英中部のシェフィールド・ハラム大学は、中国当局の圧力を受け、新疆ウイグル自治区における強制労働に関する学内研究を中止させていたことが明らかになった。研究を主導していた同大学のローラ・マーフィー教授は、2023年4月に産経新聞の取材を受け、「大学の対応は学問の自由を侵害するものである」と非難した。さらに、警察のテロ対策班は、同大学の行為が外国情報機関との協力を禁じる国家安全保障法に抵触する可能性があるとして、捜査を開始するかどうかの検討を始めた。
多数の報告書と国際的影響マーフィー教授はウイグル地域での強制労働とそれが世界的なサプライチェーンに与える影響について多数の報告書を発表しており、これらは国連機関や各国政府に参照されてきた。大学当局は初め、同教授の活動に好意的であったとされる。
しかし、2023年11月から米国土安全保障省の政策顧問として出向していたマーフィー氏が2024年2月に大学に戻った際、大学当局からは強制労働や中国に関する研究を一切許可しないとの通告を受けた。これに対してマーフィー氏は、大学の措置に異議を唱え、弁護士を雇って訴訟を検討した結果、大学側は「行き違いがあった」として謝罪し、研究の継続を認めた。
中国当局の圧力と大学の対応情報公開請求によって明らかになった内部文書によれば、2024年4月と7月に中国の公安当局者が北京にある同大学の事務所を訪れ、マーフィー教授のウイグルに関する研究を中止するよう繰り返し要求していたという。中国外務省は、同大学の研究機関であるヘレナ・ケネディ国際正義センターを「反中勢力の前衛」として批判しており、2022年8月からは同大学のウェブサイトが中国国内から閲覧できなくなった。これにより、同大学の中国人学生の募集活動にも支障が出た。
大学は、これらの圧力に対して、発表予定だったマーフィー教授の研究報告を公開しないことを決定し、2024年9月にはその決定を中国当局に伝えた。その後、同大学のウェブサイトの閲覧制限は解除され、北京の職員に対する脅迫や嫌がらせもなくなり、中国当局との関係が劇的に改善したと報告されている。
学問の自由と国際的な倫理的課題マーフィー教授は、「大学とは知識生産の生命線であり、崇高な責任と使命を帯びている」と述べ、その上で「もし中国当局が再びウェブサイトを遮断したり、大学職員を脅迫したりした場合、大学がどのように対応するのかが心配だ」と語った。また、「今後も研究は続けていく」とも明言した。
一方、シェフィールド・ハラム大学の広報担当者は、産経新聞に対して、研究の中止決定は「中国での商業的利益に基づくものではない」と説明した。また、2024年度に入学した留学生4204人のうち、中国出身者はわずか73人に過ぎないことを強調し、「当大学は職員の学問の自由を守り、必要とあれば断固として擁護する」と述べた。