JLPT N1 – Reading Exercise 72
「都市の夜景写真は、現代社会において極めて人気のあるジャンルである。国内外を問わず、多くの写真家が都市の光を被写体として選んでいる。夜景が象徴するものは人によって異なるだろうが、私個人としてはそれらに心を動かされることはほとんどなかった。
なぜか。
多くの人が都市の夜景を眺めるとき、感じることは大体似通っている。煌びやかさ、活気、あるいは孤独感といった典型的なイメージで都市を語り、その光景を「特別な思い出」として心に刻む。そして、夜景写真家たちの多くもまた、同様のイメージを写真に焼き付け、狭い市場で繰り返し消費されている例が多い。
しかし、本来都市の夜景が映し出すものは、もっと限定的ではなく、流動的で不確定な現象として捉えられてもよいのではないか。見る者の心に残る都市のイメージやその表現は、より多様であるべきだと考える。
「自然の静寂」に対して、「都市の喧騒」が対比されることが多いが、本当に都市は常に騒がしいのだろうか。
一写真家として私は思う。都市の夜は静かである、と。それは、深夜の交通量の減少や、ビルの明かりが一つずつ消えていく様子など、表面的な賑わいの裏で、都市が絶えず変化していることを意味する。遠くから見ると同じように見える夜景も、実際には人々の営みや感情、経済活動の変化によって、刻一刻と表情を変えている。そうした細かな変化、無数の個人の物語が交錯し続ける現場こそが「都市の夜」なのである。
都市論では多様性がしばしば語られるが、夜景写真における都市のイメージがなぜこれほどまでに画一的なのか。
それは、都市の夜の変化に気づくほど、私たちが都市を観察していないことに起因するのかもしれない。表層的な光や賑わいだけを見て、都市の本質的な変化に目を向けていない。
長年都市に住んできた写真家でさえも、その作品は先述した枠を超えることは稀である。思うに、そうした者は都市への憧れや理想像が先行し、現実の都市の多面性を十分に表現しきれていないのかもしれない。