日本新聞: 停戦のガザ地区医療施設被害でコロナ感染拡大が新たな脅威に

中東ちゅうとうパレスチナのガザ地区ちくではイスラエルとパレスチナの武装ぶそう勢力せいりょくの間まで停戦ていせんとなり、空爆くうばくなどによる攻撃こうげきで市民しみんが命いのちを落おとす危険きけんはなくなりました。しかし、新型しんがたコロナウイルス対策たいさくの拠点きょてんとなっていた医療いりょう施設しせつなどが攻撃こうげきの被害ひがいを受うけていて、今後こんご、感染かんせんの拡大かくだいが新あらたな脅威きょういとなっています。

イスラエルとガザ地区ちくを実効じっこう支配しはいするイスラム原理げんり主義しゅぎ組織そしきハマスの間までは、今月こんげつ10日にち以降いこう、空爆くうばくやロケット弾だんによる攻撃こうげきの応酬おうしゅうとなりましたが、エジプトなどの仲介ちゅうかいで21日にちから停戦ていせんとなり、これまでのところ、攻撃こうげきは行おこなわれていません。

停戦ていせんによってガザ地区ちくでは、イスラエル軍ぐんによる攻撃こうげきで市民しみんが命いのちを落おとす危険きけんはなくなりましたが、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいが新あらたな脅威きょういとなっています。

ガザ地区ちくで新型しんがたコロナウイルス対策たいさくの中核ちゅうかくを担になってきた医療いりょう施設しせつや、ワクチンの接種せっしゅ会場かいじょうとなっていた診療しんりょう所しょが攻撃こうげきの被害ひがいを受うけ、感染かんせん者しゃの治療ちりょうや接種せっしゅの態勢たいせいを縮小しゅくしょうせざるをえなくなっています。

また、国連こくれんが運営うんえいする学校がっこうの施設しせつには攻撃こうげきのさなか、住宅じゅうたくに被害ひがいを受うけた人ひとなどおよそ7万まん人にんが避難ひなんし、マスクの供給きょうきゅうもない中なか、「密閉みっぺい・密集みっしゅう・密接みっせつ」のいわゆる「3密みつ」で生活せいかつし、さらに地区ちくの半数はんすうの水道すいどう管かんも被害ひがいを受うけていることから、衛生えいせい環境かんきょうが悪化あっかしています。

攻撃こうげきが始はじまる前まえ、ガザ地区ちくでは人口じんこう200万まん人にんのうち、10万まん人にん余あまりが感染かんせんし、イスラエルが止とめていたワクチンが運び込はこびこまれ、ことし2月つき後半こうはんから接種せっしゅが始はじまりましたが、接種せっしゅを終おえた人ひとは3万まん9000人にんにとどまっています。

ワクチンは攻撃こうげき前まえにWHO＝世界せかい保健ほけん機関きかんなどが主導しゅどうする「COVAXファシリティ」や、UAE＝アラブ首長しゅちょう国こく連邦れんぽうを通をつうじて提供ていきょうを受うけていましたが、攻撃こうげきの間ま、接種せっしゅは行おこなわれませんでした。

ガザ地区ちくの保健ほけん省しょうによりますと、攻撃こうげきのさなかは検査けんさなどが行おこなわれず、新あらたな感染かんせん者しゃ数すうは減少げんしょうしましたが、停戦ていせん後ご、検査けんさが再開さいかいすると感染かんせん者しゃ数すうが再ふたたび増加ぞうかしていて、今後こんご、感染かんせんのさらなる拡大かくだいが懸念けねんされています。

感染かんせん対策たいさくにあたっていた医師いしが攻撃こうげきで死亡しぼう

ガザ地区ちくでは、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん対策たいさくの中核ちゅうかくを担になっていた医療いりょう機関きかんにもイスラエルの攻撃こうげきによる被害ひがいが出でています。

北部ほくぶのガザ市しにあるリマル診療しんりょう所しょは、ガザ地区ちく最大さいだい規模きぼの医療いりょう機関きかんで、攻撃こうげき前まえ、新型しんがたコロナウイルスに感染かんせんした患者かんじゃの治療ちりょうやPCR検査けんさを行おこなうなど感染かんせん対策たいさくの中核ちゅうかくを担になっていました。

しかし、今月こんげつ17日にち、隣となりの建物たてものが空爆くうばくされたことで診療しんりょう所しょも大おおきな被害ひがいを受うけ、医療いりょう活動かつどうをすべて停止ていしせざるをえなくなりました。

また、ガザ地区ちくの保健ほけん省しょうによりますと、感染かんせん対策たいさくにあたっていた2人にんの医師いしが攻撃こうげきで死亡しぼうし、複数ふくすうの病院びょういんも被害ひがいを受うけ、部分ぶぶん的てきに医療いりょう活動かつどうができなくなっているということです。

