日本新聞: ワクチン打つと不妊？流産？専門家「誤情報に惑わされないで」

新型しんがたコロナウイルスのワクチン接種せっしゅが進すすめられる中なか、「ワクチンを打うつと不妊ふにんになる」「妊娠にんしん中ちゅうにワクチンを打うつと流産りゅうざんする」などといった、根拠こんきょのない情報じょうほうがSNSなどで拡散かくさんされています。厚生こうせい労働ろうどう省しょうなども否定ひていしていて、専門せんもん家かは「情報じょうほうの出所しゅっしょを確認かくにんして、誤あやまった情報じょうほうに惑まどわされないでほしい」と呼よびかけています。

“ワクチンで流産りゅうざん” 厚あつ労ろう省しょうが否定ひてい

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは2021年ねん6月つき、新型しんがたコロナウイルスのワクチンに関にかんする情報じょうほうをまとめたウェブサイトに、「ご注意ちゅういください」として誤あやまった情報じょうほうへの注意ちゅういを促うながすメッセージを掲載けいさいしました。

この中なかでは「ワクチン接種せっしゅが原因げんいんで何なんらかの病気びょうきによる死亡しぼう者しゃが増ふえるという知見ちけんは得えられていません」「接種せっしゅを受うけた方ほうに流産りゅうざんは増ふえていません」としていて、厚生こうせい労働ろうどう省しょうはSNS上じょうでデマを含ふくむ誤あやまった情報じょうほうが広ひろがっていることを受うけて文書ぶんしょを掲載けいさいしたと説明せつめいしています。

ワクチン接種せっしゅ、妊婦にんぷへの影響えいきょうは？

妊婦にんぷに対にたいするワクチン接種せっしゅの影響えいきょうについては、アメリカのCDC＝疾病しっぺい対策たいさくセンターのグループが、2020年ねん12月つきから2021年ねん2月つきまでにファイザーかモデルナのワクチン接種せっしゅを受うけた16歳さいから54歳さいまでの妊婦にんぷ、3万まん5691人にんで影響えいきょうを調しらべた初期しょき段階だんかいの研究けんきゅう結果けっかを論文ろんぶんに発表はっぴょうしています。

それによりますと、流産りゅうざんや死産しざんになった割合わりあいや生うまれた赤あかちゃんが早産そうざんや低てい体重たいじゅうだった割合わりあいは、ワクチン接種せっしゅを受うけた妊婦にんぷと新型しんがたコロナウイルスが感染かんせん拡大かくだいする以前いぜんの出産しゅっさんで報告ほうこくされていた割合わりあいと差さがありませんでした。

また、ワクチンを接種せっしゅした妊婦にんぷで生うまれたばかりの赤あかちゃんの死亡しぼうは報告ほうこくされていないとしています。

一方いっぽうで、妊娠にんしんしている女性じょせいが新型しんがたコロナウイルスに感染かんせんすると同どう世代せだいの女性じょせいよりも重症じゅうしょう化かする割合わりあいが高たかいことが報告ほうこくされていて、日本にっぽん産科さんか婦人ふじん科か学会がっかいなどは、2021年ねん6月つき、▼ワクチン接種せっしゅによって母親ははおやや赤あかちゃんに何なんらかの重おも篤あつな合併症がっぺいしょうが発生はっせいしたとする報告ほうこくはなく、▼希望きぼうする妊婦にんぷはワクチンを接種せっしゅすることができるとしたうえで、「ワクチン接種せっしゅするメリットが、デメリットを上回うわまわると考かんがえられている」などとする声明せいめいを出だしています。

“ワクチンで不妊ふにん”も否定ひてい

また「ワクチンを接種せっしゅすると妊娠にんしんできなくなる」という情報じょうほうも出回でまわっていて、新型しんがたコロナウイルスワクチンの効果こうかや副ふく反応はんのうなどについて最新さいしん情報じょうほうを提供ていきょうするウェブサイト「CoV－Navi」を運営うんえいしている木下きのした喬たかし弘ひろ医師いしは、根拠こんきょがなく、誤あやまった情報じょうほうだと指摘してきしています。

木下きのした医師いしによりますと「胎盤たいばんの形成けいせいに関かかわるたんぱく質たんぱくしつは、新型しんがたコロナウイルスの表面ひょうめんのたんぱく質たんぱくしつと形かたちが似にていて、ワクチンで作つくられた抗体こうたいによって攻撃こうげきされる」という誤あやまった情報じょうほうがSNSで広ひろまったのが元もとになっているということで、アメリカの新型しんがたコロナウイルスの研究けんきゅう者しゃが検証けんしょうしたところ、胎盤たいばんの形成けいせいに関かかわるたんぱく質たんぱくしつと新型しんがたコロナウイルスのたんぱく質たんぱくしつは形かたちがほとんど似にていなかったということです。

木下きのした医師いしは「抗体こうたいは胎盤たいばんの形成けいせいに関かかわるたんぱく質たんぱくしつを攻撃こうげきしないことがわかっている。自分じぶんだけでなく将来しょうらいの子こどもへの影響えいきょうを心配しんぱいする気持きもちは非常ひじょうによく分わかるが、正ただしい情報じょうほうを集あつめてもらいたい」と話はなしています。

精子せいしの減少げんしょうも見みられず

さらに、ワクチンを接種せっしゅした後のちで男性だんせいの精子せいしの量りょうにも変化へんかはなかったとする研究けんきゅうも出だされています。

アメリカのマイアミ大学だいがくが行おこなった研究けんきゅうの論文ろんぶんによりますと、25歳さいから31歳さいの成人せいじん男性だんせい45人にんについて、ファイザーのワクチンを接種せっしゅする前まえと2回かい目めの接種せっしゅを受うけてから2か月かげつ以上いじょうたったあとで精子せいしの量りょうや濃度のうど、運動うんどう量りょうを比較ひかくしたところ、有意ゆういな減少げんしょうは見みられなかったとしています。

誤あやまった情報じょうほうでの判断はんだん避さけて

根拠こんきょのない情報じょうほうがSNSなどで広ひろがっていることについて、木下きのした医師いしは「あらゆるワクチンが開発かいはつされるたびに、『接種せっしゅすると不妊ふにんになる』といった誤あやまった情報じょうほうが世界せかい各国かっこくで流ながされてきた。ワクチンの成分せいぶんと妊娠にんしんのメカニズムは結むすびつかない。誤あやまった情報じょうほうをもとに接種せっしゅしない判断はんだんをすると、接種せっしゅ率りつが下さがって感染かんせんがおさまりにくくなるだけでなく、本人ほんにんや周まわりの人ひとが感染かんせんして健康けんこうを害がいしてしまうこともある。人ひとの命いのちが奪うばわれることもあるので、厚生こうせい労働ろうどう省しょうなどが出だしている情報じょうほうを確認かくにんして判断はんだんしてほしい」と話はなしています。