かくていすることはありませんが、預金よきんの引き出ひきだしが急増きゅうぞうするなど、急きゅうきょ資金しきんが必要ひつようになると損失そんしつ覚悟かくごで売却ばいきゃくを迫せまられるおそれがあります。

相次あいついで破綻はたんした2つの銀行ぎんこうのうち「シリコンバレーバンク」は、コロナ禍かで行おこなわれた大だい規模きぼな金融きんゆう緩和かんわを背景はいけいに預金よきん量りょうが急増きゅうぞうし、国債こくさいなど安全あんぜんとされる債券さいけんを購入こうにゅうして運用うんようしていました。

しかし、FRBによる急速きゅうそくな利上りあげで金利きんりが低ひくいときに購入こうにゅうしていた国債こくさいなどの価格かかくは大おおきく下落げらく、含み損ふくみそんを抱かかえる形かたちとなりました。

そこに顧客こきゃくによる預金よきん引き出ひきだしが急増きゅうぞう。

これに応おうじるため国債こくさいなどの売却ばいきゃくを余儀よぎなくされて損失そんしつが膨ふくらみ経営けいえいが悪化あっかしたことが破綻はたんの要因よういんと見みられています。

発表はっぴょうのあと大手おおて格付かくづけ会社かいしゃムーディーズがシリコンバレーバンクの格付かくづけを引き下ひきさげ、預金よきんの引き出ひきだしはさらに加速かそくします。翌日よくじつ9日にちにはわずか1日にちで420億おくドル日本にっぽん円えんで5兆ちょう5000億おく円えん余あまりの預金よきんが流出りゅうしゅつしました。

アメリカの銀行ぎんこう破綻はたんで過去かこ最大さいだいとなった2008年ねん9月つきの貯蓄ちょちく金融きんゆう機関きかんワシントン・ミューチュアルのケースでは、およそ10日間にちかんで引き出ひきだされた預金よきんは167億おくドル、2兆ちょう1900億おく円えん余あまりでした。

今回こんかいのケースがいかに大だい規模きぼで異常いじょうなスピードだったかが分わかります。

背景はいけいには、預金よきんのおよそ90％が保険ほけんで保護ほごされない預金よきんだったことや、SNSなどで経営けいえい不安ふあんが一気いっきに広ひろまったことがあると見みられています。

銀行ぎんこうへの監督かんとく・規制きせいの柱はしらとなるのがFRB＝連邦れんぽう準備じゅんび制度せいど理事りじ会かいが銀行ぎんこう経営けいえいの健全けんぜん性せいを審査しんさするいわゆる「ストレステスト」です。リーマンショックのあと2010年ねんに成立せいりつした、いわゆるドッド・フランク法ほうのもと厳格げんかくな審査しんさが導入どうにゅうされました。

これは深刻しんこくな景気けいき後退こうたいなどが起おきた場合ばあいに十分じゅうぶんな資本しほんの備そなえがあるかどうかなどを徹底てってい的てきに調しらべる審査しんさです。当初とうしょは厳格げんかくな審査しんさの対象たいしょうとなるのは500億おくドル以上いじょうの資産しさんを持もつ金融きんゆう機関きかんでした。

しかし、トランプ前ぜん政権せいけんの下したで行おこなわれた規制きせい緩和かんわによって状況じょうきょうが変かわります。

この厳格げんかくな審査しんさの対象たいしょうが500億おくドル以上いじょうから2500億おくドル以上いじょうに引ひきあげられました。そのうえで総額そうがく1000億おくドル以上いじょうの銀行ぎんこうは4つの区分くぶんに分わけられました。1000億おくドルから2500億おくドル未満みまんの銀行ぎんこうは、審査しんさの頻度ひんどが、2年ねんに1度どに減へらされました。

また、金融きんゆう危機ききなどによる資金しきん流出りゅうしゅつにたえられる基準きじゅんを満みたしているかといった審査しんさ項目こうもくも除外じょがいされるなど、その内容ないようも緩ゆるやかなものになりました。

去年きょねんのストレステストでは34の銀行ぎんこうが審査しんさの対象たいしょうでしたが、破綻はたんしたシリコンバレーバンク、シグネチャーバンク、そして、一時いちじ経営けいえいへの懸念けねんが高たかまっていたファースト・リパブリック・バンクも対象たいしょうになっていませんでした。

3つの銀行ぎんこうはともにおととし12月末げつまつの時点じてんで1000億おくドル以上いじょうの総そう資産しさんがありました。

この背景はいけいにあるのが資産しさん規模きぼの急きゅう拡大かくだいです。

3つの銀行ぎんこうとも金融きんゆう緩和かんわによるマネー膨張ぼうちょうの影響えいきょうで総そう資産しさんがこの3年間ねんかんで、およそ2倍ばいから3倍ばいに急増きゅうぞうしていました。

アメリカの金融きんゆう当局とうきょくの関係かんけい者しゃによりますと、審査しんさには膨大ぼうだいな手続てつづきが必要ひつようで、準備じゅんびに少すくなくとも2年ねんはかかるといいます。資産しさん規模きぼが大おおきくなってから金融きんゆう当局とうきょくが審査しんさに入はいるまでには一定いっていの時間じかんがかかることになります。

金融きんゆう緩和かんわによるマネー膨張ぼうちょうのスピードが速はやすぎていわば審査しんさをすり抜すりぬけてしまった実態じったいが浮き彫うきぼりになりました。

また、銀行ぎんこう法ほうが専門せんもんのアメリカン大学だいがくヒラリー・アレン教授きょうじゅは「預金よきんの取り付とりつけによる銀行ぎんこうの破綻はたんはこれまで何なん度ども目めにしてきた破綻はたんだが、SNSによって、うわさの広ひろがるスピードが速はやくなったことは確たしかだ。今回こんかいの取り付とりつけのスピードは規制きせい当局とうきょくにとってもショックで、SNSなどを通をつうじて他たの銀行ぎんこうにも波及はきゅうすることを恐おそれて異例いれいの措置そちに踏み切ふみきった」という考かんがえを示しめしました。

その上うえで「2018年ねんに行おこなわれた銀行ぎんこうへの規制きせい緩和かんわは、シリコンバレーバンクのような規模きぼの銀行ぎんこうが金融きんゆうシステム不安ふあんを引き起ひきおこすことを心配しんぱいする必要ひつようはないという考え方かんがえかただった。預金よきんの全額ぜんがく保護ほごのような措置そちを講こうじるのであれば、その重要じゅうよう性せいに見合みあったより厳きびしい規制きせいと監督かんとくを行おこなうことが重要じゅうようだ」と述のべ、金融きんゆうシステムにとって重要じゅうような銀行ぎんこうの基準きじゅんを厳きびしくして審査しんさ対象たいしょうを2500億おくドルから引き下ひきさげるべきだと主張しゅちょうしました。