近年、宇宙空間における宇宙ごみ(スペースデブリ)の増加が極めて深刻な問題となっている。壊れた人工衛星や外れた部品、さらには微細な塗料片に至るまで、数百万個もの物体が地球周回軌道上に存在しているという。国際宇宙ステーション(ISS)は、こうした宇宙ごみとの衝突を回避せざるを得ず、時には宇宙ごみ同士が衝突することで新たなごみが生み出される事態も発生している。そのため、宇宙ごみの回収や破壊のための技術が提案されてきたものの、これまで包括的かつ体系的な対策は講じられてこなかったのが現状である。
このような状況を受け、英国サリー大学の研究者らは、宇宙ごみに対するより効果的な対処法をまとめた論文を発表した。その基本的な方針は、使用する材料の削減、既存の軌道上物体の修理、修理困難なごみの再利用によって宇宙環境の持続可能性を高めるというものである。これらの施策を産業全体で体系的に実行することが求められている。
「リデュース・リユース・リサイクル」といった発想は、地球上では既に一般的なものとなっているが、宇宙産業においては比較的新しい概念であると言わざるを得ない。ノースダコタ大学の宇宙学教授であるマイケル・ドッジ氏も、その新規性を指摘している。
米航空宇宙局(NASA)の資料によれば、直径10センチメートルを超える宇宙ごみは現在2万5千個以上が地球を周回しており、さらにそれより小さい破片を含めると、その総数は1億個を超えると推定されている。2022年のNASA報告書によると、宇宙ごみ全体の総重量は1万トンを超えているという。
宇宙ごみがもたらす影響は甚大である。例えば、1983年にサリー・ライド氏がスペースシャトル「チャレンジャー」で初飛行を行った際、宇宙ごみによって窓に弾痕のような亀裂が生じた事例が報告されている。また、ハッブル宇宙望遠鏡も度々宇宙ごみと衝突し、パラボラアンテナが貫通されるなどの被害を受けてきた。さらに、2007年と2009年には人工衛星同士の大規模な衝突が発生し、その際に発生した破片は現在記録されている宇宙ごみ全体の3分の1以上を占めるまでになっている。
このような連鎖的な衝突の危険性は「ケスラーシンドローム」と呼ばれ、低軌道上における物体数が一定を超えると、一度の衝突が連鎖的に新たな衝突を引き起こし、最終的にはその領域がごみで満たされ利用不可能になる恐れがある。もし宇宙ごみに対する抜本的な解決策が見つからない場合、人工衛星や世界の通信インフラに多大な損害が発生し、世界のGDPが1,95%低下する可能性すら指摘されている(2023年、学術誌スペースポリシー論文より)。
今回の論文は、持続可能な宇宙システムの構築には、人工知能(AI)を活用した衛星の衝突回避システムや、宇宙ステーションを宇宙ごみの修理・再利用のためのプラットフォームとして転用すること、さらには企業や国家が物体の設計段階から廃棄を考慮することなど、既存技術と新たな発想を組み合わせる必要があると指摘している。
しかし、宇宙空間における持続可能性の確立には、地上には存在しない特有の課題が伴う。その中でも特に、宇宙に関する法律や国際政治の複雑性が大きな障壁となっている。宇宙条約では、「一度宇宙に打ち上げた物体は永遠にその国の所有物である」と規定されており、使用済みのロケットブースターや運用停止した人工衛星も、打ち上げ国の所有物として扱われる。そのため、他国が生み出した宇宙ごみを第三国が回収することは現状では違法とされている。
宇宙ごみの回収や再利用を進めるためには、全ての所有国からの許可が必要となるが、それは現実的には極めて困難である。しかし、条約の別の条項では、各国に宇宙の汚染を回避する義務が課されており、自国の宇宙ごみを回収する責任があると解釈する余地も残されている。
このような法的・制度的課題を乗り越え、宇宙ごみの再生利用を実現することは、今後の宇宙産業の持続可能性にとって極めて重要な意義を持つ。サリー大学研究・イノベーション学部副学部長のジン・シュアン氏も、「持続可能性の発想に対する関心は高まっているが、実際に実践するためには資金やインセンティブの整備が不可欠である」と述べている。