日本新聞: 子どもへのワクチン接種とくに保護者が知っておきたいこと

新型しんがたコロナウイルスワクチンの5歳さいから11歳さいの子こどもへの接種せっしゅが20日にちの専門せんもん家か部会ぶかいを経へて承認しょうにんされる見通みとおしとなる中なか、子こどもたち自身じしんがワクチン接種せっしゅについて学まなぶ授業じゅぎょうが行おこなわれました。

子こどもたち自身じしんがワクチン接種せっしゅについて学まなぶ

15歳さい以下いかの子こどもへのワクチン接種せっしゅは親おやの同意どういが必要ひつようですが、子こどもたち自身じしんも主体しゅたい性せいを持もって考かんがえてもらおうと、岡山おかやま大学だいがくと民間みんかん研究所けんきゅうじょなどが共同きょうどうで教材きょうざいを開発かいはつし、今月こんげつ、横浜よこはま市内しないの小学校しょうがっこうで行おこなわれた授業じゅぎょうには9歳さいから11歳さいまでの小学生しょうがくせい7人にんとその保護ほご者しゃが参加さんかしました。

授業じゅぎょうでは、教員きょういんがイラストを交まじえてワクチンの仕組しくみなどを説明せつめいした教材きょうざいを使つかって、接種せっしゅしたい人ひとと、したくない人ひとの考え方かんがえかたの違ちがいなどを伝つたえました。

その上うえでワクチン接種せっしゅのメリットとリスク、それに接種せっしゅした人ひととしていない人ひととの間まで起おきるいじめや差別さべつをテーマに議論ぎろんしました。

教員きょういんが子こどもたちに「『家族かぞくがこう言いうから』でなく『自分じぶんがどう思おもうか』を話はなしましょう」と呼よびかけると子こどもたちからは「接種せっしゅすることで副ふく反応はんのうが出でるのがこわい」といった意見いけんや「家族かぞくに迷惑めいわくをかけたくないから接種せっしゅしたい」という意見いけんが出でていました。

一方いっぽうで「接種せっしゅできない人ひとや、接種せっしゅしたくない人ひともいるから、そういう人ひとが差別さべつされていると感かんじないようにすることが大事だいじだと思おもう」といった意見いけんも出でていました。

参加さんかした11歳さいの女子じょし児童じどうは「ひとぞれぞれ感かんじ方かたや考え方かんがえかたが違ちがうから、接種せっしゅをした人ひともしない人ひとも、いろいろな人ひとの意見いけんを受け入うけいれることが大切たいせつだと思おもいました」と話はなしていました。

10歳さいの児童じどうの父親ちちおやは「子こどももしっかり考かんがえているとわかり、驚おどろきました。大人おとなとして知しっていることは伝つたえ、子こどもがどう感かんじたかも踏ふまえ決きめていくことが大事だいじだと思おもいます」と話はなしていました。

授業じゅぎょうを行おこなった田園でんえん調布ちょうふ雙葉は小学校しょうがっこうの長谷川はせがわ里奈りな講師こうしは「教材きょうざいを活用かつようしてもらい、家族かぞくや学校がっこうで大人おとなと子こどもが一緒いっしょに接種せっしゅについて考かんがえてほしい」と話はなしています。

授業じゅぎょうで使つかわれた教材きょうざいは「知識ちしき流動りゅうどうシステム研究所けんきゅうじょ」のホームページ上じょうで公開こうかいされ、無料むりょうでダウンロードできます。

（URLは、https://www.smips．jp/KMS/）

米べいCDC 12歳さい～18歳さいワクチンが入院にゅういんを防ふせぐ効果こうかは94％

アメリカのCDC＝疾病しっぺい対策たいさくセンターなどの研究けんきゅうグループは今月こんげつ、医学いがく雑誌ざっしの「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に12歳さいから18歳さいまでの世代せだいで、ワクチンが重症じゅうしょう化かを防ふせぐ効果こうかについての調査ちょうさ結果けっかを発表はっぴょうしました。

調査ちょうさでは、アメリカで去年きょねん7月つきから10月つきにかけて新型しんがたコロナウイルスに感染かんせんして入院にゅういんした445人にんと新型しんがたコロナ以外いがいで入院にゅういんした777人にんを比較ひかくしました。

その結果けっか、新型しんがたコロナで入院にゅういんした445人にんのうち96％にあたる427人にんがワクチンを一いち度ども接種せっしゅしていなかったということで、これを元もとに分析ぶんせきするとワクチンが入院にゅういんを防ふせぐ効果こうかは94％になったということです。

さらに、445人にんうち、ICU＝集中しゅうちゅう治療ちりょう室しつで治療ちりょうを受うけた180人にんを調しらべたところ、ワクチンを接種せっしゅ済ずみだったのは2人にんだけで、ワクチンがICUでの治療ちりょうが必要ひつようになるほど悪化あっかするのを防ふせぐ効果こうかは98％になりました。

