日本新闻: 「決闘する恐竜きょうりゅう」化石かせきが示す新知見――ティラノサウルス幼体説の再考と分類学的再評価

米国べいこくノースカロライナ州しゅうローリーのノースカロライナ自然しぜん科学かがく博物館はくぶつかんに所蔵しょぞうされている「決闘けっとうする恐竜きょうりゅう」と呼よばれる伝説的でんせつてきな化石群かせきぐんは、先史時代せんしじだいの激はげしい闘争とうそうの末すえ、互たがいに絡からみ合あったまま化石化かせきかしたと考かんがえられる二体にたいの恐竜きょうりゅうの骨格こっかくを含ふくんでいる。これまで古生物学者こせいぶつがくしゃの間あいだでは、世界的せかいてきに著名ちょめいなトリケラトプスとティラノサウルス・レックスの壮絶そうぜつな対決たいけつを記録きろくしたものとされてきた。しかしながら、過去かこ5年間ねんかんにわたる詳細しょうさいな研究けんきゅうの結果けっか、従来じゅうらいの認識にんしきに大おおきな修正しゅうせいが迫せまられている。

最新さいしんの調査ちょうさによれば、この化石群かせきぐんに含ふくまれる小型こがた恐竜きょうりゅうは、ティラノサウルス・レックスの幼体ようたいではなく、長年ながねん論争ろんそうの的まととなってきた別種べっしゅ、ナノティラヌス・ランケンシスの成体せいたいである可能性かのうせいが高たかいことが明あきらかになった。骨ほねの微細構造びさいこうぞうに見みられる成長せいちょう記録きろくからも、該当がいとう個体こたいが既すでに成体せいたいであったことが示唆しさされている。これにより、従来じゅうらいティラノサウルス・レックスの幼体ようたいと誤認ごにんされてきた多おおくの化石かせきについて、再評価さいひょうかが不可欠ふかけつであると指摘してきされている。

ナノティラヌスは外見がいけんこそティラノサウルス・レックスと類似るいじしているものの、全長ぜんちょう約やく5,5メートルと比較的ひかくてき小型こがたで、長ながい脚あしと強靭きょうじんな腕うでを持もち、俊敏しゅんびんな捕食者ほしょくしゃであったとされる。一方いっぽうで、ティラノサウルス・レックスは全長ぜんちょう12,8メートルに及および、強大きょうだいな咬合力こうごうりょくを活いかして大型おおがたで動うごきの鈍にぶい獲物えものを仕留しとめていた。特筆とくひつすべきは、ナノティラヌスの上肢じょうしが、成体せいたいのティラノサウルス・レックスのものよりも大おおきかった点てんであり、成長過程せいちょうかていで骨ほねが縮小しゅくしょうすることはないことからも、両者りょうしゃが別種べっしゅであることは明白めいはくだとされる。

ノースカロライナ州立大学しゅうりつだいがくのザンノ准教授じゅんきょうじゅは、過去かこ30年間ねんかんにわたりティラノサウルス・レックスの生物学的せいぶつがくてき研究けんきゅうにおいて、ナノティラヌスのデータが無意識むいしきのうちに混同こんどうされてきた事実じじつを指摘してきし、今回こんかいの発見はっけんを契機けいきに従来じゅうらいの知見ちけんの再検証さいけんしょうが求もとめられていると述のべた。「決闘けっとうする恐竜きょうりゅう」の化石かせきは2006年ねんに、約やく6550万年前まんねんまえのヘルクリーク層そう（米べいモンタナ州しゅうなど）から発見はっけんされたものである。

ナノティラヌス・ランケンシスは、1940年代ねんだいに同おなじ地層ちそうから発掘はっくつされた標本ひょうほんに基もとづき初はじめて記載きさいされたが、その後ご、これらの小型こがたティラノサウルス類るいがティラノサウルス・レックスの幼体ようたいであるという見解けんかいが主流しゅりゅうとなっていった。そのため、別種べっしゅの存在そんざいを支持しじする意見いけんは次第しだいに減少げんしょうしたものの、学術的がくじゅつてきな議論ぎろんは続つづいていた。今回こんかい、200点てんを超こえるティラノサウルス類るいの化石かせきを比較検証ひかくけんしょうした新研究しんけんきゅうによって、幼体ようたいのティラノサウルス・レックスの化石かせきが従来じゅうらい考かんがえられていたほど一般的いっぱんてきではなかった可能性かのうせいが示唆しさされた。

この発見はっけんは、異ことなる捕食者ほしょくしゃが恐竜きょうりゅう時代じだいの終焉期しゅうえんきにおいてどのように生態系せいたいけいに関与かんよしていたのか、という新あたらたな疑問ぎもんを投なげかけている。米べいオハイオ大学だいがくのウィトマー教授きょうじゅは、今回こんかいの研究成果けんきゅうせいかが単たんなる分類論争ぶんるいろんそうの解決かいけつにとどまらず、過去かこ数十年すうじゅうねんにわたる関連研究かんれんけんきゅうや論文ろんぶんの根本的こんぽんてきな見直みなおしを迫せまるものであると指摘してきした。さらに、英えいエディンバラ大学だいがくのブルサット教授きょうじゅも、ティラノサウルス類るいの分類ぶんるいと進化しんかの再評価さいひょうかが不可欠ふかけつであると述のべている。

ブルサット教授きょうじゅは、すべての小型こがたティラノサウルス類るいをナノティラヌスと断定だんていすることには慎重しんちょうな姿勢しせいを示しめしつつも、今後こんごの古生物学的こせいぶつがくてき研究けんきゅうにおいて、成体せいたいまたは成体せいたいに近ちかいナノティラヌスと幼体ようたいのティラノサウルス・レックスを区別くべつすることが一層いっそう重要じゅうような課題かだいとなると付つけ加くわえた。なお、「決闘けっとうする恐竜きょうりゅう」の化石かせきは現在げんざいも一部いちぶが岩石がんせきに埋うまった状態じょうたいであり、なぜ二体にたいが絡からみ合あったまま発見はっけんされたのかについては、依然いぜんとして明あきらかになっていない。

「決闘けっとうする恐竜きょうりゅう」化石かせきが示しめす新知見しんちけん――ティラノサウルス幼体ようたい説せつの再考さいこうと分類学的ぶんるいがくてき再評価さいひょうか

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