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JLPT N1 – Reading Exercise 97

JLPT N1 – Reading Exercise 97

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JLPT N1 – Reading Exercise 97
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JLPT N1

#324

JLPT N1 – Reading Exercise 97

自己じこのアイデンティティの役割やくわりは、心理学しんりがくの教科書きょうかしょ的には、社会しゃかいの中で自分じぶんが何者なにものであるかを一貫いっかんして認識にんしきすることだと説明せつめいされる。ある日ひ突然とつぜん、過去かこの記憶きおくや他者たしゃとのつながりをすべて失うしなったことを考かんがえると、それはよくわかる。自己じこについての教科書きょうかしょ的な説明せつめいは、だから個人こじんの性格せいかくや経歴けいれきといった要素ようそそのものの具体的ぐたいてきな説明せつめいである。しかし脳のうにとっての自己じこ情報じょうほうの役割やくわりは、個々ここのエピソードが果はたす役割やくわりとは、違ちがうはずである。脳のうはそうした断片的だんぺんてきな情報じょうほうの共通きょうつうの処理しょり装置そうちでもあるからである。現代人げんだいじんの自己じこ情報じょうほうが脳のうで究極的きゅうきょくてきに処理しょりされて生しょうじる、もっとも重要じゅうようなことはなにか。

私わたしはそれを自己像じこぞうの構築こうちくだと考かんがえる。われわれはだれでも、ある特定とくていの「自分じぶん」という枠組わくぐみを持もっていると思おもっている。その世界せかいでは、SNSで批判ひはんされれば傷きずつき、その痛いたみはしばらく残のこる。スマートフォンの画面がめんをすこし操作そうさすれば自分じぶんの趣味しゅみのコミュニティがあり、そこでは見知みしらぬ人々ひとびとが共通きょうつうの話題わだいで盛もり上あがっているのを見みることができる。そこから別べつのアプリに移動いどうすれば、全まったく異ことなる価値観かちかんを持もつ人々ひとびとの議論ぎろんに触ふれることができ、設定せっていをすこし変かえれば、また別べつの自分じぶんを演えんじられることがわかっている。

こうした身みのまわりの自己像じこぞうは、デジタルツールを使つかわない人々ひとびとでも多おおかれ少すくなかれ、持もっているはずである。たとえば私わたしの祖父そふも、自分じぶんの生いきる範囲はんいで自己じこをそれなりに把握はあくしている。それはどうやら近所きんじょの老人会ろうじんかいとテレビのニュースの範囲内はんいないらしい。そこまでは熱心ねっしんに参加さんかしているのを見みることがあるが、それ以上いじょうのネット上じょうの流行りゅうこうなどには、興味きょうみを示しめしたことがないからである。この祖父そふにスマートフォンを持もたせて、祖父そふの知しらない情報空間じょうほうくうかんへ連つれ出だそうとすると、ひどく混乱こんらんし、元もとの静しずかな生活せいかつへと逃にげ帰かえってしまう。

単純たんじゅんな自己像じこぞうの一ひとつとして、**「1いち」アルゴリズムによる選別せんべつ**を挙あげることができる。ネット上じょうの検索けんさくエンジンは、特定とくていのキーワードに反応はんのうして、その個人こじんの関心かんしんを表示ひょうじする。特定とくていの情報じょうほうの閲覧えつらん頻度ひんどが上あがることは、その個人こじんがその対象たいしょうに執着しゅうちゃくしている可能性かのうせいを意味いみするからである。そこに「いいね」というわずかな反応はんのうが加くわわると、アルゴリズムは関連かんれん情報じょうほうを次々つぎつぎと提示ていじする。うまく提示ていじされれば、利用者りようしゃはその情報じょうほうの渦うずに埋没まいぼつする。そこが自分じぶんの好このみに合あう場所ばしょであり、あとは承認欲求しょうにんよっきゅうが満みたされれば、利用者りようしゃは直ただちにその空間くうかんに依存いぞんし始はじめる。(中略ちゅうりゃく)このように、個体こたいがそれぞれの限かぎられた情報源じょうほうげんから、自己じこの心理的しんりてき安定あんていに必要ひつような自己像じこぞうを作つくっているであろうということは、情報じょうほうの生態学的せいたいがくてきな観点かんてんからも説明せつめいできることである。

われわれ現代人げんだいじんが持もっている自己像じこぞうは、はるかに複雑ふくざつである。しかしそうした自己像じこぞうができあがるについては、アルゴリズムの場合ばあいと根本的こんぽんてきには同おなじように、そこにさまざまな情報じょうほう入力にゅうりょくがあったはずである。それらの入力にゅうりょくは、脳のうで処理しょりされ、しばしば保存ほぞんされる。ネットで検索けんさくしたことも、情報じょうほうとしての入力にゅうりょくである。誰だれかの投稿とうこうを読よめば、文字もじとして目めから入はいってくる。これは視覚系しかくけいからの入力にゅうりょくである。動画どうがを見みれば、聴覚ちょうかくと視覚しかくから同時どうじに入はいってくる。こうしてデジタルデバイスから入はいるものを通とおして、われわれは自分じぶんが何者なにものであるか、その像ぞうを作つくり出だし、把握はあくしようとする。

このようにして把握はあくされた自己じこは、個人こじんの内面ないめんだけに閉とじたものではない。ヒトはさらにネットワークを作つくり出だす。言いい方かたを変かえれば、ネットワークはそうした自己像じこぞうを、できるだけ共通きょうつうのクラスタとしてまとめようとするものである。あるコミュニティの中では、人々ひとびとはしばしば特定とくていの価値観かちかんに対たいする好このみを共有きょうゆうしている。だからその集団しゅうだんは、共通きょうつうの正義せいぎを持もち、人々ひとびとはしばしば共通きょうつうの反応はんのうを示しめす。同おなじハッシュタグの下もとでは、参加者さんかしゃどうしはそうした自己像じこぞうが一致いっちしている場合ばあいが多おおい。さもないとお互たがいに違和感いわかんを抱いだいたり、炎上えんじょうしたりする。特定とくていの自己像じこぞうを構成こうせいし、それを維持いじし、発展はってんさせること、それがデジタル社会しゃかいとサイバー文化ぶんかの役割やくわりである。ネットワークはじつは**「2に」**である。

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