昔、ある村に、働かない男がいました。男は、いつも寝てばかりいました。子どもたちが泣いても、妻が怒っても、男は働きませんでした。家には食べ物がありませんでした。
ある日、男は野原で寝ていました。アリが「私たちを見て、働きなさい」と言いました。でも、男は働こうとしませんでした。アリは「山のお宮に行って、大黒様に『打ち出の小槌』を借りなさい」と言いました。打ち出の小槌を振ると、何でも出てきます。男は喜んで、お宮に行きました。
大黒様は「小槌を貸してもいいが、持つところが折れている。使うことができない」と言いました。男は「家に鍬があるから、それを持ってきて使います」と言いました。大黒様は「小槌の持つところは、くぼんでいて、黒く光っていないと、だめだ」と言いました。
男は畑を耕し始めました。村の人たちは「どうして、あの男が働いているのだろう」と思いました。男は毎日働きました。鍬の持つところは、黒く光ってきましたが、くぼみませんでした。
1年、2年が過ぎました。大黒様は、男の様子を見に来ました。男の畑には、たくさん作物ができていました。妻や子どもたちも、十分に食べることができるようになっていました。男は、小槌のことを忘れていました。大黒様は笑って、山に帰っていきました。