Sobre Todaii Japanese
Direitos autorais pertencem à eUp Technology JSC
Copyright@2025
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1日およそ3.7時間。
これはある会社が調査した1日の“耳のすきま時間”(耳が空いていて何かを聴ける時間)の平均です。
ワイヤレスイヤホンやアプリの進化によって、通勤・通学などの移動中、家事や運動の合間にも音楽や本の朗読などを聴けるようになりました。
中には「3倍速で朗読を再生する」という人も…。
音声メディアのサービスの多様化で始まった、“耳のすきま時間”の奪い合いの最前線を取材しました。
“本を読む時間がない!”
都内の医療品メーカーで働く冨山涼太さん(29)。
学生時代は週に1冊のペースで本を読んでいましたが、仕事に家事、それに育児が忙しく、なかなか読書の時間を取れないことが悩みでした。
そこで6年前から活用しているのが、書籍の朗読を聴くことができるサービス。
小説からビジネス書まで数万点が配信されています。
このサービスを提供している会社によると、ワイヤレスイヤホンが普及したコロナ禍前の2019年前後に大きく増え、利用者数はこの10年で35倍の300万人を超えました。
冨山さんは、通勤やジョギング、洗い物などの家事の最中にスマートフォンでこのアプリを使っていると言います。
朗読のスピードも自由に変えられることから3倍速で再生することも。
動画は2倍速で見ることもある私が試しに聴かせてもらうと、正直かろうじて聴き取れるくらいでしたが、慣れると十分理解できるそうです。
冨山さんは直近1年間で200冊余りを聞くことができたと話します。
冨山涼太さん
「何かをしながらついでにできるという部分があるので、家族の時間も作りつつ、自己研さんもできるという意味ですごく便利だと思います」
ビジネス書以外にも小説を聴くという冨山さん。
物語に集中すると、感動のあまり通勤中の電車の中で涙を流すこともあったほどだと言います。
冨山涼太さん
「活字は意識しないと読めないですけど、耳で聴くときは慣れてしまえば自動的に映像がイメージできます。僕にとっては身近で当たり前の存在だと思います」
紙、電子に続く“第3の書籍”とも言われるこのサービス。
提供している都内の会社では、より魅力的なコンテンツを増やそうとさまざまな工夫を凝らしています。
収録の現場を訪ねると、小野不由美さんの人気ファンタジー小説「十二国記」の制作が行われていました。
迫力あるセリフを読み上げていたのは、「美少女戦士セーラームーン」の水野亜美や、「ドラゴンボール超」のブルマなどで知られる声優の久川綾さん。
「十二国記」のアニメ版でも主人公の声を担当していて、配信開始に向けてファンの期待も大きいと言います。
久川さんは音声読書のサービスで朗読を担当するのは今回が初めてで、アクセントや読み方の練習に1冊でおよそ30時間かけるほど丁寧に作り込んだということです。
声優 久川綾さん
「文字を見ない人に届けるにはどうしたらいいかということで、自分が情景を思い浮かべながら丁寧にゆっくりとしゃべりました。活字が好きで作品を聴いた方は音声の世界を楽しめるかもしれませんし、音声で初めて作品を知った方が小説を読んでみるといった、いろいろな楽しみ方があると思います」
ほかにも、ユーザーの興味を引くためのさまざまな工夫が始まっています。
例えば去年の「本屋大賞」に選ばれた、宮島未奈さんの小説「成瀬は天下を取りにいく」。
舞台は大津市ですが、作中に登場する祭りの音頭は地元の団体から実際の音源を借りたほか、実在するスーパーマーケットのBGMも取り寄せて使用されています。
ラジオドラマさながらのこだわりで、中には半年かけて制作する作品もあると言います。
オトバンク 制作本部 礒嵜孝太さん
「文字に音声をつけるということで、ユーザーに対しても立体的なアプローチというか、音声を流すだけでその場所やシーンにワープさせられる、想像力をかき立てるような作り方を心がけています」
“耳で聴く読書”によってすそ野が広がるなどと好意的に受け入れる作家も増えていて、紙の書籍と同時に作品を配信したり、音声で先行して公開したりする動きもあるということです。
動画からテキストのコンテンツまで、スクリーン上で目を使う時間の奪い合いは日々、激化しています。
こうした中で、この会社では“耳のすきま時間”の獲得競争が今後さらに広がるとみて、配信する作品を増やしていきたいと言います。
オトバンク 上田渉 会長
「もともと祖父が緑内障で、そういった人を助けたい、聴く文化を広げたいという思いで創業しました。目の時間は動画のサービスも多く奪い合いのような部分がありますが、耳の時間はまだ開拓が進んでいません。音声コンテンツの市場自体もどんどん拡大していくのではないかと思いますし、サービスの普及に努めていきたい」
