昔、周防の国の太陽寺では、どこを掘っても水が出ませんでした。雨の水をためたり、遠くの川から水を運んだりしていました。
ある日、雷が落ちてきました。雷は「うるさくしてすみません」と謝って、杉の木に登って空に帰ろうとしました。すると、お坊さんが「おつち」と言いました。雷は人間に名前をつけられると空に帰ることができません。
おつちは、寺で修行を始めました。毎日、谷川まで水を運びました。おつちはだんだんやせていきましたが、文句などは言いませんでした。
ある夜、お坊さんは夢を見ました。おつちの子どもが「お父さんを返してください」と泣きながら言いました。おつちも夢を見ました。子どもが「早く空に帰ってきてください」と言いました。
お坊さんは「空に帰りたいか」と聞きました。おつちは「私は修行の途中です。途中でやめることはできません」と言いました。お坊さんは感心して、おつちに空に帰るように言いました。
おつちは、夢で子どもが言ったとおりに、杉の木ではなく、岩に手をかけて空に帰りました。すると、岩から水が出てきました。それから、寺では水に困ることはなくなりました。
太陽寺では、この水を「雷水」と呼んで、大切にしました。