風邪のひき始めに栄養ドリンクは逆効果? 免疫力の仕組みと正しい付き合い方
「栄養ドリンク」と総称される飲料には多岐にわたる種類が存在しており、風邪の初期段階において摂取すべきか否かは、個々の状況によって異なると言わざるを得ない。しかしながら、最終的に風邪から回復するために不可欠なのは、自己の体内に備わっている免疫機構が十分に機能することであるという点は、いかなる場合にも変わらない。風邪の原因となるウイルスや細菌は、白血球などの免疫細胞によって排除されることで初めて治癒に至るのであり、どれほど効果が高いと宣伝されている栄養ドリンクであっても、それ自体が直接的に風邪の治癒に寄与するものではないことを理解しておく必要がある。 ■ 栄養ドリンクが有効となり得る場合ビタミンC等による体力維持
栄養ドリンクに含有される成分が、我々の免疫機能を間接的に支援する場合、回復を促進する一助となることは否定できない。例えば、発熱時に消耗しやすいとされるビタミンCを補給することで、体力の維持に資する可能性がある。ただし、過剰に摂取したからと言って回復が著しく早まるというものではなく、適量を守って利用することが望ましい。 ■ 「効いた気がする」の落とし穴回復遅延につながる行動への警鐘
一方で、高価で「よく効く」と謳われる栄養ドリンクを摂取した結果、実際には治癒していないにもかかわらず、一時的に「元気になった気がする」ことがある。そのため、無理をして外出や仕事を再開してしまうと、かえって体力を消耗し、回復が遅れるおそれがある。体内のエネルギーには限りがある以上、風邪の初期段階においては、そのエネルギーをできる限り免疫細胞の活動に充てることが回復への近道である。不要な運動や外出は控え、十分な休養を取ることが何より重要である。 ■ 薬との併用に関する注意点薬効成分含有製品のリスク
さらに付け加えるならば、栄養ドリンクの中には薬効成分を含むものも存在し、その場合、風邪薬との併用によって薬効に影響を及ぼす可能性がある。場合によっては、身体に悪影響を及ぼすこともあるため、併用は避けるべきである。すでに風邪薬を服用しており、判断に迷う際には、薬局等で専門知識を有する薬剤師に対し、現在服用中の薬を伝えた上で相談することが推奨される。 ▼阿部和穂プロフィール
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭を執る。専門分野である脳科学および医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿や市民向け講演活動を通じて、広範な情報発信を行っている。