ガザ地区ちく保健ほけん省しょうで国際こくさい機関きかんなどとの調整ちょうせいを担当たんとうするメドハット・アッバス氏しは「医療いりょう機関きかんへの被害ひがいは、今後こんごの新型しんがたコロナ対策たいさくに大おおきな影響えいきょうを与あたえる。今後こんごは感染かんせんが拡大かくだいするおそれがある」と述のべ、懸念けねんを示しめしていました。

ワクチン接種せっしゅ会場かいじょうも被害ひがい

イスラエルによる攻撃こうげきでガザ地区ちくのワクチン接種せっしゅ会場かいじょうも被害ひがいを受うけ、今後こんごの接種せっしゅへの影響えいきょうが懸念けねんされています。

北部ほくぶのベイトラヒヤにある診療しんりょう所しょは、北部ほくぶで唯一ゆいいつのワクチン接種せっしゅ会場かいじょうで、攻撃こうげきが始はじまる前まえには、1万まん回かいを超こえる接種せっしゅを行おこない、ガザ地区ちく全体ぜんたいの接種せっしゅの3分ぶんの1を担になっていました。

しかし、この診療しんりょう所しょも攻撃こうげきによる被害ひがいを受うけ、建物たてものの内部ないぶは黒くろく焦こげ、床ゆかには新型しんがたコロナウイルスの検査けんさキットが散乱さんらんしていました。

また、攻撃こうげきで保管ほかんしていたイギリスの製薬せいやく会社かいしゃアストラゼネカなどが開発かいはつしたワクチンや、ロシア製せいのワクチン、少すくなくとも400回分かいぶんが使つかえなくなり、診療しんりょう所しょではPCR検査けんさやワクチンの接種せっしゅを中止ちゅうししています。

診療しんりょう所しょ代表だいひょうのハーシェム・アブハーシム医師いしは「2回かい目めの接種せっしゅを予定よていしていた人ひともいましたが、診療しんりょう所しょが被害ひがいを受うけたことでできなくなってしまいました。接種せっしゅを続つづけるため、ほかの施設しせつで行おこなう必要ひつようがありますが、そうした施設しせつも被害ひがいを受うけています。ワクチン接種せっしゅが滞とどこおることで、感染かんせんが拡大かくだいするのではないか非常ひじょうに心配しんぱいしています」と話はなしていました。

22日にちには、ガザ地区ちくを訪おとずれた国連こくれんの代表だいひょうがこの診療しんりょう所しょを訪おとずれ、被害ひがい状況じょうきょうなどを確認かくにんしていました。

国連こくれんのヘイスティングス副ふく特別とくべつ調整ちょうせい官かんは「衝突しょうとつ前まえから感染かんせん状況じょうきょうを懸念けねんしていたにもかかわらず、地区ちくの3分ぶんの1の接種せっしゅを担になっていた施設しせつが被害ひがいを受うけたことで、ガザ地区ちくでの感染かんせん対策たいさくに大おおきな影響えいきょうを与あたえる」と述のべて、攻撃こうげきによってガザ地区ちくでの感染かんせん対策たいさくに遅おくれが出でることへの懸念けねんを示しめしました。

避難ひなんで「3密みつ」に今後こんごの感染かんせん拡大かくだいに警戒けいかい感かん

ガザ地区ちくでは攻撃こうげきの間ま、空爆くうばくで住すむ家いえを失うしなった人ひとやさらなる空爆くうばくを警戒けいかいして避難ひなんする人ひとたちが国連こくれんが運営うんえいする学校がっこうに避難ひなんし、最もっとも多おおいときにはおよそ7万まん人にんが身みを寄よせていました。

しかし、校舎こうしゃのスペースにはかぎりがあり、1つの教室きょうしつに50人にんが生活せいかつするなど、いわゆる「3密みつ」でソーシャルディスタンスなどの対策たいさくはとれず、マスクも不足ふそくしていたということです。

これについて、パレスチナ難民なんみんを支援しえんするUNRWA＝国連こくれんパレスチナ難民なんみん救済きゅうさい事業じぎょう機関きかんの清田きよた明宏あきひろ保健ほけん局長きょくちょうは「これまでは感染かんせん対策たいさくよりも、命いのちを守まもることが大事だいじだったが、今後こんごは感染かんせん対策たいさくにもつなげていかなければならない。避難ひなん所しょから戻もどった場所ばしょで感染かんせんが広ひろがらないか、継続けいぞくしてみていくこと必要ひつようがある」と述のべ、今後こんごの感染かんせん拡大かくだいに警戒けいかい感かんを示しめしました。

また、清田きよた保健ほけん局長きょくちょうは「医療いりょう設備せつびやインフラ整備せいびなどの復興ふっこうを進すすめ、市民しみんの生活せいかつをもとに戻もどしていくことが大切たいせつだ」と述のべ、国際こくさい社会しゃかいが連携れんけいして感染かんせん対策たいさくとともに、ガザ地区ちくの復興ふっこうを進すすめていく重要じゅうよう性せいを指摘してきしました。