西山女流三冠は大阪府大阪狭山市出身で2010年に「奨励会」に入り、三段まで昇段しましたが、プロ棋士となる四段には昇段できず、4年前に退会して女流棋士に転向。
その後は女流タイトルを通算18期獲得するトップ女流棋士のひとりとして活躍しています。
プロ棋士との対局で好成績を残したことなどから、去年、編入試験の受験資格を獲得しました。
編入試験は若手の四段棋士との五番勝負で、3勝すれば合格ですが、西山女流三冠はここまで2勝2敗で合格に王手をかけています。
最終局の第5局は22日に大阪府高槻市の関西将棋会館で行われ、柵木幹太四段(26)に挑みます。
対局に勝って試験に合格した場合、日本将棋連盟の歴史で初めて女性のプロ棋士が誕生することになります。
対局は22日午前10時から始まります。
“ライバル” 出口若武六段「悔いの残らぬよう」
西山女流三冠と同い年の出口若武六段(29)は小学生のころに通っていた大阪の将棋道場で、西山さんと何度も対局したと言います。
西山女流三冠のことは互いに実力が近かったため、ライバルだと思っていた出口六段。
当時は、道場で会うたびに対局を挑まれ、白熱してけんかのようになることもあったということです。
出口六段は「あのころはお互い子どもで、自分の考えが一番だと思っていたので、手を変えないんです。だから対局はほとんど同じ局面になりました。西山さんは私に腹が立ったようで、目の敵のように見てきていつかやっつけてやる、みたいな感じでした」と当時を振り返りました。
その上で「感想戦が白熱してくると、足で相手のイスを蹴っ飛ばしたこともあり、西山さんは当時の自分を『あのころはやばかった』と振り返っていました。そういう強気が今でも盤上でかいま見えるので西山さんの将棋だなと感じています」と話しました。
そして、「気楽に頑張ってほしいですし、友達として応援してます。西山さんにとって大きな一番ですし、対局相手の柵木幹太四段にとっても大きな一番で、2人にとって悔いの残らない、そして互いに頑張った果てに見える将棋を見てみたいです」と述べエールを送りました。
日本将棋連盟 森下卓常務理事「自分の将棋を思いきり指して」
日本将棋連盟の常務理事を務める森下卓九段(58)は女性のプロ棋士がいない背景にプロを目指す女性が少ないことがあるとしたうえで、「プロ棋士育成機関の『奨励会』には、いま200人くらいが在籍しているが、そのうち女性は1人しかいない。奨励会からプロになること自体が極めて狭き門なので、女性が常に20人ほど在籍し、連帯して取り組める環境が望ましい」と指摘しました。
その上で、「藤井聡太七冠の登場によって将棋に興味を持つ人が増える中、西山さんという大スターが現れた。何十年と立ちはだかってきた壁を打ち破り、女性のプロ棋士が誕生すれば、興味を持つ女性は増えると思う」と語りました。
また、西山女流三冠の実力については「勝ち上がればプロになれる奨励会の三段リーグで好成績を挙げ、公式戦でもたくさん勝っている。ここまでの実力があることから『試験はいらないだろう』という見方が出ても全然おかしくないくらいで、プロの棋士にさえなれば十二分に活躍できると思う」と評しました。
一方、編入試験五番勝負のこれまでの対局については、「本来の“西山流”の豪快にドーンという思い切りのよさ、切れ味が2局目、3局目は鳴りを潜め、野球でいうと凡退という感じで負けてしまった。しかし、4局目ではすっかり立ち直り、見事に勝ちきったのは非常に価値が高い」と振り返りました。
プロ編入がかかる第5局の対局相手は、西山女流三冠が奨励会時代の三段リーグで1度も勝てていない柵木幹太四段です。
森下九段はこの対局について、「西山さんもきついだろうが、柵木さんもきつい勝負で、2人とも自分の将棋を思いきり指してもらいたい。コンディションを整えて、三振を恐れず思い切り振る、“西山流”を貫いてほしい」と期待を寄せていました。