一方いっぽうで、新型しんがたコロナウイルスでは若わかい世代せだいが感染かんせんした場合ばあい、まれに全身ぜんしんに炎症えんしょうが起おきる小児しょうに多た系統けいとう炎症えんしょう性せい症候しょうこう群ぐん＝「MIS-C」と呼よばれる症状しょうじょうが出でる場合ばあいがあることが知しられています。

これについて同おなじCDCなどの研究けんきゅうグループが今月こんげつ、ワクチンが「MIS-C」を防ふせぐ効果こうかがあるかどうかを調しらべた調査ちょうさ結果けっかを公表こうひょうしています。

調査ちょうさでは去年きょねん7月つきから12月つきにかけて、新型しんがたコロナウイルスに感染かんせんして「MIS-C」になった入院にゅういん患者かんじゃ102人にんを対象たいしょうにワクチン接種せっしゅ率りつを調しらべました。

その結果けっか、「MIS-C」で入院にゅういんした102人にんのうち、97人にんはワクチンを接種せっしゅしていなかったということで、ワクチンが「MIS-C」を防ふせぐ効果こうかを分析ぶんせきすると、91％になったということです。

これらの調査ちょうさを行おこなった研究けんきゅうグループの1人にんでアメリカ・エモリー大学だいがくの紙谷かみたに聡さとし助教授じょきょうじゅは「MIS-Cは、全身ぜんしんに症状しょうじょうが出でて治療ちりょうが大変たいへんな合併症がっぺいしょうだ。子こどもは軽症けいしょうや無む症状しょうじょうが多おおいという側面そくめんばかりがクローズアップされがちだが、重症じゅうしょう化かすることもあれば、重おもい合併症がっぺいしょうが起おきることもある。それらを防ふせぐことができるのであれば、ワクチンを接種せっしゅする意義いぎはある」と話はなしています。

ファイザーなど 5歳さい～11歳さいワクチンが発症はっしょう防ふせぐ効果こうかは90.7％

新型しんがたコロナウイルスのワクチンを5歳さいから11歳さいに対にたいして接種せっしゅした臨床りんしょう試験しけんでは、発症はっしょうを防ふせぐ効果こうかは90.7％で、接種せっしゅ後ごに出でた症状しょうじょうもおおむね軽度けいどから中なか程度ていどで安全あんぜんだとしています。

ファイザーなどの研究けんきゅうグループがまとめた臨床りんしょう試験しけんの結果けっかは、去年きょねん11月つき、国際こくさい的てきな医学いがく雑誌ざっし「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載けいさいされました。

それによりますと、臨床りんしょう試験しけんにはアメリカやフィンランドなど4か国かこくの5歳さいから11歳さいの子こども2200人にん余あまりが参加さんかし、大人おとなのワクチンに含ふくまれる3分ぶんの1の量りょう、10マイクログラムを3週間しゅうかん空あけて2回かい接種せっしゅする1500人にん余あまりと、ワクチンに似にせた物質ぶっしつ、プラセボを投与とうよする750人にんとで効果こうかや安全あんぜん性せいを確認かくにんしました。

その結果けっか、ワクチンを接種せっしゅすることで、中和ちゅうわ抗体こうたいの値ねは16歳さいから25歳さいにワクチンを接種せっしゅしたときと同おなじ水準すいじゅんまで上昇じょうしょうし、2回かいの接種せっしゅを受うけてから7日にち以上いじょうたったあと新型しんがたコロナウイルスに感染かんせんし発症はっしょうした人ひとの数かずは、ワクチンを接種せっしゅした人ひとで3人にんプラセボを投与とうよした人ひとで16人にんで、発症はっしょうを防ふせぐ効果こうかは90.7％だったとしています。

接種せっしゅ後ごには接種せっしゅした部位ぶいの痛いたみや倦怠けんたい感かんなど、症状しょうじょうが出でたケースが報告ほうこくされていますが、ほとんどは1日にちから2日にちほどで収おさまり、軽度けいどから中なか程度ていどだったとしています。

具体ぐたい的てきな症状しょうじょうは、接種せっしゅした部位ぶいの痛いたみが1回かい目めの接種せっしゅ後ごで74％、2回かい目めの接種せっしゅ後ごで71％、けん怠けんたい感かんが1回かい目めで34％、2回かい目めで39％、頭痛ずつうが1回かい目めで22％、2回かい目めで28％、接種せっしゅ部位ぶいの赤あかみが1回かい目めで15％、2回かい目めで19％、接種せっしゅ部位ぶいの腫はれが1回かい目めで10％、2回かい目めで15％、筋肉きんにく痛つうが1回かい目めで9％、2回かい目めで12％、寒気さむけが1回かい目めで5％、2回かい目めで10％、38度ど以上いじょうの発熱はつねつが1回かい目めで3％、2回かい目めで7％などでした。

