JLPT N1 – Reading Exercise 52
現代社会において「変化を恐れる心」は、多くの人が無意識のうちに抱えている課題である。現状に満足し、今のままで十分だと思った瞬間から、個人も組織も成長が止まってしまう。しかし、社会の外側では絶え間ない変革が進行しており、立ち止まること自体が最大の危険となる。もはや、安定や安心といった言葉は保証されていない。自分自身の人生をどう築くのか、組織をどのように進化させるのか、社会の未来をどう描くのか――一人ひとりが現実を直視し、志を持って日々を真剣に生きなければ、望む未来は訪れない。
こうした話をすると、多くの人は次のように考えるだろう。
「具体的に何をすればいいのか、もっと明確に示してほしい」
つまり、手本やマニュアルがなければ、行動の指針を見出せないという不安があるのだ。
だが、置かれている状況は人それぞれ異なり、最適な行動も当然異なる。ある人にとって有益な方法が、別の人には逆効果となることもある。私はそもそも、マニュアル本の類いをまったく信用していない。そこに書かれているのは、過去の成功体験に過ぎない。もしそれを参考にして新たな方法を生み出すなら意味があるが、単に過去のやり方を模倣しても、時代の変化には対応できない。情報が瞬時に世界を巡る現代では、そうした成功法則はすぐに古びてしまうのだ。
ただし、時代がどう変わろうと普遍的に通用する「思考の枠組み」は存在するかもしれない。もちろん、それすらも時代の流れに影響される。しかし、自分自身の視点を持つか否かで、同じ現実もまったく異なるものとして映るのである。