御嶽山みたけさん噴火ふんか 国くになどに賠償ばいしょう求もとめる訴訟そしょう 2審しんも遺族いぞくらの訴うったえ退しりぞける

長野ながの県けんと岐阜ぎふ県けんにまたがる御嶽山みたけさんの10年ねん前まえの噴火ふんかでは、登山とざん者しゃ58人にんが死亡しぼう、5人にんが行方ゆくえ不明ふめいとなり、遺族いぞくなど32人にんは、国くにが事前じぜんに噴火ふんか警戒けいかいレベルを引き上ひきあげなかったため被害ひがいにあったとして、国くにと長野ながの県けんにあわせて3億おく7600万まん円えんの賠償ばいしょうを求もとめました。

1審しんの長野ながの地方ちほう裁判所さいばんしょ松本まつもと支部しぶは、噴火ふんか警戒けいかいレベルを2日にち前まえに1から2に引き上ひきあげなかったことを違法いほうだと指摘してきした一方いっぽう、「その段階だんかいから適切てきせつに対応たいおうしても被害ひがいを防ふせげたとは言いえない」として訴うったえを退しりぞけ、遺族いぞくらが控訴こうそしていました。

21日にちの2審しんの判決はんけつで東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょの筒井つつい健夫たけお裁判さいばん長ちょうは、「御嶽山みたけさんは火山かざん学がくの研究けんきゅうが十分じゅうぶんには進すすんでおらず、裏付うらづけのある資料しりょうに基もとづいて判断はんだんすることは困難こんなんだった。過去かこの噴火ふんかではより多おおくの火山かざん性せい地震じしんが観測かんそくされ、噴火ふんか警戒けいかいレベルを引き上ひきあげなかったことは違法いほうではない」として、1審しんに続つづいて遺族いぞくなどの訴うったえを退しりぞけました。

原告げんこく「切り捨きりすてられたような気きがした」

原告げんこくとなっている遺族いぞくらは判決はんけつのあとに都内とないで会見かいけんを開ひらき、「切り捨きりすてられた」などと納得なっとくできない思おもいを語かたりました。

当時とうじ小学しょうがく5年生ねんせいだった娘むすめの照あきら利としさんを亡なくした愛知あいち県けん豊田とよだ市しの長山ながやま幸嗣こうじさんは、「1審しんの判決はんけつは違法いほうと認定にんていする部分ぶぶんがあるなど、私わたしたちに寄り添よりそった判決はんけつでしたが、今回こんかいの判決はんけつはあっさりしていて、切り捨きりすてられたような気きがしました。この判決はんけつを放はなっておくわけにはいかないと思おもいます」と話はなしていました。

当時とうじ、一緒いっしょに登のぼっていた友人ゆうじんが亡なくなり、自身じしんも大だいけがをした長野ながの県けん茅野ちの市しの田幸たこう秀敏ひでとしさんは「1審しん判決はんけつよりも厳きびしい内容ないようでとても残念ざんねんです。御嶽山みたけさんに関にかんする知識ちしきが少すくないからこそ、噴火ふんか警戒けいかいレベルを上あげるべきだったと思おもっています。上告じょうこくする方向ほうこうで考かんがえたいです」と話はなしていました。

気象庁きしょうちょう「火山かざん防災ぼうさい情報じょうほう、的確てきかくな発表はっぴょうに努つとめる」

判決はんけつを受うけて、気象庁きしょうちょうは「御嶽山みたけさんの噴火ふんかでお亡なくなりになられた方々かたがたのご冥福めいふくを心こころよりお祈おいのり申し上もうしあげます。また、被災ひさいされた方々かたがたに心こころからお見舞みまいを申し上もうしあげます。今後こんごも、関係かんけい機関きかんと連携れんけいしながら、火山かざん活動かつどうの監視かんしや評価ひょうかの技術ぎじゅつを向上こうじょうさせるとともに、噴火ふんか警報けいほうなどの火山かざん防災ぼうさい情報じょうほうを適時てきじ、的確てきかくに発表はっぴょうするよう努つとめてまいります」とコメントしています。

火山かざん学者がくしゃ「予測よそくはまだ未熟みじゅくということが指摘してきされた」

21日にちの判決はんけつについて、火山かざん学がくが専門せんもんの静岡しずおか大学だいがくの小山こやま真人まさと名誉めいよ教授きょうじゅは「噴火ふんかの予測よそくはまだまだ未熟みじゅくであるということが指摘してきされた判決はんけつだ。気象庁きしょうちょうの対応たいおうについて厳きびしく言及げんきゅうした1審しん判決はんけつに比くらべ、2審しん判決はんけつは噴火ふんかの前まえに異常いじょうな現象げんしょうは出でていたものの、それがすべて軽微けいびだったと判断はんだんした。原告げんこくにとってはかなり後退こうたいする判決はんけつだ」と話はなしています。

「噴火ふんか警戒けいかいレベル」とは

「噴火ふんか警戒けいかいレベル」は、警戒けいかいが必要ひつような範囲はんいや自治体じちたいや住民じゅうみんなどがとるべき防災ぼうさい対応たいおうを火山かざんの状況じょうきょうに応おうじてレベル1から5までの5段階だんかいに分わけた情報じょうほうです。

2007年ねんに運用うんようが始はじまり、これまでに全国ぜんこく49の火山かざんで導入どうにゅうされています。

5段階だんかいのレベルをキーワードで説明せつめいしていて、最もっとも低ひくいレベル1は当初とうしょ「平常へいじょう」という表現ひょうげんでした。

御嶽山みたけさんが噴火ふんかした直前ちょくぜんもレベルが「1」で「安全あんぜんだという誤解ごかいにつながる」という指摘してきがあり、気象庁きしょうちょうはこの噴火ふんかを踏ふまえて「平常へいじょう」から「活火山かっかざんであることに留意りゅうい」に変更へんこうしました。

また、噴火ふんか警戒けいかいレベルの判断はんだん基準きじゅんをホームページで公表こうひょうするとともに、レベルの引き上ひきあげには至いたらないまでも、火山かざん活動かつどうに通常つうじょうと異ことなる変化へんかがあった場合ばあいは「臨時りんじ」と明記めいきして火山かざんの状況じょうきょうに関にかんする解説かいせつ情報じょうほうを発表はっぴょうするようになりました。

そして、多おおくの登山とざん客きゃくが犠牲ぎせいになったことから、噴火ふんかから数すう分ふん以内いないにその事実じじつを伝つたえる「噴火ふんか速報そくほう」も導入どうにゅうしました。