南極大陸は世界で最も大きな氷床がある場所として知られていますが、ここで過去約30年間にわたり、陸地の氷が最大で42キロメートル後退していることが明らかになりました。この陸地の氷の消失は、面積にして約1万2,800平方キロメートル、つまり東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の面積、あるいはベルギーの約半分に相当する広さに匹敵します。
この後退は「接地線」と呼ばれる境界線の移動によるもので、これは陸地に乗っている氷と海に浮かぶ棚氷の境目を示しています。この接地線の後退は、氷が溶けて海に流出していることを意味しており、海面上昇につながる深刻なリスクを孕んでいます。
調査によると、この約33年間で南極大陸は特に西南極の「アムンゼン海」沿岸部や、南極半島、東南極の一部海岸沿いで著しい氷の後退が記録されました。氷が溶けて消失した背景には、「周極深層水」と呼ばれる暖かい海流と、内陸へ向かって深くなる海底地形が大きな影響を与えています。これらの地域でポンプのように浅い方へ吸い上げられた暖かい海流が、氷の底部から徐々に溶かしていった結果、後退が加速したのです。
宇宙からの観測技術の活躍もありました。ESAの「センチネル1」等の人工衛星は、特殊なレーダー技術によって数ミリ単位の地表の変化を検出できるまでに進化しています。この能力のおかげで、南極の変化を詳細に観測し、その進行を解析できるようになりました。