JLPT N1 – Reading Exercise 49
A
近年、子どもの読書離れが問題視されている。これに対し、読書量の減少はデジタル機器の普及によるものであり、情報収集の手段が多様化した結果だという意見もある。一方で、読書体験が思考力や想像力の発達に不可欠だとする立場も根強い。
確かに、幼少期の読書経験は言語能力や感受性の基礎を築く。しかし、実際に子どもの読書の様子を観察すると、物語の展開や登場人物の行動にしか関心を示さないことが多い。子どもの好奇心に任せるだけでは、深い読解力は育ちにくい。そのため、読書をより実りあるものにするには、大人が問いかけや対話を通じて、物語の背景や作者の意図に目を向けさせることが重要だ。
B
物語の世界に没頭して時間を忘れる子や、主人公の気持ちに共感して涙する子は、その読書体験の中に、その子自身の成長や可能性が秘められている。「なぜその場面が心に残ったの」と問いかければ、彼らは自分なりの理由を持って答えるだろう。彼らの学びは、すでに始まっているのである。
読書を通じて、現実世界と物語世界を行き来しながら、自分なりの価値観や意味を構築していく中で、「他者理解」や「自己認識」も深まっていく。それに伴い、「共感力」や「多様な視点を受け入れる心」も育まれていくだろう。そう考えるとき、物語から自分なりの意味を見いだすこと、実感を伴った読解が行われることを抜きにして、「他者理解」や「共感」について語ることはできないだろう。