アフガニスタンで
これまで
治安を
担ってきた
アメリカ軍が
撤退を
進める中、それまで
地方などの
周辺部で
勢力を
伸ばしていた
武装勢力タリバンが、
その隙をついて
州都の
制圧に
乗り出しました。
当初は政府軍との大規模な衝突のおそれがありましたが、タリバンの部隊を前に政府軍の兵士は戦わずに撤収し、州都に入ると政府の建物はもぬけの殻で、多くで「無血開城」となりました。
タリバンは制圧した基地で車や武器を調達し、刑務所を解放して収監者を味方につけて攻勢を強め、全土のほぼすべてを制圧しました。
そして8月15日、首都カブールに進攻し、ガニ大統領は国外に脱出して、政権が崩壊したのです。
Q2 アフガニスタンとはどんな国なんですか?
アフガニスタンは、イランやパキスタン、
中国などと
国境を
接し、パシュトゥン
人やタジク
人、ウズベク
人などから
なる多民族国家です。
日本の
およそ1.7
倍の
広さに、およそ3890
万人が
暮らしています。
タリバンは、1996年に首都カブールを制圧して政権を樹立します。
その後、タリバン
政権は、2001
年のアメリカ
同時多発テロ
事件の
首謀者で
国際テロ
組織アルカイダのオサマ・ビンラディン
容疑者をかくまったとして、アメリカ
軍などが
軍事作戦に
踏み切り、
崩壊しました。
日本を
含めた
国際社会は、
新たな
国づくりと
復興を
支援してきました。
当時のタリバンは、イスラム教を極端に厳しく解釈した政策をとり、女性の就労や教育を禁止したほか「偶像崇拝はイスラム教の教えに反する」として、世界的な仏教遺跡であるバーミヤンの大仏を爆破し、国際的な批判を浴びました。
Q3 アフガニスタンと日本との関わりは?
日本は、アフガニスタンを
支援してきた
主要な
国の
一つです。
外務省によりますと日本政府は2001年以降、アフガニスタンへの復興支援として治安や農業、インフラ整備、それに保健・教育などを重点分野におよそ7000億円を拠出しています。
資金額ではアメリカやイギリス、ドイツとともに主要な支援国の一つです。
また、おととし(2019年)現地で銃撃され死亡した日本人の医師、中村哲さんも、アフガニスタンで長年、干ばつで苦しむ人たちを助けようと、用水路の整備など、農地の再生にも取り組んできました。
Q4 なぜ政権はこんなにも早くに崩壊したのですか。
もともとアフガニスタンは
民族や
部族ごとのまとまりが
強い国家です。
ガニ大統領はアメリカ寄りで、アメリカ軍が撤退したあとは後ろ盾をなくすことになり、タリバンの攻勢に、地方の州政府の幹部たちはタリバンと政権をてんびんにかけ、政権を離れていったと言われています。
また、専門家は、アフガニスタン政府のもろさについて指摘しています。
アフガニスタン情勢に詳しい東京外国語大学の登利谷正人講師は、「崩壊した政権は反タリバンの軍閥が寄り集まる形で成立したもので、汚職や腐敗がはびこり、多額の援助が入っても一部の人たちが独占するような状態というのが続いていた。さらに内部の権力闘争も続いていた」として、政権が深刻な機能不全に陥っていたと指摘しています。
国民の
間には、
自分たちの
暮らしが
向上しない
一方で、
一握りの
人が
利権を
持ち、
政治を
思うままにしていることや、
その政府を
外国が
支援していることも
輪をかけて、
政府から
人心が
離れた
状態が
続いていたということです。
Q5 政府軍はなぜタリバンを止められなかったのでしょうか?
アフガニスタン
政府軍はアメリカ軍との
共同作戦や
支援によって、タリバンを
抑え込むことができていましたが、アメリカ
軍が
撤退した
場所では、
単独では
守ることができず、さらに
汚職などが
軍など
治安部隊にも
広がり、
士気が
低下していたとみられます。
アフガニスタンの復興状況を調べるアメリカ政府の監察官の報告書は、アメリカなどが拠出した治安部隊の給与について、軍と警察の関係者が人数を水増しして報告することによって、浮いた資金を横領してきた疑いを指摘しています。
こうした架空の兵士は「ゴーストソルジャー=幽霊兵士」と呼ばれていて、アメリカの有力紙、ワシントン・ポストは、35万人余りいるとされた治安部隊について、実際は25万人余りしか確認できなかったとしています。
Q6 新たな政権づくりに向けた動きはどうなっていますか?
