JLPT N2 – Reading Exercise 70
この話を始める前に、「集中力は有限である」という、ごく当然のことを確認しておきたい。人間が一日に使える集中力には限りがあり、無限に働き続けることはできない。
「長時間働けば成果が上がる」と考える人もいるだろう。しかし、必要な休息や睡眠を削って無理をすると、かえって効率が落ちてしまう。好きなことをしているときは、多少睡眠を減らしても苦にならないかもしれないが、仕事や勉強のために休憩を削るのは、(1)なかなか続けられるものではない。
では、どうすれば仕事や勉強の質を高められるのか。大きく分けて二つの方法がある。
一つは、「浅い作業を減らす」ことである。もし大切なプロジェクトに集中したいなら、関係のない雑務やSNSのチェックなどを減らせばよい。これは決して、食事や入浴、短い休憩の時間まで削れという意味ではない。(2)何となく過ごしてしまう浅い作業の時間を減らせばよいのだ。
(中略)
一日に音楽を聴いたり、お茶を飲んだりするなど、ある程度の趣味やリラックスの時間は必要だろう。しかし、すべての趣味に十分な時間を割くのは現実的ではない。だからこそ、自分にとって本当に大切な「エネルギーを充電する時間」を二つか三つ選び、それ以外は減らす必要がある。
二つ目の方法は、(3)「集中の密度を高める」ことである。集中の密度を高めるとは、2時間で深く考えて成果を出すのと、8時間だらだらと作業するのとでは、密度が大きく異なるということだ。「できる」人は、長時間働いているように見えなくても、短時間で高い集中を発揮し、他の人の何倍もの成果を上げているはずだ。
ここで注目したいのが、(4)一見ムダに見える趣味や休憩の効果である。たとえば、30分だけ音楽を聴く、好きな紅茶をゆっくり味わうなど、こうした「充電」の時間があることで、その後の2、3時間の集中力が大きく高まるなら、それはムダな時間ではなく、むしろ投資の時間と言える。
(___5___)、集中力をうまく使うには、自分でいろいろと試しながら、どんな過ごし方が一番集中できるか、何が本当に必要な「充電」かを見極めていく必要がある。自分で試しつつ、どうしたら集中の密度を高められるか、何がムダで何がムダでないかを判断できるようになれば、限られた集中力を最大限に活かすことができる。そして、一度こうした力を身につけておけば、一生、深い仕事ができる人になれるのである。
(注1)浅い作業:集中せずにできる簡単な仕事や作業
(注2)充電:エネルギーや集中力を回復すること