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韓国かんこく映画えいが『ただ、やるべきことを』に見みる現代げんだい社会しゃかいの葛藤かっとう
韓国かんこく映画えいが『ただ、やるべきことを』に見みる現代げんだい社会しゃかいの葛藤かっとう

広告こうこく不況ふきょうの影響えいきょうにより人員整理じんいんせいりを余儀よぎなくされた韓国かんこくの造船所ぞうせんじょを題材だいざいとした映画えいが『ただ、やるべきことを』(パク・ホンジュン監督かんとく)が、1月いちがつ17日じゅうしちにちよりユーロスペース(東京都とうきょうと渋谷区しぶやく)をはじめ全国ぜんこくで順次じゅんじ公開こうかいされている。

本作さくは、誰だれを整理せいり対象たいしょうとするか苦悩くのうする人事じんじ担当者たんとうしゃの姿すがたを通とおして、現実的げんじつてきかつ緻密ちみつに企業内きぎょうないの人間模様にんげんもようを描えがき出だしている。

中堅ちゅうけん造船所ぞうせんじょの若手わかて社員しゃいんカン・ジュニ(チャン・ソンボム)は、新あらたに配属はいぞくされた人事じんじチームで人員整理じんいんせいりを担当たんとうすることとなり、会社かいしゃ幹部かんぶや同僚どうりょう、整理せいり対象たいしょうとなる社員しゃいんらの複雑ふくざつな思惑おもわくや感情かんじょうが交錯こうさくする様子ようすが描えがかれる。

1995年せんきゅうひゃくきゅうじゅうごねん生うまれのチャンは、2013年にせんじゅうさんねんに映画えいが俳優はいゆうとしてデビューした。

ベテラン俳優はいゆうの固定化こていかしたイメージを避さけたいというパク監督かんとくの意向いこうのもと、出演しゅつえんを打診だしんされたチャンは、脚本きゃくほんを読よんだ際さいに「自分じぶんの望のぞむ演技えんぎができる作品さくひんに出会であった」と感かんじたという。

人員整理じんいんせいりという重おもいテーマを扱あつかいながらも、映画えいがでは日常的にちじょうてきな会話かいわや自然しぜんな所作しょさが積つみ重かさねられ、どの企業きぎょうにも通つうじる現実感げんじつかんが表現ひょうげんされている。

チャンは「過度かどに刺激的しげきてきな演出えんしゅつよりも、人々ひとびとの共感きょうかんを得えられる演技えんぎを心こころがけた」と語かたる。

特とくに、世話せわになった上司じょうしまで整理せいり対象たいしょうとなる場面ばめんでは、上司じょうしの家族かぞくからの電話でんわを受うけるシーンで無意識むいしきのうちに涙なみだがこぼれ、同おなじ場面ばめんに居合いあわせた他ほかの俳優はいゆうたちも涙なみだしたという。

「生いきるとは何なにか」という問いといを常つねに胸むねに抱いだきながら、カン役やくに臨のぞんだチャンは、台詞せりふを一語一句いちごいっく暗記あんきしたり細部さいぶの演技えんぎを事前じぜんに決きめたりすることはせず、自然体しぜんたいで役やくに向むき合あった。

その結果けっか、本作さくでの演技えんぎが高たかく評価ひょうかされ、第28回だいにじゅうはっかい釜山国際映画祭ぷさんこくさいえいがさいにおいて俳優賞はいゆうしょうを受賞じゅしょうした。

チャンは「俳優賞はいゆうしょうを受賞じゅしょうした以上いじょう、演技えんぎに悩なやんだと語かたるべきかもしれないが、実際じっさいには結果けっかが良よかっただけだ。

これは謙遜けんそんでも何なんでもない」と率直そっちょくに述のべている。

本作さくは、従来じゅうらいの「労働者ろうどうしゃ対会社かいしゃ・資本家しほんか」といった単純たんじゅんな対立たいりつ構造こうぞうではなく、同おなじ会社員かいしゃいん同士どうしの葛藤かっとうに焦点しょうてんを当あてている。

