日本新聞: 【詳しく】ウクライナ侵攻1週間増え続ける市民の犠牲

ロシア軍ぐんによるウクライナへの軍事ぐんじ侵攻しんこうから1週間しゅうかん。首都しゅとキエフをめぐる攻防こうぼうはこう着こうちゃく状態じょうたいとなっている一方いっぽう、ロシア軍ぐんは各地かくちで攻撃こうげきを激化げきかさせ、子こどもを含ふくめた市民しみんの犠牲ぎせいも増ふえ続つづけています。

キエフへの本格ほんかく的てきな侵攻しんこうは始はじまるのか？

停戦ていせんに向むけたロシアとウクライナの2回かい目めの交渉こうしょうはいつ行おこなわれるのか？

詳くわしく解説かいせつします。

軍事ぐんじ侵攻しんこう1週間しゅうかんロシア軍ぐんどこまで？

現地げんち時間じかんの24日にち明け方あけがたにウクライナへの攻撃こうげきを始はじめたロシア軍ぐん。

アメリカのシンクタンクは、この1週間しゅうかんでロシア軍ぐんが東部とうぶや南部なんぶのクリミアに加くわえ、第だい2の都市としハリコフがある北東ほくとう部ぶ、そして首都しゅとキエフに向むかう北部ほくぶ一帯いったいを掌握しょうあくしたと分析ぶんせきしています。

2日にちにはロシア国防省こくぼうしょうが「南部なんぶの都市としヘルソンを完全かんぜんに掌握しょうあくした」と発表はっぴょうしましたが、アメリカ国防こくぼう総省そうしょうは「激はげしい戦たたかいがまだ続つづいていると見みている」と否定ひてい。ただ、ロシア軍ぐんはハリコフなど各地かくちで攻撃こうげきを激化げきかさせています。

首都しゅとキエフの状況じょうきょうはどうなっている？

アメリカ国防こくぼう総省そうしょうの高官こうかんはキエフに向むけて南下なんかしているロシア軍ぐんの部隊ぶたいについて「依然いぜんとして動うごきは停滞ていたいしている」として、ここ数すう日にち、大おおきな進展しんてんは見みられないという認識にんしきを示しめしています。

当初とうしょ、アメリカ側がわもキエフ陥落かんらくは時間じかんの問題もんだいなどと危機きき感かんを強つよめていたにもかかわらず、なぜ、キエフへの侵攻しんこうは停滞ていたいしているのか。

軍事ぐんじ戦略せんりゃく上じょうの大おおきなミス？

トランプ政権せいけん時代じだいに国家こっか安全あんぜん保障ほしょう担当たんとうの大統領だいとうりょう補佐ほさ官かんを務つとめた元もとアメリカ軍ぐんのマクマスター氏しは「軍事ぐんじ戦略せんりゃく上じょう、大おおきなミスを犯おかしている」と指摘してきしています。

マクマスター氏しは「ロシア軍ぐんの部隊ぶたいは十じゅう数すう万まんのうち実際じっさいの戦闘せんとう部隊ぶたいは30％ほどにすぎず、その規模きぼはウクライナという広大こうだいな国土こくどを持もつ国くにを攻せめるにはあまりに小ちいさい」と指摘してき。

そのうえで「戦車せんしゃと歩兵ほへいの統合とうごう運用うんようができておらず訓練くんれんが足たりていないほか、燃料ねんりょうなどの補給ほきゅうも十分じゅうぶんでない」などとして、「軍事ぐんじのプロから見みれば信しんじられないような基本きほん的てきなミスを犯おかしている」と分析ぶんせきしています。

そして、「こうした軍事ぐんじ的てきには説明せつめいのつかない判断はんだんミスをしていることなどから、クレムリンでプーチン大統領だいとうりょうに適切てきせつな助言じょげんが届とどかなくなっている可能かのう性せいがある」と指摘してきしています。

計画けいかくどおり都市としを包囲ほうい？

これに対にたいして、旧きゅうソビエト海軍かいぐんの元もと大佐たいさでロシア軍ぐんの戦略せんりゃくに詳くわしいシブコフ氏しは「ロシア軍ぐんは計画けいかくどおり各地かくちで部隊ぶたいを進すすめている」と強調きょうちょうします。

シブコフ氏しは「ロシア軍ぐんはウクライナの奥深おくふかくまで急速きゅうそくに進軍しんぐんし、抵抗ていこうする都市としを包囲ほういしている」としたうえで、「ロシア軍ぐんの作戦さくせんは過去かこにロシア軍ぐんの支援しえんを受うけたシリアのアサド政権せいけんが反はん政府せいふ勢力せいりょくの最大さいだい拠点きょてんとしてきた北部ほくぶのアレッポを包囲ほういした作戦さくせんが生いかされている」と分析ぶんせきしました。

そして「ロシアがキエフを包囲ほういしているのに奪取だっしゅしないのは意図いと的てきかつ計画けいかく的てきなことだ」として、キエフ包囲ほういはゼレンスキー政権せいけんに圧力あつりょくをかけることがねらいだという見方みかたを示しめしました。

