あるあたたかい秋の日、庄内平野の小川のそばで、千岳坊と万岳坊という二人の羽黒山伏が休んでいました。二人はひまなので、橋の上で寝ているきつねをほら貝の音でおどろかせて、川に落としました。二人はとてもわらいました。
そのあと、羽黒山に行こうとしましたが、昼なのに急に暗くなりました。二人はしかたなく、どこかにとまりたいと思い、町のあかりをさがしました。そして、野原の中にある一つの家を見つけました。
家の主人は、「家内が死んで、これからお寺に行く。でも、その間に動物が死体をさわらないか心配だ」と言いました。二人は「見はりをします」と言って、とまらせてもらいました。主人が出かけて、二人はこわいので、ひつぎを見ないようにしていました。
でも、急にひつぎのふたが開いて、白い手が出てきて、おそなえのだんごを一つとって、またもどりました。二人はとてもこわくてふるえました。そのあとも、何回も手が出てきて、だんごがなくなりました。さいごに、手が二人のほうにのびてきたので、二人はこわくて家からにげだし、川に落ちてしまいました。
川の水はとてもつめたかったです。川のそばでは、きつねがにこにこしていました。