また、真鍋さんの功績について「自然現象をきちんと物理的手法でモデリングして、気候変動を予測することは社会的に極めて重要な課題だ。気候変動は非常に複雑だが、それを説明するために基礎に戻ってきちんと説明したということが重要で、若い人にもこのような基礎科学に興味を持って、いろんな分野に取り組んでもらいたい」と期待を寄せました。
そして、先輩受賞者のひとりとして「本当にこれからお忙しいかと思うので、健康に気をつけて過ごされるよう願っています」とエールを送っていました。
また、物理学賞を受賞した意義について「気象学は物理学の対象分野ではないと思われていたので、これが物理学として評価されたのはわれわれの分野全体として非常に大きな意味がある。気候変動問題というのは人類の問題で、その基礎が物理学でノーベル賞として認められたということを社会が受け止めて、気候変動対策というものに真剣に向き合っていかなくてはいけないというメッセージになると思います」と述べました。
そのうえで、研究成果について「誰も当時やっていなかった大気のモデルと海洋のモデルをくっつけたシミュレーションを作り、研究を進めたことだ。真鍋先生が開発されたモデルは温暖化の研究だけでなく、気象庁の予報のモデルにも応用されていて、私たちの生活に密接に関わっているものだ」と述べました。
真鍋さんの研究の意義について「気候の問題が物理の研究対象とは誰も思っていなかった時代に、この問題を物理の基礎を使って解明することを始めた第一人者で、温暖化の基礎となる研究を確立した」と説明しました。 そして、真鍋さんの人柄については、「非常に元気で朗らかな方。すごい研究をした人なのに、すごいと思わせずフランクに付き合ってくれる。研究が大好きな方だが、いわゆる学者という雰囲気ではなく、研究分野にとどまらず政治や社会の問題についても関心をもっていて、話題が豊富な方です」と話していました。
また「気候の問題をコンピューターを使って研究するという新しい学問に挑戦するのは、非常に勇気がいったと思う。基本的な気候の問題を一から考え抜く姿勢がすばらしく、物事を広く考えることと、とことん考えることのバランスが絶妙で、学ぶところが多かった」と話していました。
中村教授は「同じ日本人の偉大な先輩で公私にわたりお世話になり、感謝ということと、本当におめでとうございますと心からお伝えしたい」と話していました。 また、真鍋さんの業績について中村教授は「国連のIPCC=『気候変動に関する政府間パネル』の報告書も最近出されましたが、地球の気候を再現し、それに基づいて将来を予測するという、その礎を築かれたのが真鍋先生です。今から40年以上も前の、計算資源が少ない時代に地球のエネルギーの流れをどう再現するのか、リスクを覚悟の上で現実的な目標を見据えた哲学が卓越していたのだと思います」と述べました。 また、気象や気候の研究分野がノーベル物理学賞の対象とされたのは今回が初めてですが、中村教授は「これまで宇宙に関してはたくさんあるが、大気の分野がノーベル賞の対象になる日が来ると思っていなかったので驚きました。ノーベル賞という枠組みの中でわれわれの分野の研究が評価されたのは本当にありがたいし、うれしい。地球の人類の将来に不可欠だというところを認めていただいたとのは本当にうれしいことです」と話していました。
その上で「90歳になってもなお第一線の研究者なので、これからも引き続きご活躍を続けてほしい」と話していました。
真鍋さんの研究姿勢について「細かいところや分からないところに固執せず、それでいて大事なツボを外さないというすばらしいセンスの持ち主だ」と評価しました。 そして、今回の受賞の意義について「人類の安心安全を守る私たちの気象学の研究が世界中に認められたことは大変励みになる。豪雨や土砂崩れなどの災害から身を守るためには精密な予測が必要で、その研究成果をみなさんに納得してもらわないと世の中は変わらないという中、今回の受賞をきっかけにみなさんに納得してもらいやすくなった。その意味でも意義深い受賞だ」と話していました。
このうち名古屋大学大学院環境学研究科の須藤健悟教授は学会やセミナーなどで真鍋さんと一緒になったことがあるということで、「ノーベル物理学賞は地球科学などは基本的に対象にしないと言われてきたので本当に驚いています。真鍋先生は研究をいつも楽しんでいて、にこにこしていますが、非常に芯の強い方だと感じています。過去の研究を見て、せん越ながら、これが重要だという現象の本質的な部分、エッセンスの部分をズバッと切り出す、抽出することが非常に得意な方だという感想を持っています」と話していました。
選考委員を務めているNPO法人「気候ネットワーク」の代表で弁護士の浅岡美恵さんは、真鍋さんを受賞者に選んだ理由について「二酸化炭素が増えている要因が自然的な変化ではなく、産業革命以来の生産構造や暮らしの変化によるということをいち早く指摘していた。そしてこうした状況が積み重なることの危険性を警告し、世界的にも先駆的な研究となっていた」と説明しました。 その上で「今回のノーベル賞受賞の背景として、気候変動問題に今世界の人々が対応しないと温暖化に対処できる最後のチャンスを逃してしまいかねないという危機感があるのを感じた。この受賞を機に、多くの人に温暖化問題の大事さを再認識してもらいたい」と話していました。
環境省の幹部は「現在の気候変動に関する研究には真鍋さんが基礎を作ったモデル分析の手法は欠かせず、その功績は計り知れない。今回の受賞は、気候変動対策を考えるうえで科学的な知見に基づいた判断が求められていることが改めて裏付けられたと感じている」と話していました。 また、地球科学の研究の経験があり気候変動対策を担当する職員は「この分野の研究では真鍋さんの名前は必ず論文で目にします。ノーベル賞とは無縁の分野だと思っていたので、受賞は画期的だと思います。今月末からは国連の会議『COP26』も開催されるので、気候変動対策の重要性に改めて注目が集まれば」と話していました。
江崎玲於奈さん 「当時はおそらく注目されていない研究分野」
「気候モデリングの父と呼べる方」
「私たちの生活に密接に関わる研究」
「温暖化の基礎となる研究を確立した」
「新しい学問に挑戦 姿勢すばらしい」
「リスクを覚悟の上で現実的な目標 哲学が卓越」
「数値モデル 気象庁でも当たり前のように使用」
「物理学は基礎 広く分かってもらえるきっかけに」
「安心安全を守る気象学が世界中に認められた」
「研究をいつも楽しむ 非常に芯の強い方」
JAMSTEC 「世界各国で開発進む気候モデルの原型」
「受賞を機に温暖化問題の大事さ再認識を」
環境省でも歓迎の声