パク監督かんとく自身じしんが造船会社ぞうせんがいしゃの人事部じんじぶで勤務きんむした経験けいけんが反映はんえいされているが、劇中げきちゅうのある場面ばめんをめぐり、監督かんとくとチャンが唯一ゆいいつ対立たいりつしたという。

それは、2016年にせんじゅうろくねんから2017年にせんじゅうしちねんにかけて実際じっさいに韓国かんこくで起おきた朴槿恵ぱくくね大統領だいとうりょうの弾劾だんがい騒動そうどうを背景はいけいに、カンと恋人こいびとがデモ行進こうしんを見みつめるシーンである。

恋人こいびとがカンをデモへ誘さそう場面ばめんに対たいし、チャンは「この場面ばめんを外はずした方ほうが、より良よい映画えいがになるのではないか」と監督かんとくに強つよく主張しゅちょうした。

チャンは「あの場面ばめんだけは惜おしかった。

弾劾だんがいをめぐる描写びょうしゃが意図的いとてきで政治的せいじてきに感かんじられた」と語かたる。

会社かいしゃが経営維持けいえいいじのため人員整理じんいんせいりを行おこなうことは、やむを得えない現実げんじつであり、チャンは「労働者ろうどうしゃと創業者そうぎょうしゃが完全かんぜんに対等たいとうであることはない。

創業者そうぎょうしゃは投資者とうししゃであり、労働者ろうどうしゃもその一部いちぶである」と冷静れいせいに述のべている。

一方いっぽうでパク監督かんとくも葛藤かっとうし、カンと恋人こいびとが共ともにデモ行進こうしんに参加さんかするシーンも撮影さつえいしたが、最終的さいしゅうてきには映像化えいぞうかしなかった。

監督かんとく自身じしん、「カンは人員整理じんいんせいりをめぐって苦悩くのうし、上司じょうしの理不尽りふじんな指示しじにも従したがった。

しかし、その後のちデモ行進こうしんに参加さんかする場面ばめんを描えがくことで、カンに免罪符めんざいふを与あたえてしまうのではないかと考かんがえた」と説明せつめいする。

韓国かんこく社会しゃかいでは、「保守ほしゅは大企業だいきぎょうや日本にほん・米国べいこくの支持者しじしゃ」「進歩しんぽは労働者ろうどうしゃの味方みかたで朝鮮民族第一主義ちょうせんみんぞくだいいちしゅぎ」という二分的にぶんてきな見方みかたが一般的いっぱんてきである。

パク監督かんとくが「免罪符めんざいふ」と表現ひょうげんしたのは、観客かんきゃくがカンのデモ参加さんかを通つうじて「彼かれも進歩派しんぽはを支持しじしているのか。

つまり人員整理じんいんせいりは本意ほんいではなかったのだ」と受うけ取とってしまうことを懸念けねんしたためである。

もちろん、チャン演えんじるカンは人員整理じんいんせいりに苦くるしみ、望のぞまぬ決断けつだんを強しいられた。

しかし、若わかい世代せだいであるチャンは「人員整理じんいんせいりに反対はんたいする者もの=進歩派しんぽは」というステレオタイプに違和感いわかんを抱いだいたという。

本作さくへの出演しゅつえんを契機けいきに、チャンは芸能事務所げいのうじむしょとの契約けいやくを解消かいしょうし、独立どくりつを決意けついした。

「ドラマや映画えいがは自分じぶんで脚本きゃくほんを選えらびたい。

多おおくの金かねを稼かせぎたいとか名優めいゆうになりたいという欲よくはない」と語かたる一方いっぽう、「つらいことがあればゆっくりやればいい」という言葉ことばには反発はんぱつを感かんじるという。

「美辞麗句びじれいくは若者わかものを弱よわくする。

悪わるい言葉ことばではないが、自分じぶんは海兵隊かいへいたい勤務きんむで忍耐にんたいを学まなんだ」と述のべている。

映画えいがが提示ていじした従来じゅうらいにない視点してんと同様どうように、韓国かんこくの若わかい世代せだいも着実ちゃくじつに変化へんかしつつある。

日本にほんにおいても、韓国かんこくをステレオタイプで判断はんだんすることなく、多様たような視点してんで捉とらえる必要ひつようがあることを、本作さくとチャンの姿勢しせいは示唆しさしている。