JLPT N1 – Reading Exercise 106

#333
Furigana



100年ひゃくねんほどまえにあたる1900年せんきゅうひゃくねんのとき、地球上ちきゅうじょう人口じんこうはおよそ16億人じゅうろくおくにんであった。それが現在げんざい55億人ごじゅうごおくにんになっている。

わたしたちが金魚鉢きんぎょばち金魚きんぎょだとおもえばよい。3匹さんびき金魚きんぎょ突然とつぜん3.5倍さんてんごばい11匹じゅういっぴきえればみずにごるように、3.5倍さんてんごばい人口じんこうえれば環境かんきょうなんらかのわる影響えいきょうるのは当然とうぜんであろう。「1」この人口じんこうのまままればまだよいのだが、(中略ちゅうりゃく)たいへんないきおいでまだつづけている。1991年せんきゅうひゃくきゅうじゅういちねんでの世界せかい入口にゅうこう増加率ぞうかりつ1.7%いってんななパーセント推定すいていされているが、それで計算けいさんすると、人口じんこう40年間よんじゅうねんかん倍増ばいぞうすることになる。この増大傾向ぞうだいけいこう修正しゅうせいのためには、地球上ちきゅうじょうわたしたち全員ぜんいんの「2」ライフスタイルの見直みなおしが急務きゅうむである。それにはどのような課題かだいがあるのだろうか。

中略ちゅうりゃく

ひとつはわたしたち全員ぜんいん価値観かちかん問題もんだいである。伝統的でんとうてき価値観かちかんとして「子沢山こだくさん」がのぞましいとなす民族みんぞく世界せかいでもすくなくない。わたしたちの民族みんぞくもそうである。子沢山こだくさん祝福しゅくふくする気持きもちがわたしたちのくにでは現在げんざいでもあり、にぎやかな家庭かてい幸福像こうふくぞうえがきがちである。1989年せんきゅうひゃくはちじゅうきゅうねんに、1人ひとり女性じょせいが—-せいのあいだ平均へいきんして何人なんにん子供こどもむかという合計特殊出生率ごうけいとくしゅしゅっしょうりつ1.57いってんごうななになったときに、1.57いってんごうななショックといって大騒おおさわぎになった。「3」そのさわぎも、この価値観かちかん関連かんれんしている。そのときに、子供こども1人ひとりではかわいそうだ、日本にほん将来しょうらい労働力ろうどうりょく減少げんしょうをどうするのか、というような指摘してきがあった。自民族じみんぞく人口じんこう減少げんしょうたいする警戒心けいかいしんはたいへんつよいのである。もちろん、ここではくに民族みんぞくレベルでの議論ぎろんをしているのであって、個別こべつ家族かぞく子沢山こだくさん是非ぜひろんじているのではない。

ふた問題もんだい社会しゃかいシステムの問題もんだいである。とくに貧困ひんこん差別さべつについてかんがえる必要ひつようがある。くに経済力けいざいりょく不足ふそくなどでくに社会保障しゃかいほしょう十分じゅうぶんでないと、老後ろうごなどを心配しんぱいして「4」国民こくみんはある人数にんずう子供こどもをつくろうとする。また、まずしい家族かぞく子供こども家族かぞく労働力ろうどうりょく期待きたいして子沢山こだくさんになる傾向けいこうられる。

さまざまな差別さべつ人口じんこうかかわるライフスタイルに影響えいきょうあたえるが、とくに男女差別だんじょさべつ直接的ちょくせつてき影響えいきょうあたえる。環境かんきょう開発かいはつかんする世界せかい委員会いいんかいがまとめた『地球ちきゅう未来みらいまもるために』(Our Common Future)は女性じょせい地位ちい向上こうじょう子供数こどもすう減少げんしょうにつながると指摘してきしたが、これは大切たいせつ指摘してきであろう。女性じょせい地位ちい向上こうじょうすれば、家族内かぞくないでの子供こどもむかどうかということについて女性じょせい発言権はつげんけん増大ぞうだいし、「5」そのような社会しゃかいにおいては子供こどもかず減少げんしょうする。また、女性じょせい雇用機会こようきかい十分じゅうぶんあたえられている社会しゃかいでは、婚姻年齢こんいんねんれい上昇じょうしょうし、そのことが子供数こどもすう減少げんしょうにつながっているという。

鳥越皓之とりごえあきゆきへん「環境かんきょうとライフスタイル」有斐閣ゆうひかくアルマによる)

Vocabulary (69)
Try It Out!
1
「1」この人口のまま止まればまだよいとあるが、どういう意味か。
1. 人口はまだ勢いよく増えているから環境を守ることができる。
2. 人口の増加率が現在と同じ程度であれば環境への影響はない。
3. 今以上に人ロが増えなければ環境の悪化もそれほどではない。
4. 人口が100年前と同じ16億人であれば環境への影響はない。
2
「2」ライフスタイルの見直しが急務であるとあるが、どうしてライフスタイノレを急いで変える必要があるのか。
1. ライフスタイルを変えれば、入口の増加率を低くしていくことができるから。
2. ライフスタイルを変えれば、人口が増えても環境に悪い影響を与えないから。
3. ライフスタイルを変えれば、食料生産が間に合って生活が豊かになるから。
4. ライフスタイルを変えれば、日本でも子供の数を増やすことができるから。
3
「3」その騒ぎも、この価値観と関連しているとあるが、どういうことか。
1. 日本で1人の女性が一生の問に産む子供の数が減ったことは、子供は要らないという現在の家族観に合致するということ
2. 日本で1人の女性が一生の間に産む子供の数が減ったことは、子供の数が多いほうがよいという伝統的な家族観に反するということ
3. 日本で1人の女性が一生の間に産む子供の数が増えたことは、子供は要らないという現在の家族観に反するということ
4. 日本で1人の女性が一生の間に産む子供の数が増えたことは、子供の数が多いほうがよいという伝統的な家族観に合致するということ
4
「4」国民はある人数の子供をつくろうとするとあるが、どうしてそうするのか。
1. 国全体で老人より若い世代が多いほうが、労働力が豊かでいいと考えるから。
2. 平均寿命が短いため、子供もたくさんつくっておいたほうがいいと思うから。
3. 親が死んだあとに、子供が一人残ってしまうのはかわいそうだと思うから。
4. 何人か子供がいれば、年を取ってから世話をしてもらえると考えるから。
5
「5」そのような社会とあるが、どういう社会か。
1. 夫が子供の数を決められる社会
2. 男女差別がまだ強く残っている社会
3. 妻の意見が尊重される社会
4. 老後の保障が十分でない社会
6
この文章のまとめとして最も適当なものはどれか。
1. 日本の女性が一生の間に産む子供の数が1.57人にまで減ったのは、国や民族の存続に関わる大きな問題だ。
2. 人口の増大傾向を止めるには、子沢山を望ましいとする価値観を変え、貧困や男女差別をなくす必要がある。
3. 家庭内の女性の地位が向上し、女性の雇用機会が十分あれば、男女差別もなくなるし環境問題も解決できる。
4. 地球の環境を守るためには、人ロ増加率をおさえて100年前の16億人程度にまで減らさなければならない。