祈いのり 救済きゅうさい 継承けいしょう 広島ひろしま「原爆げんばくの日ひ」それぞれの思おもい

記念きねん式典しきてんには例年れいねん、およそ1万まんの参列さんれつ者しゃ席せきが設もうけられますが、ことしも一般いっぱんの参列さんれつ者しゃ席せきをなくし、被爆ひばく者しゃや遺族いぞくなどに優先ゆうせん的てきに確保かくほした880席せきまで減へらしました。

平和へいわ公園こうえんを訪おとずれた男性だんせいは「入場にゅうじょうが制限せいげんされているとは知しらなかった。多おおくの人ひとが犠牲ぎせいとなって今いまの暮くらしがあることを思おもいながら慰霊いれい碑ひで祈いのりたい」と話はなしていました。

裁判さいばんで原告げんこく団長だんちょうを務つとめた高野たかの正明まさあきさんは式典しきてんに参列さんれつしたあと、「黒くろい雨あめを浴あびて亡なくなった人ひとがたくさんいる。命いのちあるかぎり実相じっそうを伝つたえていきたい」と話はなしていました。

また、原告げんこくの高こう東征とうせい二にさんは「手帳てちょうを取得しゅとくできたという意味いみで去年きょねんとは違ちがう式典しきてんだった」としたうえで、式典しきてん前まえに菅かん総理そうり大臣だいじんとことばを交かわし、まだ手帳てちょうの交付こうふを受うけていない人ひとに対にたいして速すみやかに手続てつづきを進すすめてほしいと要望ようぼうしたことを明あきらかにしました。

広島ひろしま市し佐伯さいき区くに住すむ小川おがわ泰子やすこさんは、原爆げんばくが投下とうかされた午前ごぜん8時じ15分ふん、自宅じたくで静しずかに手てを合あわせ祈いのりをささげました。

小川おがわさんは4歳さいの時ときに爆心ばくしん地ちから9キロほど離はなれた旧きゅう八幡やはた村むらで黒くろい雨あめを浴あびたあと、足あしなどに腫瘍しゅようができ全身ぜんしんのけん怠けんたい感かんが続つづいたといいます。

肝硬変かんこうへんなどを患わずらっていますが、小川おがわさんが住すんでいる地域ちいきは被爆ひばく者しゃ健康けんこう手帳てちょうが交付こうふされる被爆ひばく地域ちいきではなく、黒くろい雨あめが激はげしく降おり被爆ひばく者しゃに準じゅんじた支援しえんが受うけられる区域くいきにも指定していされていません。

小川おがわさんは20年ねんほど前まえから、黒くろい雨あめが降ふった区域くいきの拡大かくだいを求もとめてきましたが、体調たいちょうが悪化あっかしたため今回こんかいの裁判さいばんには参加さんかしませんでした。

そして、国くにが、裁判さいばんに参加さんかしていない人ひとについても救済きゅうさいを早急そうきゅうに検討けんとうを進すすめるとしていることについて「これまでずっと認みとめられてこなかったので手帳てちょうを手てにするまでは信しんじられない。私わたしももう長ながく生いきられないので早はやく救済きゅうさいしてほしい」と話はなしていました。

福山ふくやま市しによりますと、ことし3月末げつまつ時点じてんで被爆ひばく者しゃ健康けんこう手帳てちょうを持もつ市内しないの被爆ひばく者しゃは809人にんで、5年間ねんかんで400人にん余あまり減へり、被爆ひばく者しゃの高齢こうれい化かが進すすんでいるということです。

被爆ひばく者しゃの96歳さいの男性だんせいは「つえがないと歩行ほこうが困難こんなんだが、体からだは丈夫じょうぶなので、歩あるけるかぎりは慰霊いれい式しきに参列さんれつし続つづけたい」と話はなしていました。

父親ちちおやが被爆ひばくした「福山ふくやま市し原爆げんばく被害ひがい者しゃ友の会とものかい」の藤井ふじい悟さとる会長かいちょう（74）は「被爆ひばく者しゃが少すくなくなっている中なか、今後こんごは式典しきてんの中なかで被爆ひばく者しゃに体験たいけんを語かたってもらうなどして戦争せんそうを風化ふうかさせないようにしていきたい」と話はなしていました。

被爆ひばく3世せいの富永とみなが幸みゆき葵あおいさん（24）は、平和へいわ記念きねん式典しきてんが開ひらかれている平和へいわ公園こうえんの様子ようすを多おおくの人ひとに知しってもらおうと、SNSで発信はっしんしました。

富永とみながさんの祖母そぼ、岡田おかだ恵美子えみこさんは8歳さいで被爆ひばくし、ことし4月つきに亡なくなるまで核兵器かくへいきの廃絶はいぜつを訴うったえ続つづけてきました。

祖母そぼを亡なくしてから初はじめてとなる原爆げんばくの日ひ、富永とみながさんは、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで閉鎖へいさされた平和へいわ記念きねん式典しきてんの会場かいじょうから少すこし離はなれた場所ばしょで、式典しきてんを見守みまもりました。

ダンサーとして活動かつどうする富永とみながさんは「おばあちゃんがいない中なかで8月つき6日にちを迎むかえて、自分じぶんなりに動うごいてみたいと思おもいました。これからも自分じぶんにできる方法ほうほうで、SNSやダンスを通をとおして、原爆げんばくや平和へいわのことが同どう世代せだいに伝つたわるように活動かつどうしていきたい」と話はなしていました。

続つづいて、被爆ひばく者しゃに代かわって被爆ひばくの体験たいけんを語り継かたりつぐ活動かつどうをしているこの学校がっこうの教員きょういんだった中本なかもと実みのる鈴すずさんが、飛行機ひこうきの爆音ばくおんが聞きこえ空そらを見上みあげると太陽たいようが爆発ばくはつしたかのような強烈きょうれつな光ひかりが広ひろがりすさまじい熱あつさが襲おそってきたことや、ひどいやけどで何なん日にちも意識いしきを失うしない苦くるしんだことなど、被爆ひばく者しゃの体験たいけんを紙芝居かみしばいで語かたると、児童じどうたちは真剣しんけんな表情ひょうじょうで聞き入ききいっていました。

広島ひろしま市しによりますと、市内しないの公立こうりつ小学校しょうがっこうの9割わり以上いじょうが原爆げんばくの日ひを登校とうこう日びにしていて、子こどもたちに原爆げんばくの被害ひがいや平和へいわについて考かんがえる特別とくべつ授業じゅぎょうを行おこなっているということです。