一方で、“一般の人の声”だからこそ、リアルで魅力があるということに注目した音声メディアのサービスも始まっています。
練馬区の小学校教師、二川佳祐さん。
取材に訪れると、スマートフォンに向かって語りかけていました。
「きょうの本題です。学校の役割って考えたことありますか。僕はもう17年間学校にいますけど、学校の果たす役割っていろいろあるなと思っています。そのうちの1つに伝統の継承というものがあると思っています」
二川さんは実は、およそ2000人のリスナーがいる人気のパーソナリティー。
現役教師として感じていることを日々ことばにして伝えています。
2016年にサービスが始まったこの音声プラットホーム「Voicy」では、医師や僧侶、サラリーマンに主婦まで、さまざまな人たちが音声の配信を行っています。
審査を通過した人のみが配信でき、1回あたりの配信時間は10分ほど。
サービスの登録者数は年々増えて250万人を突破し、配信者のチャンネル数は2000以上に上ります。
すでにおよそ600回配信していると言う二川さんはリスナーとともに教育界を盛り上げたいと語ります。
小学校教師 二川佳祐さん
「いくらいい授業をしてもその先生が眉間にしわを寄せていたら僕はあまりハッピーではないと思います。先生たちを勇気づけるとか、みんなで頑張ろうということを届けたいですし、僕は横で一緒に走っているような感覚です」
ことし4月都内で行われた、教育関係の人気パーソナリティーが登壇したイベントには、およそ300人が集まりました。
その多くが教員で、中にはペンライトやうちわを手にする人もいるほどの熱狂ぶり。
二川さんも登壇し、不登校などのテーマについてリスナーと一緒に議論を展開しました。
参加した教員
「教員としても学びが多いです。二川先生には、生き方から学校を楽しむためのコツまで教えてもらっています。朝の通勤前に音声を公開してくださるので、聴きながら学校に通っています」
「Voicy」の担当者は、サービスのニーズについて次のように話していました。
Voicy 長谷部祐樹さん
「より身近で、少し頑張ったら追いつけるかもしれないとか目指せるかもしれないという方々の考えとか声を聴いてみたいというニーズがあるのだと思います。今後、著名人に限らず、いろいろな方が声で発信し、自分を届けていくということが、より重要視されていくと考えています」
最新のデジタル技術を使った音声コンテンツも登場しています。
書籍の朗読サービスを手がけるAudibleでは、ことし3月、俳優の黒柳徹子さんの自伝的な物語、「続 窓ぎわのトットちゃん」の配信を始めました。
全編を通してあの親しみのある黒柳さんの声で朗読されていますが、実は黒柳さんが実際に読んだのは第1章の1時間半余りのみ。
その後の第2章から5章までは、黒柳さんの監修のもと、最新の音声合成技術で再現されたデジタルナレーションだと言います。
黒柳さんは「技術の進化には本当に驚かされます。私の戦時中の体験をいちはやく皆さんと共有できることを光栄に思います」などとコメントしています。
さらにGoogleはことし4月、AIによる要約などを行うサービス「NotebookLM」について、50以上の言語で「音声概要」という機能をリリース。
文章を読み込ませると、それらを要約しつつ、会話風にかけあう音声として聴くことができる機能が追加されました。
わずか数分で読み込んだ文章を元にしたラジオ番組のような音声コンテンツができてしまうというこのサービス。
「テキストの記事を読むのはちょっと大変、でも音声なら気軽に聴いてみたい…」と思っている人たちには便利なツールになっていきそうです。
動画や記事など目を使うサービスと同じように、耳を使うサービスも次々と誕生し、その中での時間の奪い合いが始まっています。
若者のトレンドや背景に詳しい稲田豊史さんは、「今の若者は効果的に時間を使いたいタイパ=タイムパフォーマンスを求める人も多いです。耳で聴くという部分については、もっと有効に時間を使いたい人たちの心を捉えているのではないか」と話しています。
一方で、じっくりコンテンツに触れたいという人にとってもまた、音声メディアはぴったりだと指摘する専門家も。
「Screenless Media Lab.」のリサーチフェローを務める、塚越健司さんは「映像に比べて音声は長時間触れていてもストレスが少なく、長く聴けるので、情報量や理解力も高まるし、話し手のパーソナリティー・人間性に触れやすい」と話しています。
ますます本格化する“耳のすきま時間”の獲得競争によって、今後どのようなサービスが生まれるのか。
注目していきたいと思います。
(取材: 科学文化部記者 堀川雄太郎 / 首都圏局ディレクター 磯貝健人)