映画『国宝』に登場したことを契機に、岡山市中区に所在する伝統的な日本家屋が、ファンの間で“聖地巡礼”の対象として注目を集めている。この家屋は、矢吹四郎氏(83歳)が所有する数寄屋造りの邸宅であり、約四十年前に建築された。その格式ある佇まいが評価され、劇中では名門歌舞伎一家・花井家の屋敷として用いられ、主人公・喜久雄(吉沢亮)とそのライバル俊介(横浜流星)が対峙する重要な場面の舞台となった。
もともと矢吹家が生活していたこの住居は、子どもたちの独立を機に空き家となっていたが、映画好きである次男・正志氏が地元フィルムコミッションへの登録を行ったことをきっかけに、ロケ地として活用されるようになった。
今回の映画で初めて本格的に映像作品へ提供されたことは、家族にとっても大きな出来事であったに違いない。
映画公開以降、この場所には県外からも多くのファンが訪れ、週末には自動車で訪問する人々や、写真撮影を楽しむ若者の姿が見られる。また、庭園の見学を希望する来訪者も少なくないという。こうした現象は、映画の影響力の大きさを示すものと言えるだろう。
矢吹親子は、自宅が映画の舞台として選ばれたことに対し誇りを感じており、作品も繰り返し鑑賞しているとのことである。「自分たちの家が映画に映るのは不思議な体験だ」と語りつつ、今後もこの場所が映像作品に利用されることを期待している。
現在、見学は外観のみ許可されているが、訪問の際には近隣住民への配慮が求められている。映画の雰囲気をそのまま体感できる場所として、この伝統家屋は、今後も多くの人々を惹きつけ続けるに違いない。