“不正ふせい輸出ゆしゅつ”えん罪えんざい事件じけんめぐる民事みんじ裁判さいばん 2審しん始はじまる 東京とうきょう高裁こうさい

横浜よこはま市しの化学かがく機械きかいメーカー「大川原おおかわら化工かこう機き」の社長しゃちょうなど幹部かんぶ3人にんは4年ねん前まえ、軍事ぐんじ転用てんようが可能かのうな機械きかいを中国ちゅうごくなどに不正ふせいに輸出ゆしゅつした疑うたがいで逮捕たいほ、起訴きそされましたが、そのあと、起訴きそが取り消とりけされる異例いれいの措置そちが取とられました。

社長しゃちょうらが国くにと東京とうきょう都とを訴うったえた裁判さいばんで、1審しんの東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょは捜査そうさの違法いほう性せいを認みとめて国くにと都とに合あわせて1億おく6200万まん円えん余あまりの賠償ばいしょうを命めいじましたが、事件じけんについて「ねつ造ねつぞう」と話はなした現役げんえき捜査そうさ員いんの証言しょうげんには触ふれず、双方そうほうが控訴こうそしました。

5日にち、東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょで始はじまった2審しんで、メーカー側がわは「警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶが証拠しょうこをねつ造ねつぞうし、検察官けんさつかんが追加ついか捜査そうさを行おこなわずに起訴きそした」と主張しゅちょうし、新あらたな証拠しょうことして警察けいさつが捜査そうさの中なかで機械きかいに関にかんする実験じっけん結果けっかの一部いちぶを削除さくじょしたとする内部ないぶメモなどを提出ていしゅつしました。

一方いっぽう、捜査そうさ機関きかん側がわは「起訴きそ取り消とりけしになったことは真摯しんし（しんし）に受け止うけとめているが、違法いほうな捜査そうさや取り調とりしらべは行おこなっていない」などと主張しゅちょうし、その証明しょうめいのために関係かんけいする警察官けいさつかん9人にんの証人しょうにん尋問じんもんを求もとめました。

裁判所さいばんしょはメーカー側がわの請求せいきゅうも含ふくめて合あわせて11人にんの証人しょうにん尋問じんもんをするかどうか、来月らいげつ以降いこうに判断はんだんすることにしました。

1審しんで認みとめられた捜査そうさの違法いほう性せいなどについて、2審しんがどのように判断はんだんするか注目ちゅうもくされます。

双方そうほうの主張しゅちょう 新しん証拠しょうこは

2審しんでのポイントになる主張しゅちょうをまとめました。

【警察けいさつの実験じっけん結果けっか、測定そくてい場所ばしょが3か所かしょ→2か所かしょに】

メーカー側がわが新あらたな証拠しょうことして提出ていしゅつしたのが、警察けいさつが行おこなった実験じっけん結果けっかを示しめすメモです。

当時とうじ警察けいさつは輸出ゆしゅつ規制きせいの対象たいしょうかどうか調しらべるため、大川原おおかわら化工かこう機きの製品せいひんの温度おんどがどこまで上あがるかを確たしかめる実験じっけんを行おこない、その結果けっかを規制きせいを担当たんとうする経済けいざい産業さんぎょう省しょうに示しめしていました。

高たかい温度おんどが維持いじされれば殺菌さっきん能力のうりょくが高たかく、規制きせい対象たいしょうになると考かんがえられていたと言いいます。

経済けいざい産業さんぎょう省しょうに示しめされていた報告ほうこく書しょには製品せいひん内ないの2か所かしょの温度おんど変化へんかがグラフで示しめされ、いずれも100度ど以上いじょうが4時間じかん以上いじょう続つづいたとされました。

しかし新しん証拠しょうこのメモにはもう1か所かしょの測定そくてい結果けっかも示しめされ、その場所ばしょではほとんどの時間じかん、100度どを超こえていませんでした。

メモには「殺菌さっきん可能かのうな温度おんどと時間じかんを達成たっせいできなかったが、必かならずしも殺菌さっきんが必要ひつような場所ばしょと捉とらえる必要ひつようはない」と書かかれていました。

メモについてメーカー側がわは「目標もくひょうの温度おんどに達たっしなかった場所ばしょのデータを隠かくし、捜査そうさに不利ふりに動うごく実験じっけん結果けっかを握にぎりつぶした」と主張しゅちょうし、うその報告ほうこく書しょを作成さくせいした疑うたがいで担当たんとうの捜査そうさ員いんを刑事けいじ告発こくはつしています。

一方いっぽう、「違法いほうな捜査そうさはなかった」と主張しゅちょうする都とは、メモについて、「内容ないようの正確せいかく性せいが確保かくほされていない」と反論はんろんしました。

