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河鹿屏風に宿る自然と人間の共生の物語

Article Details

  1. Reading Practice
  2. Article Details

河鹿屏風かじかびょうぶに宿やどる自然しぜんと人間にんげんの共生きょうせいの物語ものがたり

N2
28/10/2025852
河鹿屏風に宿る自然と人間の共生の物語
0:00

むかし、かつて上狩野かみかりのの旧家きゅうかに菊三郎きくさぶろうという人物じんぶつがいた。彼かれは悪事あくじを働はたらくことこそなかったものの、働はたらき者ものとは言いいがたく、日々ひびの生活せいかつは借金取りしゃっきんとりに追おわれることが常つねであった。しかし、自然しぜんを愛めでる心こころは人一倍ひといちばいであり、そのために生計せいけいを省かえりみず、悠々自適ゆうゆうじてきの暮くらしを続つづけていたのである。
そんなある折おり、菊三郎きくさぶろうは借金返済しゃっきんへんさいのため、ついに家いえに伝つたわる山やまを売却ばいきゃくせざるを得えなくなり、売却ばいきゃくに先立さきだって山やまへ赴おもむくこととなった。道中どうちゅう、足あしを滑すべらせて崖がけから転落てんらくし、谷川たにがわの川床かわどこに落おちた菊三郎きくさぶろうは、清きよらかな水辺みずべと周囲しゅういに響ひびき渡わたるカジカの鳴なき声ごえに心こころを奪うばわれ、しばし夢幻むげんの境地きょうちに浸ひたっていた。その時とき、突如とつじょとして彼かれの肩かたを叩たたく者ものが現あらわれ、見上みあげると、そこには世よにも不思議ふしぎな老人ろうじんが立たっていた。
老人ろうじんは「私わたしは河鹿沢かじかざわに棲すむカジカの頭領とうりょうである。あなたが売うろうとしている山やまが他人たにんの手てに渡わたれば、木々きぎは伐採ばっさいされ、谷たには乾かわき、川床かわどこも濁流だくりゅうに呑のまれてしまう。そのようなことになれば、我々われわれカジカはこの地ちを追おわれてしまうのだ。どうか、山やまを売うらないでほしい」と懇願こんがんした。その言葉ことばに菊三郎きくさぶろうは大おおいに心こころを動うごかされ、気きがつくと老人ろうじんの姿すがたはすでになかったが、「承知しょうちしました」と独ひとりごちて山やまを後あとにした。
帰宅きたくした菊三郎きくさぶろうは、家財道具かざいどうぐや書画骨董しょがこっとうの類たぐいをすべて売却ばいきゃくし、何なんとかして河鹿沢かじかざわの山やまを他人たにんに渡わたさずに済すませることができた。しかし、手元てもとに残のこったのは、売うり物ものにもならない白しろい枕屏風まくらびょうぶ一曲いっきょくのみであった。その晩ばん、涼風りょうふうの吹ふき抜ぬける夜よる、菊三郎きくさぶろうが眠ねむりに就つくと、夢ゆめと現実げんじつの狭間はざまでカジカの鳴なき声ごえに囲かこまれながら目めを覚さました彼かれの目めに、縁側えんがわから枕元まくらもとにかけて点々てんてんと濡ぬれた足跡あしあとが続つづいている光景こうけいが映うつった。
さらに、白しろい枕屏風まくらびょうぶの表面ひょうめんには、いつの間まにか墨すみの鮮あざやかさを保たもったまま、カジカが谷間たにまで戯たわむれる様子ようすが生いき生いきと描えがかれていたのである。この屏風びょうぶに描えがかれたカジカの群むれは、観みる者ものに言葉ことばでは言いい尽つくせない不思議ふしぎな感動かんどうを与あたえた。やがて河鹿屏風の噂うわさは人々ひとびとの間あいだで広ひろまり、都みやこから訪おとずれた著名ちょめいな絵師えしもその出来栄えできばえに驚嘆きょうたんし、千両箱せんりょうばこを携たずさえて屏風びょうぶの譲渡じょうとを求もとめる者ものまで現あらわれた。しかし、菊三郎きくさぶろうは決けっしてこの屏風びょうぶを手放てばなすことはなかった。
その後のち、菊三郎きくさぶろうは屏風びょうぶを売うることなく、むしろ仕事しごとに励はげみ始はじめたという。やがて歳月さいげつが流ながれ、菊三郎きくさぶろうが老おいて世よを去さると、奇妙きみょうなことに河鹿屏風の色彩しきさいも徐々じょじょに褪あせ、数年すうねんのうちに絵えは完全かんぜんに消きえてしまったと伝つたえられている。
今いまなお、浄蓮じょうれんの滝たきの上方じょうほう、河鹿沢の渓流けいりゅうでは、カジカの美うつくしい鳴なき声ごえが絶たえ間まなく響ひびき渡わたり、往時おうじの伝説でんせつを静しずかに物語ものがたっているのである。

Source: Tổng hợp
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Comment

N526%
N414%
N336%
N27%
N117%

Vocabulary (116)

