JLPT N2 – Reading Exercise 75

#208
Furigana

以下いかは、あるデザイナーのいた文章ぶんしょうである。

わたしのアイディアのもとは、自分じぶんきてきたみちなかにすべてまっているのだ、というふうにおもっています。いままできてきたなかで、

感動かんどうしたことを現代げんだいかえってくる。過去かこなか感動かんどうしたことをコピーして、それをデザインしているのです。アイディアはいつもひとから、時代じだいからもらう。自分じぶんかんがすことはすくないのです。

わたしは、感動かんどうしたときのシーンはよくおぼえています。いろにおいもかたちひかり季節きせつも、そのときの景色けしきも、そのときそのだれがいたかも、なにべたかも、おもなか鮮明せんめいきざまれています。感動かんどうすると、それくらい記憶きおく装置そうち自動的じどうてきはたらいて、すべてをうつんでいるのです。

中略ちゅうりゃく

中学ちゅうがくころのこと、高校こうこうのあのとき、社会人しゃかいじんになったときのこと、つまたびをしたときの情景じょうけいなどいろいろなシーンがおもされて、それをさかのぼってりにいくわけです。

けれどもそれが、もやーっとしたものだとれない。なぜ、もやーっとするかとえば、こころそこから感動かんどうしていないからです。しっかり感動かんどうしていないと、かえれないのです。

感動かんどうは、自分じぶんちからだけでなく、おやちからだったり、

ともだちのちからだったり、ほかのひとちからによってもつくられています。どものときから大事だいじそだてられたとか、自分じぶんつつんでくれるまちがきちっと大人おとなたちによってうつくしくたもたれていたとか、そういう周囲しゅういちからでつくられている場合ばあいもあるわけです。

そうした感動かんどうおも大切たいせつかえってきて、いまあるものとコラボレーションすると、新商品しんしょうひんまれます。そういう意味いみでは、まるっきりの新商品しんしょうひんなんてありません。アイディアはいつも、そんな過去かこの「感動かんどうもり」のなかからさがしてくるものなのです。

いいおもがたくさんあるかどうか、

いいひとったかどうか、美味おいしいものをべたかどうか。そういうヒト・コト・モノとのよきおもしをどれだけっているかによって、アイディアのりょうわるのです。

水戸岡みとおか鋭治えいじ『あと1%だけ、やってみようーわたし仕事しごと哲学てつがく』による)

もやーっとした:はっきりしない

Vocabulary (78)
Try It Out!
1
感動したことを現代に持ち帰ってくるとは、どのようなことか。
1. 感動したシーンを人に語る。
2. 感動した記憶をデザインに生かす。
3. 過去に流行したデザインをコピーする。
4. 人が感動したことからデザインのヒントをもらう。
2
感動について、筆者の考えに合うのはどれか。
1. 感動は周囲の力でしかつくられない。
2. 感動したことは年を取るにつれて思い出せなくなる。
3. 周囲の力でつくられた感動は記憶に残りやすい。
4. 心の底から感動したことは鮮明な思い出となる。
3
アイディアについて、筆者はどのように考えているか。
1. 記憶が強いほど、アイデアが生まれやすくなる。
2. 他人の力を上手に利用することで、アイディアが商品につながる。
3. 感動した思い出が豊富であるほど、多くのアイディアが生まれる。
4. 感動をヒト・コト・モノに分けて考えると、いいアイディアが生まれる。