タリバンは、
政権樹立に
向けた
活動を
活発化させています。
タリバンの幹部がカブールに集まり、カルザイ元大統領や、崩壊したガニ政権で和平プロセスを主導してきたアブドラ議長などと接触し、今後の新政権への関わり方などについて話し合われているものとみられます。
新政権はタリバンが主導することは確実とみられていて、今後、タリバンがこれまで対立してきた勢力も招き入れるのかが、アフガニスタン情勢が安定に向かうのかを左右しそうです。
Q7 女性の権利について、タリバンはどう考えている?
タリバンは
旧政権時代、
イスラム教を
極端に
解釈し、
女性にブルカと
呼ばれる、
全身をすっぽりと
隠すベールの
着用を
求め、
女性の
就労や
教育を
禁止する
などして
国際的な
批判を
浴びました。
アメリカ国務省は、アフガニスタンの女性の患者は多くの病院でも診察で服を脱ぐことができずに、症状が見逃され死亡率の上昇につながったという指摘もしています。
今回、タリバンは異例の記者会見を開き、その中で女性の就労や教育などの権利を守ると明言しました。
しかし、「イスラムの教えの範囲内で」という条件付きでした。
Q8 タリバンは変わったのでしょうか?
その会見で
記者からの「
これまでのタリバンと
今のタリバンの
違いは
あるのか」という
質問に、「
イスラム教という
信条は
変わらないが、われわれには
この間に
経験を
積んできた」と
答え、
柔軟な
姿勢をアピールしました。
しかし、それだけでタリバンが変わったと判断するにはまだ早すぎます。
たとえば、女性の就学などについて、タリバンは“イスラムの教えの範囲内で”としています。
これについて
中東調査会の
研究員、
青木健太さんは「イスラム
法の
解釈は
それ自体で
専門的な
学問領域が
あるほど
複雑で、
解釈によって
実際の
政策は
かなり異なる。
会見での
発言内容が
そのまま守られる
保証はなく、あくまでもタリバンが
裁量権をもっているということを
示したものだ」として、タリバンがイスラム
法に
基づいた
解釈で
あると
主張して
権利を
制限する
余地を
残していると
指摘しています。
また、
国連アフガニスタン
支援団で、アフガニスタン
政府とタリバンの
和平交渉を
支援した
上智大学の
東大作教授は「タリバンは
これまで
次に政権を
取れば
女性の
就労などを
認めると
言い
続けてきた。タリバン
主導で
樹立される
新しい政権で、
少数派や
女性などが
政府の
要人に
入るのかが
大きな焦点に
なる」と
指摘しています。
Q9 国際社会はどう出るのでしょうか?
タリバンが
軸となる
新たな
政権を
国際社会が
認めるのかが
ポイントになります。
アメリカやイギリスなどは、タリバンの行動を見極めながら慎重に判断していく構えです。
G7=主要7か国の外相は、19日に緊急の会合をオンラインで開き、暴力の停止や女性や子どもの人権を守るために関与を続けるとし、タリバンにアフガニスタンをテロリストの温床にさせないよう求めました。
G7は、来週、オンラインで首脳会合を開く予定で、タリバンに対してどのようなメッセージを打ち出すのか注目されます。
Q10 日本はどうアフガニスタンと向き合うべきでしょうか?
専門家は、
日本は、
必要に
応じて
対話を
通じたタリバンへの
働きかけも
選択肢の
一つとして
検討すべきだと
指摘します。
上智大学の東大作教授は「女性の権利をどこまできちんと保障するのか、また過激派グループと関係を絶つのかを見極めながら、支援継続の判断をすることになるだろう。粘り強く、少しでも国際的に受け入れられるような政府になってもらうように、対話を続ける姿勢が必要だ」と話しています。
再びアフガニスタンの政権の座につこうとするタリバン。
女性の人権だけでなく、国際社会の介入のきっかけとなったテロリストの温床に逆戻りしないかも懸念されています。
政権崩壊の混乱の中で、自分たちの暮らしがどうなるのか不安と緊張を強いられているアフガニスタンの人たちを守るためにも、国際社会の関与が引き続き求められています。
米FRB 利下げを見送り 政策金利の据え置き決定 5会合連続
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