JLPT N2 – Reading Exercise 24
自分で何かを手作りしてみると、それが完成するまでにどれほどの時間と労力が必要か、身をもって知ることができる。材料を選び、形を整え、細かい部分まで丁寧に仕上げるには、想像以上の根気と集中力が求められる。さらに、思い通りにいかないことも多く、何度もやり直すこともある。既製品のように簡単にできるものではなく、職人の技術や経験、そして心が込められているのだと実感する。
そうすると、例えば店で売られている手作りの品物の値段を見たとき、「これまでとは違った見方になってくる。」ただ安ければいいという考え方ではなくなる。
価格は、現代社会において物の価値を示す一つの基準である。安いということは、その品物の価値を低く見ていることになる。心を込めて作られたものに安い値段がつけられてしまうと、作り手としてはとても残念な気持ちになるのは当然だろう。
手作り品のように、私たちの暮らしに彩りや温かさを与えてくれるものまで、単なる商品として安さだけを競わせてしまって本当にいいのだろうか。作り手の思いが込められた品物を、値段だけで判断してしまってよいのだろうか。
もし職人や作り手が、良いものを作ろうという気持ちを失ってしまったら、最終的に困るのは私たち消費者である。手間と時間、そして心のこもった品物に対して正当な対価を払っていると思えば、ただ安いものを選ぶという安易な考えにはならないはずだ。
だから、私が運営している「手仕事工房つむぎ」では、他店と値段を競い合うつもりはない。もちろん、市場価格を参考にはするが、基本的には作り手自身に価格を決めてもらい、そのうえで販売価格を設定している。
一方で、お客様には、なぜその価格になるのか、きちんと説明できるようにしている。
どのような工程で作られているのか。どんな工夫や特徴があるのか。素材はどこから仕入れているのか。
(中略)
今、小売店が果たすべき役割は大きいと思う。小売店は作り手との信頼関係を築き、その信頼を消費者に伝える役割を持つ。一方で、消費者の声や商品の評価を作り手に伝えていく。こうすることで、消費者の手仕事への理解が深まり、最終的には豊かな暮らしと文化が守られていくのである。