会場には段ボールが敷き詰められていて、空き缶やチラシなど身近な物を使った作品が所狭しと並びます。
壁や天井には、半紙や段ボールに独特なメッセージがつづられていています。 「野垂れ死に」 「くよくよするな男じゃないか」 「苦しんだぶん底抜けに明るいおっちゃん」
ビールの空き缶で作られたからくり人形です。
作者は仲間から「からくり博士」と呼ばれる武さん(75)です。
1日6本は飲んでいて、いつも部屋には空き缶が山積みになっていました。 そんなある日、これを使って作品を作ればお金になるのではないかと思いつきます。週の半分は図書館に通い詰めて、作り方を勉強しました。 「小さい通天閣を持って行ったらほめてもろたわけや。これはすばらしい。人間ほめられたら頭なでてもろたら、なんぼ年いってもうれしいもんや」
「人前で暗い顔してたらあかん。周り暗くするがな。常に俺は笑顔や。心は泣いてんねんで。幸せのラインなんか決まってないねん。自分が決めるねん。自分が幸せじゃないのに、人を幸せにできひん」 いつしか作品は、お金のためではなく自分のために作るようになりました。 作品を見た人たちの反応が、今のやりがいにつながっています。
西成区のあいりん地区の商店街の一角で、ゲストハウスとカフェを営んでいます。
ここにつどうおっちゃんたちと一緒にオペラを開催したり、合唱を披露したり。街全体を舞台にアート活動に取り組んでいます。
慶次郎さん(67)です。
いろんな場所を転々とする中で、上田さんから言われた言葉が今も忘れられません。 「放浪の旅に出るわと言ったら、ふっと振り返って『あんたには帰るところがあるんやで!』って大きい声で怒られて。それは幸せさ。怒ってくれる人なんて、絶対おらんもん」 何かできることはないか。 慶次郎さんが欠かさず行っているのがトイレ掃除です。
慶次郎さんにとっては自分を見つめ直す時間。 掃除終わりに、入れてもらうコーヒーを飲むのが何よりの楽しみだと言います。 みんなで詩を作る時間。慶次郎さんが詠んだのは…
慶次郎さんの詩には、ありのままの気持ちがつづられています。
ビールの空き缶や、チラシや、画用紙がこんなにおもしろい作品になるんだと驚くとともに「私には作られへん、真似できひんな」って感動しました。 作品を作ったおっちゃんたちは個性的で楽しい方たちでしたが、これまでに苦労したことなども話してくれました。 でも、そんな経験もアートに変えていたんです。 そして何よりも、おっちゃんたちの口から語られる「幸せ」という言葉にとても重みを感じた取材でした。 おっちゃんたちの作品は2月13日まで、大阪市の船場エクセルビルで開かれている「Study:大阪関西国際芸術祭2023」で見ることができます。
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「幸せのラインなんか決まってないねん」
「ここには芸術の源泉みたいなものが」
小さなこと積み重ねたら大きな幸せに
取材して感じた「幸せ」の言葉の重み
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それが子どもにも人気のアート作品に生まれ変わりました。
作者はこれまで芸術とは無縁に過ごしてきた大阪・西成区のおっちゃん。
作った理由をたずねると、意外な答えが返ってきました。
(大阪放送局 しあわせニュース取材班 高野祐美)
段ボールが敷き詰められた空間で…