アメリカの国債は信頼性が高い安全な資産として知られています。
その価格や利回りの動向は世界の金融市場で指標となっているほか、世界中の投資家や外国政府が保有し、重要な資産運用先となっています。
このため投資家などのあいだで仮に債務不履行=デフォルトが意識されると世界の金融市場に大きな混乱を引き起こすおそれがあります。
アメリカでは民主党と共和党の間で財政規律をめぐる考え方が異なるためこの債務の上限をめぐってたびたび政治対立を引き起こしてきました。 これまでにこの問題をきっかけに何度も政府機関の閉鎖が起きているほか2011年にはアメリカ国債の格下げにつながりました。 この際はオバマ政権と与野党の協議で最終的には債務の上限を引き上げる法律が成立し、債務不履行という最悪の事態は避けられた形になりました。 しかし、大手格付け会社の「スタンダード・アンド・プアーズ」はアメリカ政府と議会が合意した財政赤字の削減計画では財政の安定には不十分と判断して格下げに踏み切り、世界の金融市場に動揺が走りました。 現在の債務の上限は31兆3800億ドル余りで20年前の7兆3800億ドル余りと比べて4倍以上となっています。 ことしに入ってイエレン財務長官はことし1月、政府の借金が増えてこの上限に達したため、臨時に資金を確保する特別措置を始めたと発表しました。 この措置によってアメリカ国債の債務不履行は当面、回避されましたが、イエレン財務長官は今月1日、議会下院のマッカーシー議長をはじめ議会指導部への書簡で早ければ来月1日にも臨時措置が行き詰まり債務の不履行に陥る恐れがあることを明らかにしました。 その上で、議会が上限の引き上げなどに応じるよう速やかな対応を求めました。 一方、野党・共和党は上限を引きあげる条件として政府に大幅な歳出削減を義務づけることを求めていますが、バイデン政権はこれを拒否する姿勢で、折り合いがついていません。