JLPT N1 – Reading Exercise 18

#245

Furigana

科学記者かがくきしゃを始はじめた２０年にじゅうねんほど前まえ、記者きしゃの訪問ほうもんを歓迎かんげいしない科学者かがくしゃは、けっして珍めずらしくなかった。「新聞記者しんぶんきしゃとの付つき合あいには何なんのメリットもなく、時間じかんの無駄むだ。記者きしゃと親したしい科学者かがくしゃは、同僚どうりょうからうさんくさい目めで見みられる。真理しんりの探究たんきゅうに没頭ぼっとうする科学者かがくしゃが、記者きしゃなんていう世俗せぞくを相手あいてにしては沽券こけんにかかわる」というわけだ。それが今いまは、まったく違ちがう。科学者かがくしゃも、研究けんきゅうに税金ぜいきんを使つかうからには自分じぶんの仕事しごとを積極的せっきょくてきに世間せけんに説明せつめいするのが当然とうぜんだとみなされ、大学だいがくや研究所けんきゅうじょはメディア戦略せんりゃくを練ねるまでになった。変かわれば変かわるものだ。
（中略ちゅうりゃく）
科学者かがくしゃ側がわの広報こうほうが巧たくみになればなるほど、科学かがくジャーナリズム科学者かがくしゃ集団しゅうだんのたんなる宣伝せんでん係がかりで仕事しごとをした気きになってしまう恐おそれがある。
「サイエンス」や英国えいこくの「ネイチャー」に載のる科学者かがくしゃの論文ろんぶんを、どの新聞しんぶんも毎週まいしゅうのように記事きじにして紹介しょうかいしている。その多おおくが、これらの論文誌ろんぶんしの巧たくみな広報こうほう資料しりょうや研究者けんきゅうしゃの記者発表きしゃはっぴょうをもとにしているのだが、これなどまさに、何なにを社会しゃかいに伝つたえるかは自分じぶんで決きめるというジャーナリズムの要かなめを、科学者かがくしゃ集団しゅうだん側がわになかば預あずけてしまっているのではないか。
自分じぶんでネタ探さがしをするよりも、このほうがたしかに効率的こうりつてきなのだ。
米国べいこくの科学かがくジャーナリズムの教科書きょうかしょには、科学者かがくしゃたちはマスメディアを自分じぶんたちの広報機関こうほうきかんのようにとらえるものだと書かいてある。科学かがくジャーナリズムは、広報こうほう戦略せんりゃくに長たけてきた科学者かがくしゃたちとどう付つき合あっていくべきか。その哲学てつがくと戦略せんりゃくを、こちら側がわも改あらためて肝きもに銘めいじておかなければならない時代じだいになった。
（YOMIURI ONLINE ２０１０年にせんじゅうねん３月さんがつ７日なのか取得しゅとくによる）

Vocabulaire (54)

Romaji

科学

kagaku

記者

kisha

始める

hajimeru

訪問

houmon

歓迎

kangei

珍しい

mezurashii

新聞

shinbun

時間

jikan

無駄

muda

同僚

douryou

目

真理

shinri

探究

tankyu

没頭

bottou

世俗

sezoku

相手

aite

沽券

koken

関わる

kakawaru

研究

kenkyuu

税金

zeikin

使う

tsukau

自分

jibun

仕事

shigoto

積極的

sekkyokuteki

世間

seken

説明

setsumei

当然

touzen

大学

daigaku

研究所

kenkyuujo

戦略

senryaku

練る

neru

変わる

kawaru

広報

kouhou

巧み

takumi

恐れ

osore

宣伝

senden

係

kakari

論文

ronbun

紹介

shoukai

資料

shiryou

発表

happyou

社会

shakai

決める

kimeru

要

you

集団

shuudan

預ける

azukeru

効率的

kouritsuteki

米国

beikoku

教科書

kyoukasho

哲学

tetsugaku

改める

aratameru

肝

kimo

銘じる

meijiru

時代

jidai

Essayez-le!

Romaji

変われば変わるものだとあるが、科学者はどのように変わったのか。

1. 以前は記者を世俗的だと見ていたが、現在はメディアを信頼するようになった。

2. 以前は記者と距離を置いていたが、現在は積極的にメディアとかかわるようになった。

3. 以前は同僚の目を気にしていたが、現在は記者の目をより気にするようになった。

4. 以前は自らメディア戦略を練っていたが、現在は記者の力を借りるようになった。

科学者との関係で、今のジャーナリズムにはどのような問題があるか。

1. 科学者が望む論文を記事にしていない。

2. 科学者が十分満足できる広報をしていない。

3. 科学者から提供された情報をそのまま伝えている。

4. 科学者から提供された情報を十分理解せずに報じている。

この文章で筆者が最も言いたいことは何か。

1. 科学者は、科学ジャーナリズムの立場をもっと理解すべきである。

2. 科学者は、科学ジャーナリズムとの関係のあり方を改めて見直すべきである。

3. 科学ジャーナリズムは、報道内容の決定にあたって主体的であるべきだ。

4. 科学ジャーナリズムは、科学の価値を正しく認めてもらえるよう努めるべきだ。

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