恋愛に関しては、女性はロマンチストだという言説が根強く存在する。一般に、女性は深い感情を抱き、恋愛初期から心を寄せ、関係の感情的側面を支える役割を担っていると見なされがちである。これに対して男性は感情の表出が控えめであり、恋愛に夢中になることは少ないと描写されてきた。その根底には、男性は警戒心が強く、心を開くのに時間がかかるため、そうした状況においてかれらの気持ちは勢いを失いやすい、という仮定がある。しかしながら、近年発表された査読付き研究は、このような視点が必ずしも正確ではないことを明らかにしている。
2025年、専門誌『Biology of Sex Differences』に掲載された研究は、33カ国の若年成人808人を対象とし、恋愛中の実際の感情を調査している。これまでの研究が過去の記憶に頼っていたのに対し、本研究は検証済みの指標を用いて、いままさに恋愛している男女の違いについて定量的に分析した点で画期的である。
この研究において特筆すべきは、男性は平均して女性よりも約1か月早く恋に落ちる傾向があるという結果である。一方、女性はより強い愛情を抱きやすく、また、恋愛対象について想いを巡らす頻度が高いという特徴を持つ。研究者たちはこの現象について進化論的な観点で説明している。すなわち、男性が頻繁かつ早い段階で恋に落ちることは、競争において不利にならないための適応行動であり、女性へコミットメントを示す手段になったのであろうという仮説である。
つまり、躊躇していると恋愛競争において不利になるため、男性は早く恋に落ちるよう進化した可能性があると考えられる。他方で、女性はパートナー選択に関して慎重にならざるを得ないために、時間をかけるように適応したと推察される。しかし、いちど愛情を抱いた場合、その思いと感情は非常に強いものとなる。
これに関連して、メディアや大衆文化では、男性が「愛している」と先に言うことが無謀だったり、演技的であるかのように描かれる場合があるが、実際は男性のほうが単にそう感じるタイミングが早いだけなのかもしれない。他方で、愛の告白にいたるまでに時間がかかる女性は、単に特有の愛し方をしているだけであり、その深さが男性に劣るわけではない。
続いて、専門誌『Psychological Science』に2024年発表された大規模な縦断研究がある。
米国の成人3867人を対象としたこの調査では、参加者が携帯電話で30分ごとに愛情などの感情を記録するという手法が用いられた。その結果によれば、異性愛カップルにおいて女性は婚約時に男性の2倍の愛情を抱いていることが分かったが、結婚後2年以内にはその愛情は大きく低下し、最終的に男女でその水準が同一となった。
この現象は、女性が結婚後パートナーへの愛情を失うことを示唆するものではない。むしろ、この結果は、男女が人生の各段階で異なる愛情の推移を経験していることを示しているのである。女性の愛情は初期に急激なピークを迎え、その後の変化も大きい。
一方、男性の愛情は安定しており、ゆるやかな波を描く。
研究者が提示した解釈のひとつは、女性のほうが関係の初期段階における感情の変動、すなわちコミットメントに伴う高揚感や安定化のプロセスに、より強く影響を受けやすいというものである。また、結婚後に女性が家庭を維持管理する負担をより多く担うことが関係している可能性も指摘された。いずれにせよ、婚約から結婚初期にかけての移行期にあるカップルにとって、このデータは愛情が時間とともに変化するという事実を裏付けるものである。
結論として、上述した2つの研究は、従来の社会的通念を覆すものである。男は恋に落ちるのが遅いという通説は否定され、むしろ男性は早く恋に落ち、しかも比較的安定した愛情を維持することが明らかになった。こうした安定性は、長期的な関係において男性がもたらす価値のひとつにほかならない。一方、女性はすべての面で男性よりもロマンチックであるという考えは、複雑な現実を十分に反映していない。
実際には、男女は異なる速度とリズムで愛情を経験しながらも、最終的には共通の目的地にたどり着く。その旅路がたとえ異なっていたとしても、両者が築くことのできる深く持続的な絆には大いなる意味があるに違いない。