アメリカのノーベル賞といわれる「ベンジャミン・フランクリン・メダル」を2015年に受賞し、スウェーデン王立科学アカデミーが選ぶクラフォード賞を2018年に受賞していました。
真鍋さんは、同じ分野で研究をしてきたドイツのクラウス・ハッセルマンさんのほか、統計物理学を専門にしているイタリアのジョルジョ・パリ―ジさんと合わせて3人で受賞しました。
日本人がノーベル賞を受賞するのはアメリカ国籍を取得した人を含め28人目で、物理学賞では6年前(2015年)の梶田隆章さんに続き、12人目になります。
地球の気候は人類にとって極めて重要な複雑系のシステムで、真鍋さんは大気中の二酸化炭素の濃度が上がると地表の温度上昇につながることを明らかにしたとしています。 そして、1960年代には地球の気候に関するモデルの開発をリードし、地表面が太陽から受け取るエネルギーから宇宙に逃げていくエネルギーを差し引いた「放射収支」と、空気の縦の動きが、お互いにどう影響し合うか世界で初めて解明したとしていて、真鍋さんの研究は現在の気候モデル開発の基礎となったと評価しています。 また、選考委員会は会見の中で、真鍋さんを含めた3人の受賞者を「複雑な物理体系の理解を深めた人物」として紹介しました。 そして、物理学には基本的なルールを使って複雑なプロセスや現象を説明する役割があるとし、真鍋さんの功績として「力学を通じて地球の気候を研究し、初めて信頼性のある予測を出した。二酸化炭素が2倍になれば表面温度が2度上がると予測した」と説明しました。
また、ノーベル物理学賞の選考委員は、今回の賞が世界の首脳に対して気候変動の危機がいかに重要であるかメッセージを込めているのか、との質問に対して「世界の首脳でまだこのメッセージをしっかり受け止めていない人ならば、私たちがこう言ったからといって理解するものではないと思う。私たちが言えることは、温暖化は確固たる科学に基づいて解明しているということだ」と述べました。
物理学の専門家は、気候の変動が社会的な大きな関心事になる中でこれまでにない分野を対象にしたのではないかとしています。
その上で「科学技術立国であるわが国において、政府としても、あらゆる分野でイノベーションを起こし続けることを目指し、独創的で多様な研究をしっかり支援していくとともに、人材育成など未来への投資を積極的に進めてまいります」としています。
これは、すべてのノーベル賞を通じて初めての日本人の受賞でした。 その16年後、1965年に朝永振一郎さんが、さらに8年後の1973年に江崎玲於奈さんが続きました。 それから28年間、日本人の物理学賞の受賞はありませんでしたが、2002年、小柴昌俊さんが受賞しました。 2008年には南部陽一郎さん、小林誠さん、益川敏英さんの3人が同時受賞しました。 同じ年に1つの賞で、複数の日本人受賞者が出たのは初めてのことでした。 さらに、6年後の2014年にも赤崎勇さん、天野浩さん、中村修二さんの3人が同時受賞しました。 翌年の2015年には梶田隆章さんが受賞し、2年連続で日本人が受賞しました。
物理学賞以外では、1968年に川端康成さんが文学賞、1974年に佐藤栄作元総理大臣が平和賞を受賞しました。 また、1981年に福井謙一さんが日本人では初めて化学賞を受賞したほか、1987年に利根川進さんが日本人初の医学・生理学賞を受賞し、平成に入ってからは、1994年に大江健三郎さんが文学賞を受賞しています。 1999年までのおよそ100年の期間は、ノーベル賞を受賞した日本人は8人にとどまっていました。 ところがこの状況は2000年に入ってから大きく変化します。 2000年に白川英樹さんが受賞したのを始まりに、2001年に野依良治さん、2002年に田中耕一さんと3年連続で日本人が化学賞を受賞します。 田中さんが化学賞を受賞した2002年には小柴昌俊さんが物理学賞を受賞し、初めて同じ年に2人が受賞しました。 2008年には物理学賞で南部陽一郎さん、小林誠さん、益川敏英さんの3人が同時に受賞し、さらにその翌日には化学賞で下村脩さんの受賞が発表され、この年だけで4人が受賞しました。 また、2010年には化学賞で鈴木章さんと根岸英一さんがダブル受賞し、2012年には山中伸弥さんが医学・生理学賞を受賞しました。 2014年には赤崎勇さん、天野浩さん、中村修二さんの3人が物理学賞を受賞しました。 そして、2015年には医学・生理学賞で大村智さん、物理学賞で梶田隆章さんが受賞し、この年も2つの賞で受賞者が出ました。 さらに、2016年に大隅良典さんが医学・生理学賞を受賞し、2回目となる日本人の3年連続受賞となりました。 近年では、3年前の2018年に本庶佑さんが医学・生理学賞、おととしに吉野彰さんが化学賞を受賞し、2年連続で日本人が受賞しました。 文部科学省によりますと、去年までの受賞者数の27人は、スイスに次いで世界で7番目となっています。 また、2000年以降、去年までに自然科学系の3賞の日本人の受賞者数は19人で、アメリカに次いで2番目の多さとなっています。 一方、ノーベル賞の6つの部門のうち経済学賞だけは、日本人の受賞者はいません。
受賞理由 「現代の気候研究の基礎」
ともに受賞の研究者 「将来世代のために迅速に行動を」
気象や気候分野の受賞は初めて
岸田首相がコメント 「業績に心から敬意」
ノーベル物理学賞 これまでの受賞者は
日本人受賞者 2000年以降大きく変化