3か所かしょで温度おんどを測定そくていしていたことは認みとめ、「経済けいざい産業さんぎょう省しょうも、メモにあった場所ばしょは機械きかいの内部ないぶではないと明確めいかくに示しめしていて、内部ないぶに当あたる所ところだけを報告ほうこく書しょに記載きさいするのは当然とうぜんのことだ」と主張しゅちょうしています。

【経済けいざい産業さんぎょう省しょうの見解けんかいなぜ変かわったのか】

メーカー側がわは、経済けいざい産業さんぎょう省しょうと警視庁けいしちょうのやりとりとされるメモも新しん証拠しょうことして提出ていしゅつしました。

メモでは経済けいざい産業さんぎょう省しょう側がわが当初とうしょ、規制きせい対象たいしょうに当あたらないという見解けんかいを示しめしていたものの、打ち合うちあわせを重かさねると「公安こうあん部長ぶちょうが盛り上もりあがっているというのは耳みみに入はいってきている。ガサができるように表現ひょうげんぶりを検討けんとうしたい」などと発言はつげんしたとされています。

メーカー側がわは、「警視庁けいしちょうは経済けいざい産業さんぎょう省しょうをだまして見解けんかいをねじ曲ねじまげさせ、会社かいしゃの捜索そうさく、差し押さしおさえを容認ようにんする方針ほうしんに転換てんかんさせた」と主張しゅちょうしています。

都とはこのメモについても「正確せいかく性せいが確保かくほされていない」としていて、「公安こうあん部長ぶちょうが働はたらきかけたり経済けいざい産業さんぎょう省しょう側がわが急きゅうに姿勢しせいを一変いっぺんさせたりしたことはなく、このメモにも書かかれていない。経済けいざい産業さんぎょう省しょうの公式こうしき見解けんかいは一貫いっかんしている」と主張しゅちょうしています。

【取り調とりしらべの違法いほう性せいも争点そうてんに】

取り調とりしらべが適切てきせつだったのかどうかも1審しんに続つづき、大おおきな争点そうてんになっています。

元もと取締役とりしまりやくの島田しまだ順じゅん司つかささんの逮捕たいほ後ごの取り調とりしらべで作成さくせいされた「弁解べんかい録ろく取と書しょ」という調書ちょうしょをめぐって1審しんの東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょは、島田しまださんが修正しゅうせいを依頼いらいしたところ捜査そうさ員いんが修正しゅうせいしたふりをして署名しょめいさせたとして、違法いほうだと認定にんていしました。

この調書ちょうしょは破棄はきされたことが分わかっていて、捜査そうさ員いんは「誤あやまって裁断さいだんした」とする報告ほうこく書しょを作成さくせいしています。

メーカー側がわは2審しんで、取り調とりしらべに同席どうせきしていた別べつの捜査そうさ員いんが、この報告ほうこく書しょにコメントを付け加つけくわえる形かたちで作成さくせいしたとされるメモを新しん証拠しょうことして提出ていしゅつしました。

メモには「完全かんぜんなる虚偽きょぎ報告ほうこく」、「よくこんな報告ほうこく書しょが作成さくせいできるよな。どっちが犯罪はんざい者しゃか分わからん」などと書かかれています。

メーカー側がわは「捜査そうさ員いんが真実しんじつを隠蔽いんぺいする目的もくてきで報告ほうこく書しょを作成さくせいしたことは明あきらかだ」と主張しゅちょうし、取り調とりしらべを担当たんとうした捜査そうさ員いんについて警視庁けいしちょうに刑事けいじ告発こくはつしています。

一方いっぽう、都とは「捜査そうさ員いんは元もと取締役とりしまりやくをだましておらず、報告ほうこく書しょの内容ないようは当時とうじの事実じじつをありのままに記載きさいしたものだ。捜査そうさ員いんの対応たいおうには何なにの問題もんだいもない」などと取り調とりしらべの違法いほう性せいを否定ひていし、調書ちょうしょ作成さくせいに立ち会たちあった捜査そうさ員いんの証人しょうにん尋問じんもんを要求ようきゅうしています。

【検察けんさつの判断はんだんは】

起訴きそをした検察けんさつの判断はんだんについても、1審しんは「違法いほう」と認定にんていし、2審しんでも引き続ひきつづき争点そうてんとなります。

メーカー側がわは新あらたな証拠しょうこをもとに、検察けんさつに対にたいしても「追加ついかの捜査そうさを行おこなわず証拠しょうこを無視むしして漫然まんぜんと起訴きそした」と主張しゅちょうしています。

一方いっぽう、国くには「検察官けんさつかんが当時とうじ集あつめていた証拠しょうこや資料しりょうに基もとづいて起訴きそしたことは違法いほうではない。1審しんの判決はんけつは結果けっかから後こう付づけで違法いほうだと認定にんていしていて、検察官けんさつかんに過大かだいな捜査そうさ義務ぎむを課かすものだ」と主張しゅちょうしています。