日本新聞: 「いったいいつ感染したのか？」オミクロン株対策の難しさ

「いったいいつ感染かんせんしたのか？」オミクロン株かぶ対策たいさくの難むずかしさ

Jan 18, 2022 21:01 2

Furigana

感染かんせん力りょくが強つよいとされ、急速きゅうそくに拡大かくだいしている変異へんいウイルス「オミクロン株かぶ」。感染かんせんした患者かんじゃの多おおくが持もつ疑問ぎもんがあります。

「いつ感染かんせんしたんだろう？」

オミクロン株かぶに感染かんせんした40代だいの女性じょせいの話はなしからは、オミクロン株かぶの特性とくせいと対策たいさくの難むずかしさが見みえてきました。

出発しゅっぱつ前まえのPCR検査けんさは2回かいとも陰性いんせいだったが

オミクロン株かぶに感染かんせんしたのは、ふだんはケニアで働はたらいていて、休暇きゅうかを利用りようして去年きょねん12月つき19日にちに一時いちじ帰国きこくした、40代だいの会社かいしゃ員いんの女性じょせいです。

ケニアのナイロビからドバイを経由けいゆし日本にっぽんに向むかいましたが、ケニアを出発しゅっぱつする48時間じかん前まえと6時間じかん前まえの2回かい、PCR検査けんさを受うけ、いずれも陰性いんせいでした。

ところが、ケニアを出発しゅっぱつしておよそ20時間じかん後ご、成田なりた空港くうこうの検疫けんえきでの検査けんさで、一転いってん、新型しんがたコロナウイルスへの感染かんせんが確認かくにんされたといいます。

女性じょせいは「日本にっぽんに帰国きこくする数すう週間しゅうかん前まえから感染かんせんしないようにと、仕事しごとでも私生活しせいかつでも特とくに慎重しんちょうに対策たいさくをとっていました。自覚じかく症状しょうじょうもなかったので、結果けっかに驚おどろきましたし、ショックでした」と話はなします。

38度どの熱ねつとせき熱ねつ下さがった後のちものどに痛いたみ

感染かんせんが確認かくにんされたことを受うけて、療養りょうよう用ようの空港くうこう近ちかくのホテルに滞在たいざいしましたが、夜よるになると徐々じょじょにのどの痛いたみを感かんじるようになり、その翌朝よくあさ、38度どの熱ねつとせきの症状しょうじょうが出でました。

解熱剤げねつざいを服用ふくようし、1日にちほどで熱ねつは下さがったものの、のどの痛いたみとせき、鼻水はなみずが続つづきました。

ホテル療養りょうようから4日にち目め、解析かいせきの結果けっか、オミクロン株かぶの疑うたがいが強つよいことがわかり、全員ぜんいん入院にゅういんという国くにの当初とうしょの方針ほうしんに沿そって、入院にゅういんしました。

女性じょせいは「入院にゅういんするころには、のどの痛いたみや鼻水はなみずなどは少すこしずつ和やわらいできていて、CT検査けんさの結果けっか、肺はいの炎症えんしょうも見みつからず、軽症けいしょうという診断しんだんで、ほっとしました」と振り返ふりかえります。

その後そのご、順調じゅんちょうに回復かいふくし、1月つき4日にちに退院たいいんしました。

「いつ感染かんせんしたのか？」

女性じょせいには疑問ぎもんが残のこっています。

出発しゅっぱつ前まえ2回かいの検査けんさでは陰性いんせいだったのに「いつ感染かんせんしたのか？」ということです。

「南アフリカみなみあふりかでオミクロン株かぶが見みつかり、ケニアは出発しゅっぱつの数すう日にち前まえから感染かんせんが広ひろがっていました。そのため現地げんちでは、会食かいしょくはもちろん、対面たいめんでミーティングすることもありませんでした。常つねにマスクを着用ちゃくようしていましたし、人ひとと長ながく話はなすこともなく、感染かんせんのタイミングは思い当おもいあたりません。そもそもPCR検査けんさの結果けっかが正ただしかったのかということもありますが、心当こころあたりがあるとすれば、PCR検査けんさの会場かいじょうやケニアからドバイまでの機内きないが混雑こんざつしていたことでしょうか。オミクロン株かぶの感染かんせん力りょくの強つよさを感かんじました」