かつてN3
BeforeAdverb
旧家きゅうか
Old familyNoun
悪事あくじ
Bad thingsNoun
働はたらき者もの
Hardworking personNoun
言いいがたい
It's hard to say.Adjective
借金取りしゃっきんとり
Debt collectorNoun
自然しぜん
NatureNoun
愛めでる
FavoritesVerb
人一倍ひといちばい
Superior to othersAdverb
生計せいけい
LivelihoodNoun
省かえりみるN3
ConsiderationVerb
悠々自適ゆうゆうじてき
Live freely and as you please.Noun
続つづけるN4
Continue.Verb
折おり
OpportunityNoun
借金返済しゃっきんへんさい
Repay the debtNoun
売却ばいきゃく
SellNoun
先立さきだつ
BeforeVerb
赴おもむく
GoVerb
道中どうちゅう
On the roadNoun
足あしを滑すべらせる
Slip and fallVerb phrase
崖がけN1
CliffNoun
転落てんらくするN1
FallVerb
谷川たにがわ
OgawaNoun
川床かわどこ
RiverbedNoun
清きよらかN3
CleanlinessAdjective
水辺みずべ
WaterfrontNoun
響ひびき渡わたる
EchoingVerb
カジカ
LoachNoun
鳴なき声ごえ
CryNoun
心こころを奪うばう
FascinatedVerb phrase
しばし
For a whileAdverb
夢幻むげん
IllusionNoun
境地きょうち
CautionNoun
浸ひたる
Immerse oneselfVerb
突如とつじょ
SuddenlyAdverb
叩たたくN3
ApplauseVerb
見上みあげる
Look upVerb
世よにも不思議ふしぎ
StrangeAdjective phrase
老人ろうじん
GrandfatherNoun
棲すむ
ResidenceVerb
頭領とうりょう
LeaderNoun
他人たにん
Other peopleNoun
渡わたる
PassVerb
木々きぎ
TreesNoun
伐採ばっさいする
LoggingVerb
乾かわく
dry upVerb
濁流だくりゅう
Muddy waterNoun
呑のまれる
SwallowedVerb
そのような
Like thatAdjective phrase
追おわれる
Get kicked outVerb
懇願こんがんする
PleaVerb
気きがつく
NoticeVerb
姿すがた
SilhouetteNoun
承知しょうちする
"I agree"Verb
独ひとりごちる
TweetVerb
家財道具かざいどうぐ
FurnitureNoun
書画骨董しょがこっとう
Antique calligraphy and paintingsNoun
類たぐい
TypeNoun
何なんとかして
Do something about it.Adverb
済すませる
CompletedVerb
手元てもと
In handNoun
売うり物もの
ProductNoun
枕屏風まくらびょうぶ
Folding screenNoun
一曲いっきょく
1 sheetNoun
涼風りょうふう
Cool breezeNoun
吹ふき抜ぬける
Blow throughVerb
眠ねむりに就つく
SleepVerb phrase
夢ゆめと現実げんじつの狭間はざま
Between dreams and realityNoun phrase
囲かこまれる
SurroundedVerb
目めを覚さます
Wake upVerb phrase
縁側えんがわ
EntranceNoun
枕元まくらもと
BedsideNoun
点々てんてん
SpotsAdverb
濡ぬれるN4
WetVerb
足跡あしあと
FootprintsNoun
光景こうけい
SceneNoun
映うつる
ReflectionVerb
表面ひょうめん
SurfaceNoun
墨すみ
SquidNoun
鮮あざやかさ
BrightnessNoun
保たもつ
KeepVerb
戯たわむれる
PlayVerb
生いき生いき
VividAdverb
描えがかれる
be drawnVerb
観みる者もの
AudienceNoun
言葉ことばでは言いい尽つくせない
Can't put it into words.Verb phrase
不思議ふしぎな感動かんどう
Mysterious emotionNoun phrase
やがて
"In the blink of an eye"Adverb
噂うわさ
RumorNoun
都みやこ
CapitalNoun
著名ちょめいな
FamousAdjective
絵師えし
PainterNoun
出来栄えできばえ
ProductNoun
驚嘆きょうたんする
SurpriseVerb
千両箱せんりょうばこ
SafeNoun
携たずさえる
BringVerb
譲渡じょうとを求もとめる
Transfer RequestVerb phrase
現あらわれる
AppearanceVerb
手放てばなす
Let go of your hand.Verb
仕事しごとに励はげむ
Work hardPhrasal verb
歳月さいげつ
TimeNoun
流ながれる
Pass awayVerb
老おいる
Get olderVerb
世よを去さる
Pass awayVerb phrase
奇妙きみょうな
StrangeAdjective
色彩しきさい
ColorNoun
徐々じょじょに
GraduallyAdverb
褪あせる
We have to make it thinner.Verb
今いまなお
Even nowAdverb
浄蓮じょうれんの滝たき
ジョーレン滝Noun
上方じょうほう
UpNoun
渓流けいりゅう
OgawaNoun
絶たえ間まなく
ConstantlyAdverb
響ひびく
EchoingVerb
往時おうじ
PastNoun
物語ものがたる
SpeakVerb

Grammar (3)

Verb form ことは + ないN2
Used to emphasize that someone does not do a certain action, meaning does not do something at all.彼は悪事を働くことこそなかったものの、働き者とは言いがたく、日々の生活は借金取りに追われることが常であった。
Verb in ない form (remove ない) + ざるを得ないN2
Used to express the meaning of there is no other way but to do, have no choice but to do.菊三郎は借金返済のため、ついに家に伝わる山を売却せざるを得なくなり、売却に先立って山へ赴くこととなった。
Noun + によってN3
Expresses cause, reason, or the agent performing the action (passive).河鹿屏風の噂は人々の間で広まり、都から訪れた著名な絵師もその出来栄えに驚嘆し、千両箱を携えて屏風の譲渡を求める者まで現れた。

Question

菊三郎きくさぶろうが山やまを売うろうとした主おもな理由りゆうは何なにですか?

1/5
A山が嫌いだったから
B借金を返すため
C新しい家を建てるため
D老人に頼まれたから

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