解熱剤げねつざいを服用ふくようした人ひとは、1回かい目めで14％、2回かい目めで20％だったということです。

また、症例しょうれいが少すくないとしながらも、心筋しんきん炎えんや心こころ膜まく炎えんは確認かくにんされていないとしています。

「ワクチン予防よぼうの手段しゅだん選択肢せんたくしができるのはよいこと」

小児しょうに科か医いでワクチンに詳くわしい北里きたざと大学だいがくの中山なかやま哲夫てつお特とく任にん教授きょうじゅは、5歳さいから11歳さいへの新型しんがたコロナウイルスワクチンの必要ひつよう性せいについて「これまでこの年齢ねんれい層そうには接種せっしゅできるワクチンがなく、無む防備ぼうびの状態じょうたいで社会しゃかいに出でていたので、予防よぼうの手段しゅだん、選択肢せんたくしができるのはよいことだ」と話はなしています。

中山なかやま特とく任にん教授きょうじゅは子こどもたちが接種せっしゅするメリットについて「社会しゃかい全体ぜんたいで感染かんせんが拡大かくだいしていて子こどもたちの間までも感染かんせんが増ふえるのは当然とうぜんだ。塾じゅくや学童がくどう保育ほいく、お稽古けいこ事ごとなど、不ふ特定とくてい多数たすうが密みつに集あつまる場面ばめんでの感染かんせん事例じれいは実際じっさいに起おきている。感染かんせんして隔離かくりされると子こどもにとって大おおきな負担ふたんで、接種せっしゅのメリットはある」と述のべました。

一方いっぽう、子こどもは新型しんがたコロナに感染かんせんしても、重症じゅうしょう化かする子こどもが少すくないことを踏ふまえ、子こどものワクチン接種せっしゅをどう考かんがえるかについては「どの子こが感染かんせんしてどの子こが重症じゅうしょう化かするか、事前じぜんに特定とくていはできず、ワクチンを接種せっしゅして備そなえるのは大切たいせつなことだ。オミクロン株かぶは、上気じょうき道どう、鼻はなやのどで増ふえると言いわれていて、子こどもはたんを出だしにくかったり、気道きどうが小ちいさかったりして、激はげしくせきこんだり呼吸こきゅう困難こんなんになったりすることも考かんがえられる。子こどもにとっての上気じょうき道どうの感染かんせん症しょうは侮あなどってはいけない」と指摘してきしました。

そのうえで「子こどもでも5歳さいから11歳さいだとある程度あるていどワクチンについて理解りかいすることができる。親おやが何なにも言いわずに接種せっしゅ会場かいじょうに連つれて行いくとパニックになる可能かのう性せいもあり、あらかじめ親子おやこでワクチンについて理解りかいして、接種せっしゅすることが大切たいせつだ。ワクチンを受うけることのメリットとデメリット、副ふく反応はんのうをよく考かんがえて、子こどもも親おやも納得なっとくして進すすめなければならない」と述のべました。

「保護ほご者しゃの考かんがえわかりやすく子こどもに伝つたえて」

子こどものワクチン接種せっしゅをめぐる問題もんだいに詳くわしい上智じょうち大学だいがくの川上かわかみ祐美ひろみ非ひ常勤じょうきん講師こうしは「接種せっしゅするかしないかは、保護ほご者しゃの価値かち感かんと責任せきにんで選択せんたくされる場合ばあいが多おおいが、話し合はなしあいができる年齢ねんれいの子こどもとは互たがいに意見いけんを伝つたえ合あったり、保護ほご者しゃが考かんがえたプロセスを、リスクや反対はんたい意見いけんも含ふくめてわかりやすく伝つたえるべきだ」と指摘してきします。

そのうえで「もし副ふく反応はんのうが生しょうじた場合ばあいでも真剣しんけんに考かんがえて受うけた結果けっかだと理解りかいし納得なっとくしていれば、信頼しんらい関係かんけいを壊こわさず親子おやこで一緒いっしょに乗り越のりこえていこうという動機どうきづけにもつながる」と話はなします。

さらに、子こどもと話し合はなしあうことは、接種せっしゅをめぐって子こどもどうしの関係かんけいを悪化あっかさせたり、いじめを起おこしたりしないことにもつながると指摘してきします。

川上かわかみさんは「子こどもにとって友人ゆうじん関係かんけいは大おおきな影響えいきょう力りょくをもつので、接種せっしゅしたか、しないかで他者たしゃを批判ひはんしたり排除はいじょしたりといった分断ぶんだんを生うまないよう、友達ともだちの家庭かていにもそれぞれの考え方かんがえかたがあり、自分じぶんの家いえと異ことなる選択せんたくも相互そうごに尊重そんちょうすることを伝つたえていくことが重要じゅうようだ」と話はなしています。