医師いし「心当こころあたりがないという患者かんじゃは少すくなくない」

女性じょせいの主治医しゅじいで国際こくさい医療いりょう福祉ふくし大学だいがく成田なりた病院びょういんの津島つしま健司けんじ副ふく院長いんちょうは、今回こんかいの感染かんせんについて、検査けんさの精度せいどの問題もんだいや機内きないでの混雑こんざつなども考かんがえられるとしながらも、同おなじように心当こころあたりがないという患者かんじゃは少すくなくないといいます。

そのうえで、感染かんせんの広ひろがりやすさにはオミクロン株かぶの特性とくせいがあると話はなします。

国際こくさい医療いりょう福祉ふくし大学だいがく成田なりた病院びょういん津島つしま健司けんじ副ふく院長いんちょう

「デルタ株かぶでは、肺はいや肺はいの近ちかくの場所ばしょ、いわゆる『下しも気道きどう』で炎症えんしょうが起おき、息苦いきぐるしさを訴うったえる患者かんじゃが多おおかったのに対にたいし、オミクロン株かぶは、鼻はなやのどなど『上気じょうき道どう』に炎症えんしょうが現あらわれる特徴とくちょうがある。このため、酸素さんそ吸入きゅうにゅう器きが必要ひつようになるような患者かんじゃは今いまのところほぼいないが、せきや鼻水はなみずなどの症状しょうじょうが出でやすく、周囲しゅういにウイルスを飛散ひさんしやすい。軽症けいしょうの人ひとが多おおいが、そうした人ひとが行動こうどうすることで知しらず知しらずのうち感染かんせんを広ひろげるおそれがある」

最近さいきんは中等ちゅうとう症しょうの患者かんじゃも

12月つきからオミクロン株かぶの患者かんじゃを受け入うけいれているこの病院びょういんでは、当初とうしょは軽症けいしょうが多おおかったものの、感染かんせんの拡大かくだいに伴ともない最近さいきん、中等ちゅうとう症しょうの患者かんじゃも見みられるようになったといいます。

病院びょういんでは1月つき13日にちまでに、基礎きそ疾患しっかんを持もつ70代だいの男性だんせいと、ワクチンを未み接種せっしゅだった20代だい男性だんせいの、合あわせて2人にんが酸素さんそ吸入きゅうにゅう器きが必要ひつような中等ちゅうとう症しょうと診断しんだんされました。

津島つしま医師いしは「患者かんじゃの母はは数すうが増ふえれば、一いち定数ていすう悪化あっかする人ひとは出でてきて、それが徐々じょじょに増ふえていく。寝ねたきりや基礎きそ疾患しっかんのある高齢こうれい者しゃなど、リスクの高たかい人ひとの感染かんせんが増加ぞうかすることが懸念けねんされる」と指摘してきします。

感染かんせん力りょくが強つよいといっても「気きをつけることは変かわらず」

では、感染かんせん力りょくの強つよいオミクロンを食い止くいとめるために、私わたしたちはどうしたらいいのか。

津島つしま医師いしは、とにかく基本きほん的てきの対策たいさくを徹底てっていすることだと強調きょうちょうしました。

国際こくさい医療いりょう福祉ふくし大学だいがく成田なりた病院びょういん津島つしま健司けんじ副ふく院長いんちょう

「感染かんせん力りょくが強つよいといっても、気きをつけることはこれまでと変かわりません。マスクの着用ちゃくようと手洗てあらい、食事しょくじは時間じかんを分わけるなど、基本きほん的てきな対策たいさくをしっかりやる。そして、高齢こうれい者しゃの3回かい目めの接種せっしゅも急いそぎ、重症じゅうしょう化かのリスクの高たかい人ひとへの感染かんせんを抑おさえていくことが重要じゅうようだと思おもいます」