JLPT N1 – Reading Exercise 107

#334

Furigana

子どもこどもはこれから自分じぶんは大人おとなになっていくのだから、自分じぶんはどうなるのだろうとそれは一生懸命いっしょうけんめいに大人おとなを観察かんさつしている。その大人おとなに魅力みりょくを感かんじれば、あんなふうになりたいと思おもうかもしれない。ほんのちょっとチャーミングなところを認みとめて、ああ失敗しっぱいしても、どじばかりでもいいんだと思おもえることもあるかもしれない。あるいは、僕ぼくはあんな大人おとなにはならないだろうけれど、あんなふうにするのもすてきだなと感かんじることもあるに違ちがいない。とにかく子どもこどもは、「１いち」そんなふうに常つねに大人おとなを見みているのである。

（中略ちゅうりゃく）

子どもこどもはやがて大人おとなになる。その大人おとなに魅力みりょくがなかったら、それは自分じぶんに明日あしたがないと言いわれているのと同おなじことだ。大人おとなになってもつまらなそうだ。楽たのしいことがなさそうだと感かんじたら、君きみの未来みらいはこの程度ていどのものだとつきつけられているのと変かわらない。「２に」これほど子どもこどもにとって不幸ふこうなことはない。

大人おとなはいつも子どもこどもに見みつめられている、子どもこどもが自分じぶんを観察かんさつしているということを自覚じかくしていなければいけないと思おもう。わが身みをつくろって、いいかっこするのではない。正直しょうじきに失敗しっぱいするのなら、子どもこどもより上手じょうずに失敗しっぱいしてみせよう、傷きずつくなら子どもこどもより上手じょうずに傷きずついてみせよう。人生じんせいの先輩せんぱいとしてというより、現役げんえきの子どもこどもに対たいしてベテランの子どもこどもとして、ベテランらしいところを見みせてやろうじゃないか。そういう気概きがいの大人おとながたくさんいれば、子どもこどもたちはきっと大人おとなの世界せかいに魅力みりょくを見みいだすに違ちがいない。それが幸福こうふくな子どもこどもの将来しょうらいにつながるのだと思おもう。

（大林おおばやし宣彦のぶひこ『父ちちの失恋しつれん娘むすめの結婚けっこん－べそっかきの幸福こうふくそうな顔かお』による）