イングランドにおいてアマチュア考古学者らによって三年前に発掘されたローマ時代の十二面体遺物は、その用途が依然として解明されておらず、考古学界における最大級の謎の一つとなっている。ブリテン島におけるローマ帝国支配期の十二面体は、これを含めて三十三個しか確認されていないが、世界全体でも約百三十個にとどまる。リンカンシャーを拠点とするノートン・ディズニー歴史考古学グループによれば、今回発見された十二面体は「考古学上の大いなる謎」と位置付けられている。
発見された遺物は幅約八センチで内部が空洞、十二個の異なる大きさの穴が空いている。制作時期はおよそ千七百年前に遡るとされ、二〇二四年五月四日からリンカン博物館にて展示されている。
同博物館で展示・解説を統括するアンドレア・マーティン氏は、十二面体が展示品に加わったことについて「発掘現場のすぐ近くに博物館があるため、地域の歴史的価値を高めるものだ」と述べ、さらに展示開始をリンカン歴史フェスティバルに合わせた点についても高く評価した。発表では、当該十二面体がこれまでに発見された中でも最大級の一つであることが強調されている。
しかしながら、専門家の間でもローマ人がこの十二面体を具体的にどのような目的で使用していたのかについては諸説あり、決定的な結論には至っていない。ノートン・ディズニー歴史考古学グループ幹部のリチャード・パーカー氏は「本遺物は全くもって唯一無二の存在であり、同様の遺物が他に見つかった例はない」と指摘する。加えて、破損が見られない点も他の十二面体と異なっており、「形状が完全で摩耗もなく、製作者や使用者にとって極めて高い価値があったことは明らかである。したがって、地中に埋められていた背景には何らかの重要な理由があったに違いない」と述べている。
保存状態が極めて良好であるにもかかわらず、具体的な用途については未だ謎に包まれている。
パーカー氏によれば、ローマ時代の文献やモザイク画には十二面体に関する記述が一切なく、全ての十二面体が大きさも異なることから計量器具としての利用は考えにくいという。また、摩耗の痕跡がないことから道具として使われていた可能性も低いとされている。
それにもかかわらず、同グループは有力な仮説を提唱している。すなわち、「何らかの宗教的あるいは儀式的な目的で用いられていた可能性が最も高い」とし、ローマ人が極めて迷信深い民族であったことを根拠に挙げている。
加えて、発見現場付近で馬に乗る神を模ったローマ時代の小像が発見されている点も、宗教的背景を示唆するものとして注目されている。これらの小像は寺院跡など宗教施設の近辺で発見されることが多いという。
ノートン・ディズニー歴史考古学グループは本年後半にも再び発掘調査を行う予定であり、現場一帯の利用実態や十二面体の謎を解明する手掛かりが得られることが期待されている。パーカー氏は「今回の遺物は発掘地域内で見つかったため、従来の発見例と異なり背景の解明が進む可能性が高い」と述べているが、「実態把握は極めて複雑であり、謎解きはまだ始まったばかりだ」とも付け加えている。