増ふえ続つづける市民しみんの犠牲ぎせい

攻撃こうげきの対象たいしょうはあくまでも軍事ぐんじ施設しせつだと主張しゅちょうするロシア。

しかし、国連こくれん人権じんけん高等こうとう弁務べんむ官かん事務所じむしょは2日にち、この1週間しゅうかんで市民しみん227人にんの死亡しぼうが確認かくにんされたと発表はっぴょうしました。犠牲ぎせい者しゃの中なかには子こどもたちも含ふくまれ、その数かずはさらに増ふえるとしています。

東部とうぶドネツク州しゅうのマリウポリでは27日にち、ロシア軍ぐんの砲撃ほうげきで重傷じゅうしょうを負おった6歳さいの女の子おんなのこが病院びょういんに運はこばれてきました。母親ははおやが見守みまもる中なか、女の子おんなのこは心臓しんぞうマッサージを受うけましたが亡なくなりました。

蘇生そせい措置そちを行おこなった医師いしは「この状況じょうきょうをプーチンに見みせろ！」とカメラに向むかってロシア語ごで叫さけび、強つよい憤いきどおりを表あらわしていました。

子こどもを含ふくめた市民しみんの犠牲ぎせいが増ふえ続つづける現状げんじょう。

ウクライナのゼレンスキー大統領だいとうりょうはフェイスブックにメッセージ動画どうがを投稿とうこうし「ロシア軍ぐんによる攻撃こうげきのたびに死傷ししょう者しゃが出でている。あなたたちは何なにのためにウクライナに来きたのか、何なにをしているのか。武器ぶきを捨すてて帰かえりなさい」とロシア語ごも交まじえて非難ひなんしました。

国外こくがいに逃のがれる人ひとたちは

ウクライナから避難ひなんする人ひとは日ひを追おうごとに増ふえています。

UNHCR＝国連こくれん難民なんみん高等こうとう弁務べんむ官かん事務所じむしょは2日にち現在げんざいで、ウクライナから国外こくがいに避難ひなんした人ひとの数かずが前日ぜんじつからさらに30万まん人にん余あまり増ふえ、100万まん人にん以上いじょうに上のぼったと明あきらかにしました。

このうち、半数はんすうを超こえる50万まん人にん以上いじょうが避難ひなんしたポーランドでは、首都しゅとワルシャワの駅えきのホームに国境こっきょうから来きた大勢たいせいの人ひとたちが詰つめかけ、別べつの国くになどに向むかう列車れっしゃに次々つぎつぎに乗り込のりこんでいました。

2人にんの孫まごを連つれて避難ひなんしてきた63歳さいの女性じょせいは次つぎのように話はなしています。

「町まちは破壊はかいされて、息子むすこは地域ちいきの防衛ぼうえい組織そしきに参加さんかしました。心配しんぱいということばでは足たりないほど心配しんぱいです」

国際こくさい社会しゃかいでロシアの孤立こりつ際立きわだつ形かたちに

こうした中なか、国連こくれん総会そうかいの緊急きんきゅう特別とくべつ会合かいごうでは2日にち、ロシアを非難ひなんし軍ぐんの即時そくじ撤退てったいなどを求もとめる決議けつぎ案あんが賛成さんせい多数たすうで採択さいたくされました。

反対はんたいしたのは、ロシアとベラルーシに加くわえ、シリア、北朝鮮きたちょうせん、東ひがしアフリカにあるエリトリアの5か国かこく。

また、棄権きけんしたのは中国ちゅうごくやインド、イランなど、35か国かこくでした。

国連こくれん総会そうかいでは8年ねん前まえ、ロシアによるウクライナのクリミア併合へいごうをめぐって領土りょうどの一体いったい性せいを壊こわす行為こういをやめるよう求もとめる決議けつぎが採択さいたくされましたが、このときは100か国かこくが賛成さんせい。

今回こんかいの決議けつぎ案あんはロシアを名指なざしして非難ひなんする中なか、賛成さんせい国こくがどこまで増ふえるかが焦点しょうてんでしたが、8年ねん前まえを大おおきく上回うわまわる141か国かこくが賛成さんせいに回まわり、ロシアの国際こくさい的てきな孤立こりつが一層いっそう際立きわだつ形かたちとなりました。

2回かい目めの交渉こうしょうはいつ？

依然いぜんとして不透明ふとうめいな状況じょうきょうです。

場所ばしょはベラルーシ西部せいぶのポーランドとの国境こっきょう付近ふきんで行おこなわれる見通みとおしで、もともと「2日にちにも行おこなわれる」という情報じょうほうがありましたが、1日にちか2日にち延期えんきされる可能かのう性せいも伝つたえられていました。

ただ、そもそも会談かいだんを通をつうじて事態じたいの打開だかいを図はかれるかは難むずかしい状況じょうきょうです。

ロシア側がわが停戦ていせんの条件じょうけんとしてウクライナの「中立ちゅうりつ化か」や「非ひ軍事ぐんじ化か」などを要求ようきゅうしている一方いっぽう、ウクライナ側がわもロシアの国際こくさい的てきな孤立こりつが深ふかまる中なか、圧力あつりょくに屈くっせず交渉こうしょうに臨のぞむことが予想よそうされ、交渉こうしょうを通をつうじて停戦ていせんを実現じつげんできるかは依然いぜん、見通みとおせない情勢じょうせいです。